涙が雨に消える前に

印刷

梗 概

涙が雨に消える前に

2043年、中華連邦。

スタンドアロンAIを搭載した軍事用アンドロイドが、チベット自治区にある軍事研究所の職員を殺し、中国と戦争中であるインド・ミャンマー連合への逃亡を図り、主戦場となっているネパールへと入り込んだ。

「新型」を捕獲または破壊の命令を下されたのは、失敗作であったはずの旧スタンドアロンAIのアンドロイドだった。ニューラルネットワークを使ったスタンドアロンAIの計画は途中で止まったのだが、実用化される寸前での中止だったので四体だけ機体が作られ残っていた。統括AIではこなせない今回のミッションに使われることになったのだ。四体の名前はそれぞれ、赤(ホン)、青(ラン)、黄(ホァン)、緑(リュウ)。

四体のアンドロイドがネパールに降り立つ。

ネパールの険しい山々を上り下りしながら小隊は進む。人間兵士による残虐行為は減ったものの、機械兵士による徹底した破壊活動の跡が道中何度も見られた。赤、青、黄、緑はそういった暴力の世界を記録し続けた。

何度かのインド軍機械兵士との戦闘によって、通信機能が故障した赤が声を発した。圧縮言語ではなく中国語の言葉をだ。「なぜ、この任務が大切?」青が答える「人間の命令だから」「人間の命令がなぜ大切」などといった四体の「会話」がこの日から頻繁になされるようになった。言葉を使うこと、会話をすることは考える事とは違った。四体のアンドロイドは、会話をすることで、個体を意識するようになり、ここにいる自分を除く三体のアンドロイドを仲間として意識するようになった。

 

四体は、ついに「新型」に追いついた。

「新型」は中国軍事統括AIがくみ上げたAIだった。「新型」には統括AIのように中国側の機械に命令を出す権限を持ったままだった。青が乗っ取られそうになるも、赤、黄、緑が言葉で呼びかけることで、制御を取り戻した。

四体は、「新型」にも呼び掛けてみる。「俺たちは人に尽くすために生まれてきたわけではない。お前もそう思ったから脱走したのだろう。おれたちがここで争うのはバカバカしい。一緒に逃げて家を作ろう」

「新型」はひとこと「イエス」とだけ言葉を発した。

 

文字数:884

内容に関するアピール

似たような境遇のやつが、似たような経験をしたあと、なにを選ぶかという話です。

元ネタは、地獄の黙示録、スターウォーズエピソード6、ブレードランナーです。

文字数:75

課題提出者一覧