みなさんよろしくお願い致します!
前年の課題文と似てしまいますが…やはりこれしかないですね。
第1回では、「自己紹介」というお題の枠の中で、マンガ表現の基本を押さえる体験をされたと思いますが、そこで学んだことを活かして、今度はずばり、《自分の今一番描きたいもの》を描いて頂きましょう。
ただし、今たまたまふとそういう気分になった、とかの気まぐれなものではなく、ひらめき☆マンガ教室を受講することに決意した、現在のこの段階で、「とりあえず自分はしばらくこの方向をメインに作風を確立してみたい」と思えるような作品を出してみてほしいということです。
いわば、(今の、でいいので)【自分の名刺代わりとなる作品】ということですね。
今はまだみなさん様々な可能性を秘めていて、今後いったいどういう売りのマンガ家(マンガ描き)になるのか、もちろん未確定ではあります。
しかしそれにしても、とりあえずとして、
《まずはこの方向性を中心に修行してある程度の境地に至りたい》という「旅行計画」は立てておいた方がいい。
でないと、「こっちが難しいからやっぱあっち…」と、逃避心に惑わされ、新幹線に乗るのか飛行機に乗るのか、徒歩で、車で行くのかすら決まらないまま、ふらふらしていつになっても先に進めない、という状態になるからです。
いろいろなことを考え併せて、決めるといいでしょう。
「おれはやっぱど真ん中の少年漫画が一番やりたいんだ!」という自分のモチベーションを一番大事にして決めるのも一つの方法。
「今は、両思いだけどすれ違うタイプのラブコメが流行っているし、自分もそのジャンルが読者として一番好きだから、それでやってみたい」と、流行に乗って頑張ってみるのもいいですね。
何を描いたらいいのか皆目わからない、という人も、いい機会ですので、ここでいったん自分と深くじっくり対話してみましょう。
「いったいおまえはどんな漫画が描きたいの?」
…そしてあれこれと数日考えたところで、「いったん」決めてみるのです。
このあと、第3回以降、毎回いろいろなお題が出て、普段の自分の作風とは異なるアプローチの作品を試す機会はたくさん訪れますので、そこでの経験を得て、路線変更するチャンスはいくらでも来ます。
ですのでそこは安心して、まずは【今の心づもり】を決め、それをみんなに自己紹介するつもりで、【名刺となるような、ど真ん中の作品】を見せて下さい。
それがもし大長編だったとしたら…。
だめだ…とても16ページになんて収めきれない!!そんな時は…
これは本当にメジャー商業誌でもむしろ新人デビュー作のど真ん中の手法として存在していますが、その大長編のある一部を、とりあえずの自己紹介として、短編作品に仕立てて描くのです。
この場合に大事なのは、とりあえず16ページ以下の短編作品としての体裁を最低限整えて描くということです。
プロローグみたいな、世界観やキャラの紹介だけで終わるものや、描きたい見せ場だけを、読者置き去りでやみくもに描きつけるのは駄目です。
「この続きが読みたい!」と読者が思えるような《含み》を残すことはかまいませんし、むしろうまくやれるなら、そういうものがあった方がいいくらいなのですが、そうした大きな物語とは別に、
その16ページ以下の短編作品を《単独で》読んだとしても満足できるような、【導入、ヤマ(クライマックス)、オチ、を設ける】ことが大切です。
これは、描きたいものが「大長編」でない人でも必要なことです。
この課題に取り組む人はみな等しく全員、しっかり向かい合って、16ページ(以下)の【短編作品】に取り組んで下さい。
《習作》や《課題》じゃなく【作品】という意識で描くことが重大ですよ!
中高生気分で、先生に「課題提出すりゃいいんだろ」的なものではなく、見知らぬ読者に向けて描いて下さい。
実際、ひらめき☆マンガ教室では、ご存じのように、誰もがあなたのネームや完成稿を《鑑賞》出来る仕組みになっています。実際、ツイッター上に感想が上がったりもしますよ。
《鑑賞》出来る=面白く読み進めて、読後満足出来る【作品】を目指して頑張りましょう!!
