梗 概
じゅうはっきん!
主人公は求道の者である。
生まれてこの方十五年、ただただこの地の真理を究めんと、過酷なまでの修行の日々を続けてきた。
なぜ、そんな日々が始まったのか、その理由を彼は知らない。
身の周りの一切は、超ハイスペック生命維持装置K―IYОが執り行なう。
煩雑な日常の些事から解放された彼は、一心不乱に学問を究め、その壮健な体を厳しく鍛錬し、時折、星空をの向こうに神や仏や、そのほか絶対的な他者の存在を夢見た。
二親の顔も知らず、そもそも親という概念も身近ではないので、独りぼっちの彼はだからと言って寂しいという思いの起こるはずもなく、それまでは心安らかに生きてきたのである。決して一休さんの様に、
「母上様、お元気ですか?」
と夜空を見上げたりはしなかった。
では、神や仏にも比肩する、絶対的な他者とは?
言うまでもない、性的な対象である。
まあ、お年頃である。こればっかしは如何ともし難い。
超ハイスペック生命維持装置K―IYОは、まるで人間の様に後悔する。
「いっそ早い段階で去勢しといたほうが、坊ちゃんのためだったのかしら」
とは言え、煩悩を乗り越えてこその悟りであろうし、あえて試練を与える感じが神々めいていて、それはそれで興味深くもある。傷ついて倒れて、再び立ち上がった坊ちゃんの将来が楽しみではある。
そんな超ハイスペック生命維持装置K―IYОの思惑も知らず、数理の研究に没頭している時、坊ちゃんはふと、数字の3に目が止まる。何とはなしに書物を傾けて、3の字の開いた方を上にしてみると、どこかで見たようなものが力強く立ち上がり、何だかモヤモヤとした思いが沸き起こる。
あー、これはあれ、絵画とか彫像とかでよく見るあれ、女性という性の持つオッパイだな、なんだかなぁ、どうしてこんなにドキドキするのかなと思いつつ、本人は平静を装ってはいるが、
「心拍数も体温も上がってるし、呼吸も荒くなっている。あらあら」
と、ヴァイタルをモニターしているのですっかりお見通しの超ハイスペック生命維持装置K・IYOは溜息をつく。
「人間って大変」
そうこうしてるところに一通のDMが届く。
曰く、「ちょっとエッチな数字の3があっちもこっちもプルンプル。寂しい夜にさようなら、てか、早朝から営業チュッ!」
現在地より北東に3,000キロほどの地点に何らかの建造物を確認し、このメールがそこから送られてきたものだと、超ハイスペック生命維持装置K―IYОは結論する。自らに攻撃する手段があれば、問答無用で破壊してしまいたいのに、そうすることも叶わない。坊ちゃんは先ほどから、仏像のホログラムをいろんな角度から眺めまわしては、訳の分からない興奮に陥っている。
案外、いいタイミングなのかもしれないと、超ハイスペック生命維持装置K―IYОは予約のメールを送る。
拘束の内容、「BGMはヴァン・ヘイレンの1stから6thまでとする」
文字数:1196
内容に関するアピール
本当は色々考えてて、またどうせ梗概でないと言われればその通りなのだけど、今回はR-18でSF的な用語を使わない、けいおん!とか、ぜっしゃか!みたいなキャラを出して、ほぼ下ネタだけの話を試みた。
梗概については一気に書いたので(そして読み返すのも今は嫌なので)、どんな感じなのかは、たぶん本人が一番よく分かっていない。
文字数:157