梗 概
虚仮の一念、為せば成る、か?
この世の果てにあるという、世界を統べる究極の自生機械マメックスを探している。調査、確認、応答の上、破壊するなりされるなり、統合するなりされるなり、する。それはいいことだ、だから善。
積算走行距離は四百万キロメートルを超え、この惑星の陸地はほぼ踏破したところだが、未だマメックスとは出会えず、次段階として海底走行の必要性も考える必要がある。
(海底? 素敵。ネプチューンとその眷属)
右後方をモニターする、蒸気機関に因する水蒸気をもくもくと立ちあげながら巨大な一輪車が追従している。表面塗装色はショッカーピンクの虚仮、キャロル。
(大将、俺の虚仮もそろそろ変え時だろ、この際、潜水艦的なのもどうかな?)
マルチパーパスデッキの上、軽量飛翔体形状の虚仮ブレットが、巨大な軍用マシンのイメージを送信してくる。
(わたしは、ヒトデかイソギンチャク! こういうの、見て見て大将)
送られてきたアドレスでデータベースを参照、海底に生息する生物の画像を多数確認する。しかしこの形状では移動速度に制限がかかるだろうと推測される。せめてマンボウとかではどうか。
(えー、可愛くなーい)
一輪車がサドルをくりくり回しながら、ぴょんぴょん跳ねて抗議する、岩が砕け地面が揺れて、汽笛がぼわーっと鳴り響く。深夜の荒野の中心で、左右に聳える岩山に挟まれ、細長く続く谷間のようなこの地形でぼわーん、ぼわーんと谺するその向こう、微かに生じるピープ音、起動シークエンス、ノイズとため息、目覚めた機械たちが一瞬で戦闘モードに入る、展開、戦術統制、十六台の自走式地雷
が強襲してくる。
(ひとまず夜食タイムだ、キャロル)
吹き下ろす風に飛ばされるかのようにか細いシルエットのブレットがデッキから去る。ガガンボに類似した銀色の筐体のエッジがエメラルドに輝く、敵機の位置情報確認、使用周波数特定、ジャミング、有視界戦略行動に移行、電子機器の不調を来した敵機に忍び寄りその細い六本の脚で掴み上げる。
中央コンテナ上蓋解放、対爆システム起動、ブレットの投げ込んだ敵機を、プレス、クラッシュ、爆発。残骸からはチタン、アルミ、銅などの資材が得られる。
(よーし、ボーナス、ボーナス)
敵機婦人の中央に走り込み、車軸部分から八本のマニピュレーターを出現させるキャロル、右往左往する地雷をつかんでは破壊、爆発、残骸をコンテナに投入、破壊、爆発、投入、
(こんなに有能なんだから、ね)
ぽんっと軽い音がして、キャロルのマニュピレーターが破損する。ぶらんと下がったその一本をちぎり取って、同じように投げ込んでくる。
(私はヒトデ、ね?)
文字数:1080
内容に関するアピール
惑星上をぐるぐる徘徊している巨大な機械知性のお話を書きたいと思った。
長距離を移動しているようには見えなかった。
文字数:55