食べるの、好きだから

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梗 概

食べるの、好きだから

 カオクは、村で蛸(タコ)占いの仕事をしている。タコはポタという名で、ポタが寄っていく短冊が良い選択肢というわけであるが、精度はいまいちで、村長にも信頼されていない。師匠のおばあになら聞いていた大事なことも、カオクに聞かず、村の会合で決めてしまう。カカシの名前とか村長の新しい髪形とか、他愛のないことばかりを占っていた。報酬はその日ご飯がギリギリ食べられないくらいのもので、カオクとポタはいつも腹を空かせていた。

 ある日旅人に報酬としてもらったマオと呼ばれるものをカオクは初めて目にする。食べ方が分からずマオを見ていると、ポタがマオに覆いかぶさり食ってしまった。そして、「本当は炙るといいけど」とつぶやいた。ポタがしゃべった。ポタの声が、ある日いなくなってしまったトウンの声に似ていることに気が付いて、カオクは嬉しくなる。おばあに占いタコは何か食べた拍子にしゃべることがあると聞いたことを思いだす。

 マオを食べてから、ポタの占い精度は上がり評判となった。植えるべき作物や川の氾濫時期など大事なことも占った。ポタは報酬にマオを異様に求めた。ポタはトウンだけではなく、おばあの声でもしゃべるようになる。マオは村では手に入らないが、トウンの声でお願いをされると叶えてやりたくて、村長に用意をしてもらった。村は繁栄していったが、突然人が消えるようにいなくなる不可解な現象が起き始める。

 ポタが占いをする翌日に人がいなくなるとささやかれるようになる。あのタコがマオを食うからだ。マオとはそもそも何なんだ。マオを食べたことがない人々はポタを嫌うようになり、村長も疎遠になる。ある夜、カオクの家に人が忍び寄り、カオクはさらわれそうになるが、ポタが相手の首を絞めて撃退する。ポタは村を出ようとカオクを誘う。ここは危ないし、マオもない。村を出たことが無いカオクの体にのぼってきて、説得するポタ。ポタ…いや、トウンたちが言うならと、ポタを追うカオク。

 長い間歩き続けて、大きな建物が見えてくる。今まで嗅いだことのない、異様な香りが漂う。入口をくぐると、ずらりと人が座っていた。そこには、村から消えた人の顔があった。皆、茶碗一杯に何かを食べている。聞くとそれは焼いたマオだという。食べるお金が無いと店主に言うと、マオをつくる仕事を紹介すると裏に案内された。そこで、カオクはトウンを見つける。十年ぶりの再会だった。声をかけようとすると、トウンの頭は落とされた。流れていくトウンの体。呆然としていると、店主が働く位置を教えてくれた。カオクがその位置に行こうとすると、店主は先ほどトウンが立っていた場所を示し、お前はあそこだと言った。そして、ポタを首から取って、働き手の定位置に置いた。店主がいなくなるのを見てポタは、大丈夫あとで食べに行くから、カオクも、さっきのトウンも。そしたらお腹のなかで、ずっと平和だから。そんで村に戻ろうと腕を伸ばして言った。

文字数:1212

内容に関するアピール

タイトルの意味をずらしてみましたが、残念ながら、反転までさせることができませんでした。

今回は反転という言葉から、立場が入れ替わるというイメージが思い浮かびましたので、
食べるという行為で、立場が入れ替わることを書いてみようと思いました。
村の人々とカオクの姿格好が似ているように書くべきかはまだ考えています。
似せるか似せないかで、カオクが食べられることが偶然かどうかが変わるので、
よく考えます。

カタカタの名前が多いですが、タコはここでは、普通に8本足の蛸です。
村はちょっと怪しいけどコミカルな村という感じで考えています。

文字数:258

課題提出者一覧