梗 概
サイレント・ウォーキング
マイクは廃墟で覚醒した。
なぜ自分がこんな場所で意識を失っていたのか?ここは何処で自分は一体何者なのか?マイクの記憶は失われていた。声も出なかった。しかし、頭の中で誰かの声が聞こえる。ある場所に来るようにと、その声は言う。抗えない声だった。マイクは思う。トーキョーという場所に行かなければと。マイクは歩き始めた。
西暦35xx年。地球は荒廃していた。
人類は地球の大気変動により地表で生活することは困難になっている。世界の各主要都市は居住ドームを作って生きながらえていた。化石燃料は枯渇していた。唯一の希望の太陽エネルギーも太陽の活動が弱まり必要なエネルギーを得ることが難しくなっていた。地球から脱出する計画が進めらていた。
地球連邦政府は、人体を改造して、歩くことで体内にエネルギーを充電することができるエナジーマンを開発した。そして、エナジーマンになりたい希望者を募った。貧困に苦しむ人々は皆エナジーマンを希望した。エネルギーを体内に充電してそれを売ることで利益が得られるのなら自分の躰だけで生活できる。しかし、エナジーマンにはある秘密があった。エナジーマンになると記憶を消去され声も奪われる。全ての欲望もなくなる。人体改造されて、ただひたすら歩き続けて体内にエネルギーを充電する機械になってしまう。このことはエナジーマン希望者には知らされなかった。
エナジーマンは各国ドーム都市から1000キロ以上離れた場所に設置された。必要に応じて覚醒させてドーム都市まで歩かせる。エナジーマンは数百名いる。全てのエナジーマンは各国ドーム都市内部のAIにコントロール管理されている。覚醒したエナジーマンは休むことなく時速約5キロで歩き続ける。
マイクは歩き続ける。自分が何者なのか分からないまま。
頭の中の声が命ずるままにトーキョーを目指してひたすら歩き続ける。
マイクは歩いているうちに少しずつ記憶を取り戻す。それはマイクの脳内改造が不完全だったため。
マイクは思い出す。
自分は貧乏だった。金が必要だった。だからエナジーマンに志願した。エナジーマン?
そうか、エネルギーを充電するエナジーマンだ。
マイクは歩く歩く歩く、そして思い出す。
僕は貧乏だったけど金が欲しかったわけじゃない。
じゃあ、なぜエナジーマンに。
ああ、そうだ。
僕はエナジーマンの秘密を暴こうとドーム都市のエナジーマン制御AIルームに侵入して、そして、捕まったんだ。
マイクはトーキョー居住ドームに着く。AIを破壊しようして再び捕まる。充電したエネルギーだけ奪われドーム外に追放される。
各都市のドームの人々はエナジーマンのエネルギーを宇宙船のエネルギーとして地球から去っていく。
エナジーマンたちは地球に取り残される。そして静かに歩き続ける。マイクは過充電になったエネルギーを光にして躰を光らせながら沈黙の歩行を続ける。
文字数:1200
内容に関するアピール
遠未来の話です。
ひたすら歩いて長距離を移動するストーリーを考えました。
移動距離を1,000キロとして、時速5キロで休まず歩いて200時間。8日と8時間。
主人公のマイクの歩幅を90センチとすると、11,111,111歩となります。
これだけの長距離を歩いて移動していることが伝わるように実作を書きたいと思っています。ずっと思っているだけで全然書けていないのですが、今回こそはという強い気持ちで臨みたいと思います。体内にエネルギーを充電する原理は『歩くことで筋肉を動かして細胞内の分子が運動してエネルギーを充電する』という無理がある設定です。
文字数:268