どうやら俺はゲームのキャラだったらしい

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梗 概

どうやら俺はゲームのキャラだったらしい

俺の名はガブ。由来は知らない。ガブッと噛みつきそうだからガブだと勝手に自分で思ってる。志願した紛争地帯での兵役任務を一時的に終え、祖国に帰還したところだ。今は妻と子どものいる自宅のリビングでテレビを観ながらくつろいでいる。

番組の途中で突然CMが始まって、デスクについた東洋人のひょろっこい青年(俺には少年にしか見えないのだが、たぶん青年なのだろう)がカメラ目線でこっちを見ている。パソコンのCMかと思ったら、リビングでくつろいでいる俺の姿に切り替わった。なんなんだこれは。ドッキリか。

どうやらこれはドッキリじゃないらしい。俺は東洋人になってデスクのモニター越しに、リビングにいる俺を見ている。俺は、この東洋人は一体誰なんだ?リビングにいる俺がしゃべった。

「やあ、ガブ。僕はリエル。君のガブって名前は噛みつきそうだからじゃなくて、ガブリエルのガブだよ。僕がつけたんだ。脳みそまで筋肉になっちゃったのかな?え?ブチ殺すぞって?落ち着いてくれ、こっちには君の愛する妻と子どもがいるんだぜ。どうなってもいいのかな?東洋人のくせにリエルってキラキラネームかよって?それは返す言葉がない。自分でつけたわけじゃないからね。
 話を本題に移そう。君は僕がプレイしているゲームのキャラだった。ひょんなことから君と僕は入れ替わった。ひょんなことが何かっていうのは後のお楽しみだ。僕はひょろひょろの男子大学生でパッとしないキャンパスライフを送っている。わかりやすく言えば全くモテない。そこで君にお願いがある。僕の体を君みたいにムキムキに鍛えてくれ。訓練は得意だろ?もう実感してると思うけど僕は本当にひょろひょろだから鍛えるには日数がそれなりにかかるかもしれない。でもちゃんと待ってるから鍛え終わったら声をかけてくれ。そしたら続きを話す」

「ちょっと待て。理解が追いつかない。俺がゲームのキャラだと!?そんなわけあるか。あの戦地での索敵や射撃の精度、何よりこの、いやその鍛えあげた肉体は、俺の努力の成果だ。俺には自分の行動は自分で決めているという実感があった。決して誰かに操られていたわけじゃない」

「そんなこと言われてもなあ。君はゲームのキャラだし、実際に君を操作していたのは紛れもなくこの僕だ」

俺は戦争で頭がおかしくなってしまったのかもしれない。これは戦地でのストレスによって俺が生み出した想像の産物なのかもしれない。

「俺がゲームのキャラであることを証明できることはあるか?例えば俺が知らないことでお前、リエルだけが知っていること」

「ガブっていう名前の由来がそうだよ。後は何を話しても今は信じる気になれないんじゃないかな。僕が何を言っても君はそんなの嘘だって言う気がする」

「オーケー、わかった。お前の目的は何だ。仕方ないからしばらくお前の代わりになってやるよ」

「だから言ってるでしょう。体を鍛えてくれって。鍛え終わったらお互い元に戻ろう」

俺がゲームのキャラだったらあいつも、この状況もゲームなんじゃないか?俺は天井の四隅を見回した。四隅の一つに監視カメラがあった。俺はデスクを壁に寄せて、その上に登った。俺はかぶりつくようにカメラをのぞいた。

これを読んでいるあなたはガブにのぞかれている。

文字数:1331

内容に関するアピール

これは、ゲームのアバター(キャラ)と実体(操作主)が入れ替わった世界で、実世界側の舞台でアバターが実体を操作する物語です。梗概では書けなかったのですが、実作では同じ境遇の実体(を操作しているアバター)と出会う話にしたいです。例えば、リエルの大学の同級生の女の子が実はガブの妻であり(妻が操作していて)、最初はお互いそのことに気がついていない、という話を考えています。

自分の生活を誰かに代わってもらえたら、その人は自分とは違ってどのように日常を過ごすのか、その代わってくれる人が頼もしいゲームのアバターだったらどうなるのか、と楽しく空想が広がることを期待しました。それは自分を他者の視点から見るのとはまた少し違った視点になり、そのような視点で物語を追うことは新しくて楽しいと思いました。もし既作品があり、全く新しくなければ実作で改善します。

主体感は幻想に過ぎないのではないかということを物語を通して体験できる点がSFとして見るべき点だと思っています。

文字数:424

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