第1回のさやわかさんの課題文にもあるように、16ページはとても短いです。
描きたいシーンや思いついたセリフを漫然と頭から描いていたら、人物紹介だけで終ってしまいます。
「どうしてもそうなってしまう」という人は、プロット(文章・台本のようなもののラフ)でもいいので、その先の、ヤマ、オチまでテキストで書いてみるといいでしょう。
ヤマ、オチに、後半6~8ページを残しておいて、そこまでの部分を前半の8~10ページに収まるように七転八倒して整理するのです。
もちろん、ツメツメに圧縮して、読みにくくなってはだめですよ。
特に冒頭というのは、ある程度ゆったりしたコマ割りでないと、読者は読み始めてすらしてくれません。
トランプでババ抜きなどをするとき、最初に、手持ちのカードの中から、捨てられるものをどんどん捨てて、最低限に減らしてからゲームをスタートしますよね。あの要領で、どんどん整理していくのです。
「あ、このセリフ、次のこのセリフをこう言いかえれば、要らなくなるじゃん!」
「冒頭の、絶対外せないと思っていたこの重大シーン、がさっと削っても全然大丈夫じゃん、むしろその方が、つかみもいいし、いいグルーヴも出る!」などと、必死に整理をする過程の中で、気づきが時々訪れます。
前半だけとは限らず、逆に、「元々これを描きたくてとりかかったけど、このクライマックスまで書くのは無理だな…
後半は捨てて、前半の、このやり取りを、クライマックスに仕立てて、ちゃんとオチもつけて、なんとかそれだけで一つの独立した短編作品にできないものだろうか」などと思いつくこともあるかもしれません。
こういう体験をしてみて欲しいのです。
僕の好きな、舞台演劇の演出家ピーター・ブルックの言葉に、こういうものがあります。
死守せよ、だが軽やかに手放せ。
ばらばらのブロックを、ただ押し込んだだけでは箱に入り切りません。
しかし、うまくきれいに組み合わせて収めれば、箱に入り切るのです。
マンガというものにはご存じの通り「締め切り」という門番がいて、時間との戦いになります。
初心者ほど、作画や仕上げ作業に時間が余計に要るのですから、初心者ほど、余裕をもって計画を立てて進めていかないと、後半で必ず破綻します。
ゆっくりパズルを楽しむ余裕はあまりありません。
テトリスなどのパズルゲームの、面が進んでやたら早く落ちてくるのを、必死で処理してしのぐような緊迫感が必要かもしれません。
一手間違ったら終わる、くらいのスリルがあります。
そんな感じで、過酷な修行としての一面が、マンガにはどうしてもあるのですが、そうしたことも、まさにゲームをやるときのような感じで、脳内麻薬を出して快感に置き換えられると、なんとかしのげるし、だんだんと癖にもなってきます。
この必死の作業の中で、何度かでも、あるいはたった一度でもいいので、なにか殻を破った、達成感を一瞬でも体験してくれれば、それが今後の大きな財産になります。
是非是非全力でチャレンジしてみて下さい。
あと、マンガを描く時の心得というかコツとして、とにかくうまくいかない時には、目の前の膠着状態に陥った作業から思い切って離れて、外側に目を向けて、ヒントを探し、あるいはふと見つけ、つかみ出すのが効果的です。
例えば、この課題文を読んで、わからなくなってしまったら、ぼくの過去の課題文を探して、読んでみて下さい。2017年から4回分あります。
【第1期】
https://school.genron.co.jp/works/manga/2017/subjects/05/
【第2期】
https://school.genron.co.jp/works/manga/2018/subjects/2/
【第3期】
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/subjects/3/
【第4期】
https://school.genron.co.jp/works/manga/2020/subjects/2/
いつも、書いていることの本筋は同じなのですが、毎年書き方が違います。
別の年の課題文を読めば、するっと腑に落ちる人もいるかもしれません。
第1回目の経験を生かした、ど真ん中の、貴方の最新アップデート作品を楽しみにしています。
素敵な【名刺】がアップされるのを待っています。
(武富健治)