いざ書くとなってみると、それまで簡単にみえていたことができなかったり、複雑そうにみえていたものが意外に簡単に書けてしまったりするのが小説の不思議さというものです。
 素直なつくりに見えるのに実際にやってみると難しいお話のひとつに、長距離を移動し続ける形のものがあります。
 なんといっても、移動は単調になりがちです。地名を並べていくだけでは書き手も読み手も飽きてきます。偶然の出会いばかりが続くとうんざりしますし、使える場面展開の手法は限られています。
 出来事を最初から順に全て書き上げていっても退屈なものができるだけです。連続する事象から何を切り取り、どこを強調することで、単調さを回避しながらも長い移動を感じさせるお話をつくることができるのか、挑戦してみて下さい。
 そのあとで、何か既存の、長距離を移動し続ける小説を実際に読んでみて下さい。そこに注がれている技術が以前とは違った風に見えてくるはずです。
(円城塔)

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