アルデバランの夜

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梗 概

アルデバランの夜

四次元人、天馬スバル。高校二年生。三次元ダイブ中、夢咲薫と出会い恋に落ちる。が、適当過ぎる設定のため、時間ピッタリに次元転送装置が働き、三次元離脱が実行された(つまり、死んだ)。

二人が出会ったのは、一本松がぽつんと立っている小高い丘の上。薫はアルデバランを「幸運の星」と崇めている。そして、冬の空にアルデバランと仲良く並んで昇ってくる「すばる」に運命を感じていた。

二人は、十二月三日の天馬の誕生日にここでお祝いしよう、と約束していた。ところが、その夜、薫は天馬が死んだと聞かされる。

天馬がいなくなってからも、薫は丘の上の一本松で、星を見ていた。天馬も、相変わらず隣にいた。だが、薫に知るすべはない。悲しみに暮れる薫に、自分の存在を示したい。忘れられてしまう前に!

その情熱を原動力に、天馬は三次元空間造形の道を究めると決意。四次元随一の師匠に弟子入りする。目標は、薫の眼前にアルデバランを引っ張ってくること。しかも、一年以内に。

ところが思ったように修業は進まない。焦る天馬に、驚愕の事実が知らされる。

三次元ダイブのために、三次元の人間を狩る一団が跋扈していた。人間の肉体を拝借して(つまり殺して)三次元の生活を体験する、安価で安易なツアーを手掛けるために。そして、そのターゲットリストには、薫の名が。

その頃、四次元では、三次元ダイブで心を通わせた人間の死に立ち会って、四次元に移送する技術が確立していた。その技術者に依頼すれば、薫も晴れて四次元に暮らすことができる。だが、先に悪徳業者の刃にかかってしまった暁には、その魂は量子の海に沈んでしまい、救うことができない。

丘の上の一本松では、ふいに空間のゆがみが生じ、死神の刃が薫に迫る。アルデバランに祈る薫。一方、天馬の空間造形アトリエでは、三次元センサーが異常を感知する。三次元潜望鏡で事態を把握し、独力で研究中の空間断層を発生させ、間一髪で薫を救出する天馬。しかし、その影響が随所に現れ、空間断層造形技術を封印されてしまう。さらに、それまで放任主義を貫いていた父親から、帰ってきて家業を継ぐよう、命令が。

天馬の父は裏社会を牛耳る大企業家。かの死神稼業にも手を伸ばしていたところ、天馬の空間造形能力を知り、またその威力に才能の一端を垣間見ていた。この世界では、世襲制が一般的である。父の言葉を拒絶できない天馬は、悩む。無意識に眺めた夜空に燦然と輝くアルデバラン。

父と交渉し、家業を継ぐことを条件に、薫を人間狩りリストから外した天馬。さらに、薫の四次元転送を技術者に依頼する。しかし、薫が四次元に転送されても、裏社会に生きる天馬と会うことは許されない。せめて、薫に自分の気持ちを伝えたいと、天馬は恒星間空間褶曲技術の発動を試みる。

小高い丘の上の一本松へ、小道を薫が歩いて行く。丘の向こうの夜空が赤い。やがて、一本松の後ろに、赤色巨星アルデバランが昇った。

文字数:1199

内容に関するアピール

従うべきルールは、「主観(感情や気持ち)を書かない」です。ひたすら客観的に、見たままを書く。そのための形式として、シナリオで書きます。

四次元の歩き方がわかる作品です(ほんとかな?)。
少なくとも、隣り合ったり、いつも触れたりする場所に四次元がある。四次元を身近に感じられます。
希望的観測ですが。

主人公の天馬スバルは、裏社会だけど大企業(?)の御曹司。でも、悲劇のヒーロー。さんざん苦労して、薫にアルデバラン大接近のプレゼントをしたのに、最後には、「がっかり。全然イメージと違い過ぎて、笑える」と薫に袖にされてしまうような、ちょっと抜けた人物として描きたいです。
課題は、近くで見たアルデバランの圧倒的な質感を、どう表現するか。研究します。

 

文字数:317

課題提出者一覧