未来の落とし物

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梗 概

未来の落とし物

 深夜、阿久根俊夫は車を運転している。早く家に帰りたい気持ちを抑えて制限速度を守っている。
今だけはスピード違反で捕まりたくない。
 ラジオからは午前二時の時報。
 突然、前方に大きな古びたカバンが現れ阿久根はブレーキを力いっぱい踏みしめる。
誰かの落とし物か?いや、突然現れたように見えたけど……。阿久根は車から降りてそのカバンに手を触れる。
一瞬、意識が遠のく。気がつくとカバンを車に乗せて走っている。

 家に着いたのは午前二時五分。
 
 ホッと一息ついているとドアベルが鳴る。
 こんな時間にいったい誰だろう?と不審に思いながらドアを開けると奇妙な服装をした男がいて、
 「あなたは拾いましたね」と唐突に言う。
 阿久根は戸惑い「誰ですか?こんな時間に!」と語気を強めて言う。
「拾いましたよね。見ていたんです。返してください。あれは危険な物です」
 奇妙は男は強引に家に上がりこむ。
「警察を呼びますよ」阿久根は言うと
「阿久根さん、あなたに警察を呼ぶことできないですよね。知っていますよ」
 阿久根はたじろぐ。
 阿久根は恋人のマリエを殺害して山に埋めている。

 時刻は午前二時十分。

「あ、これだ、やっぱりありましたね」奇妙な男は阿久根が拾ってきた古びたカバンを見つける。
「それ、あなたのですか?一体あなたは誰?そのカバンには何が入ってるんですか?」
「詳しいことは言えません。わたしは今から100年ほど先の未来から来ました」あまりのことに呆然とする阿久根に奇妙な男は続けて言う。
「このカバンには犯罪者たちの怨霊がつまっています。未来では死刑制度が廃止されて犯罪者の悪意の部分だけ脳から摘出して、まともな人間に更生させます。そして、その悪意たちは、まあ、すなわち怨霊ですが別次元の監獄に閉じ込めておく。その監獄への転送中にちょっとしたトラブルが発生して時空のひずみに落ちてしまったのです」
「怨霊?別次元の監獄?何を言ってるのかまったく分からない」
「まぁ、あなたには分からないでしょう。100年後の未来では普通のことです」
100年後なのに、どうしてそんな古びたカバンなんだ?と阿久根は質問する。単なる趣味です、と未来人は答える。
 では、失礼しますよ。と言って未来人はカバンを持って帰ろうとする。
「あ、拾ってやったんだから、何かお礼をくれないか」阿久根は自分の意思に反して言う。
カバンの中の怨霊が言わせている。怨霊は阿久根を利用してカバンの中から脱走したがっている。
「そのカバンの中身を見せてくれ」
「それはできません。さっきも言ったようにこのカバンの中には凶暴な怨霊が……」未来人がそこまで言ったとき、阿久根は怨霊に操られて「いいからそのカバンをこっちへよこせ」と言って無理やりカバンを奪おうとする。
 争ううちにカバンの蓋が開いて怨霊が解き放たれてしまう。

午前二時二十分。
 
 未来人は怨霊たちに取り囲まれて持っていた装置(死体蘇生装置・瞬間移動装置)を奪われてしまう。 
 怨霊は阿久根に逃がしてもらったお礼をするが、何を勘違いしたのか、未来人が奪った装置を使って阿久根が殺した恋人のマリエを蘇生させてしまう。
 「私はあと二十分で自動的に未来に引き戻されます。逃げた怨霊と一緒に」未来人が言う。
 阿久根が殺害して山に埋めたマリエは蘇り土から出てくる。
 阿久根のマンションのすぐそばに瞬間移動して現れる。
そして「ヒトゴロシヒトゴロシアタシハアイシテイタノニコロシテヤルコロシテヤルコロシテ……」
とつぶやきながら阿久根の部屋のドアをたたき続ける。
 タイムリミットになり未来人の姿は消える。カバンも消える。怨霊たちも消える。

午前二時四十分。
 阿久根の部屋のドアが開く。そこには泥だらけのマリエがいる。

文字数:1531

内容に関するアピール

拘束は、小説内の経過時間と読んでいる時間を一致させるです。
完全に一致させるのは無理ですが、普通の人が読む平均速度を500文字を1分とします。、
実作では、20,000文字を読む平均時間を40分として、40分間の出来事を書きたいと思います。
そして、阿久根俊夫の一人称視点で書いて、ワンシーンワンカット映画のような効果を出したいと思います。
内容はSFホラーのつもりなんですが……。
40分間で戦慄を!という意気込みで考えたんですが……。

文字数:214

課題提出者一覧