テーマ

「『名刺』となる短編1本~『読ませる』ということ」

  • 課題提示、ネーム審査:武富健治
  • ネーム審査、完成稿審査:さやわか
  • 完成稿審査:清原紘

ネーム提出締切| 2018年5月12日(土)

ネーム講評会| 2018年5月19日(土)

完成稿提出締切| 2018年6月9日(土)

完成稿講評会| 2018年6月16日(土)

前回は、個人の自己紹介を漫画で、という課題でしたが、今回は、自分のメインとなる作風がどんなものか見せて頂きましょう。
これから1年、各先生の出される課題ごとに、いろいろなタイプの作品に挑戦していくことになると思いますが、まずは今現在、自分自身が「こういう漫画を描いていきたい」と思っているような【ストレートな作品】を見せて下さい。
つまりは、名刺となるような作品です。

もしかしたら、「自分はいろいろ描けるよ」という人もいるかもしれません。その場合は、とりあえずその中から、「まずはこの路線をメインでやってみたいな」「この路線でなら連作できそうだな」というものを選んで下さい。
将来、この路線の作家になりたい、というしっかりしたコンセプトが固まっている方は、もちろんその路線で。
「この作品を世に届けたくて漫画家になるんだ!」というような大長編のアイディアが胸の内にあるような方は、その世界をうまく切り取るような短編を1本作ってみるのもいいですね。本編が壮大過ぎるのであればスピンオフ的なものでもいいですし。
まだ、ぼんやりとして路線が決まっていないという方であれば、とりあえず今描きたいものを描いて下さい。ただし、見る方はそれを「名刺」として受け取りますので、その責任は最低限負えるような作品がいいと思います。

「名刺」の重要点は二つあると思います。
一つは、「自分の持ち味(個性や特長、魅力)」を印象付けること。
もう一つは、「多くの、自分とは異なる人に」わかりやすく伝えることです。

「何を」「誰に」という問題ですね。

前者に関しては、出来る限り思う存分、自分のやりたいことをぶつけて下さい。
個性的で新しい、自分ならではの世界を見せて下さい。
自分自身が読みたいと思う漫画をガチで描いて下さい。この部分に遠慮はいりません。

後者は、その個性的で新鮮な作品を、どのように「他者」向けに表現するかということです。
読者に最後まで【どう読ませる】か。そこはちょっと工夫、苦心してみて下さい。
これから1年かけて深く学んで頂けると思いますが、漫画にはいろいろなセオリーがあります。これを守ればその分、老若男女少しでも多くの人の心に、より個性的な内容を、より広くより深くエモーショナルに伝えることが出来ます。セオリーと言っても、ようは「読む人(=受け手)」のことを考えて、誤解なくスムーズに自分の伝えたいものを伝えるための気遣いや工夫を凝らすということです。コミュニケーションですよね。
例えばひとつ、基本的なことを挙げると、「吹き出しのセリフが読みやすいこと」が挙げられますね。字が汚かったり、薄かったり、誤字脱字が多かったり、文字が小さ過ぎたりすると、読む方は作品に没入できないので、どんなに魅力的なものを含んでいても、そもそも「読む」「鑑賞する」というところにまでいけなくなってしまう。
内容はどんなに個性的でもいいので、誰かが読むのだということを考えて提出して下さい。
最初からいろいろ考えてしまって描けなくなるようでしたら、自由に描いた後で確認して、手直しすればいいのです。
吹き出しの位置、キャラクターの区別、コマ割りのスムーズさなど、「誤解されない」ためのわかりやすさをちょっと心掛けてみて下さい。そんなところで損するのは、描き手にとっても読み手にとっても不幸でしかありませんからね。

ただし、一番面白い漫画というのは、【にもかかわらず面白い】ものかもしれません。
「わかりやすい」だけでは、ありがちで、上手くともただ上手いだけの漫画になってしまいます。自分の個性を殺さずに、出来る限り多くの人の心に届けることが大事です。
「こういう面白さを待っていたんだよ」。そんなふうに思える作品を待っています。
「素直に面白いもの」「新鮮さ」「熱さ」「悲しさ」「感動」「言葉にならないもやもや」「苦笑」、なんでもかまいません。「地味なもの」「けったいなもの」でも、それが描きたいもの、読みたいものであれば大歓迎です。

なにより重要なのは、完成させること。提出すること。これを前提に、スケジュール管理して、「可能な範囲で」頑張ってみて下さい。
楽しみにしています。

(武富健治)

<運営による追記:提出されたすべてのネームおよび完成稿に対する主任講師からのコメントはこちらからご覧いただけます。>

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