神々のライフスタイル

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梗 概

神々のライフスタイル

「この世界へようこそ! さあ、人生がはじまるよ」

ガイドの音声が生誕を知らせる。瀕死の真樹の脳内装置は秘かに、生死を決めるための試験を開始したのだ。

同じ車で事故に遭った友人2人も、すごろくのスタート地点に並ぶ。何これ?死後の世界?

ゲームは真樹たちの産声から始まり、ルーレットで進路が決定されていく。各イベントは妙にリアルで、マス目の書かれた道は汚なくて不快だった。様々な苦難が真樹を襲った。

友人の叡二と遥は快調に進む。叡二は莫大な財産を築いて華麗な豪邸暮らし、遥は快適なリムジンに乗って人生ウハウハ。2人それぞれの結婚や無謀な投資に借金は増大し、収入の低い清掃員の真樹はバッドエンドの「地獄」に送られた。遠くから叡二と遥の笑い声。真樹は絶望する。

ところが、真樹は地獄がただ悪臭を放つだけの大きなマス目だと気づく。そこへ叡二から連絡が入る。彼もエンドを迎え、精算を終えて財産を返却したというのに、「天国」は近づくたびに遠ざかってしまうという。叡二は険しい道を歩く決心をする。欲すれば何でも叶うという快適な天国生活をもとめて前進を続ける。

真樹は2人に追いつこうとやけになって、資産のことは気にせずにルーレットを回して先を急ぐ。地価が暴落しても借金が膨らんでも、平然と前進を続けた。

と、不意に再就職のチャンス到来。真樹は何気なく就職先の一覧を隈なく眺めてみた。友人たちは収入の高い仕事から順に機械的に選んでいたので、その最下層まで目を通したのは真樹がはじめてだった。

いちばん下にあった職業名は「G」。Gって何だよ。月収は無限にマイナスとある。そのあまりのばかばかしさから真樹はもうどうでもよくなり、勢いでGを選択してみる。

やっと天国に入れた叡二は絶望した。そこはスタート地点だった。生まれる前の母胎。彼はずっと過去の自分を追いかけていたのだ。前世から引き継いだ莫大な資産をさらに膨らませながら、叡二は再び人生の道を進む。

そしてなぜか、いつしか彼の姿は見えなくなり、その後も彼の行動を示す通知だけが真樹と遥に届き続ける。叡二死亡。

精算を終えてリムジンを降りた遥は、なんとその場で裏技を発見し、プチヘヴンを入手。どんな障壁もクリアし、どんな災いからも身を守ってくれる激レアな乗り物アイテムだ。これでどこのマスにも楽々移動できるようになるかと思いきや、身を守るための頑丈な殻に密閉されてまさかの窒息。遥死亡。

真樹はガイドになっていた。ゲーム内の時間を移動し、スタート地点にいる過去の自分を育成する仕事である。まだ何も知らない自分をやがてこの場所まで導いたとき、真樹ははじめてこのゲームを終了し、事故からの生還が許される。

いま思えば絶望してたのがばかみたい。ほんとうにこれはただの人生ゲームだったのだ。何があっても大丈夫。どうか諦めないで!――との願いを込めつつ、真樹は産声を上げた自分に最初の音声を届けた。

文字数:1196

内容に関するアピール

ありきたりですが、結末から冒頭へ文章をつなげたいと思います。なるべく読み終わらないようにしたいです。

 

 

文字数:50

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