ビジネスはSFよりも奇なり ―― 教養としてのSF入門

印刷

梗 概

ビジネスはSFよりも奇なり ―― 教養としてのSF入門

*装丁・目次含めて、一見「ビジネス書」のような体裁にする

*いきなり物語に突入せず、まずはビジネス書慣れした読者に「ビジネスにおけるSFの効能」を説明する導入章を用意

*1-2章では、ベストセラービジネス小説「theGOAL」のように、小説形式で物語がスタート

 

〇序章:SFが分れば、ビジネスの武器になる

AI含めて、ビジネスでホットになっているキーワードの多くは、SFを通じて学べる、ということを論証する

 

〇1章:或る日、SFは実世界に顔を出す

「ジョブズだか孫正義だか知らないが、誰が何と言おうと、オレの生活は、AIなんかじゃ良くならないぞ!コンチクショウ」

2026年夏、中堅警備会社の総務課長・サブロウ(42)の機嫌は頗る悪かった。また競馬に負けたのだ。警視庁から「不正AI」認定を受けている、競馬予測AIソフト「馬ヨミ君」の存在を2ちゃんねるで知り、違法に活用したのだが、結果は散々だった。

ウインズ渋谷を出て、再開発がほぼ終了した新しい渋谷の街並みを眺めていると、ある少女の動画がデカデカと流されていた。
 夏のパラリンピックで世界的に注目を浴びたインドの陸上選手だ。彼女は義足をハンデどころか、むしろ武器に変えて、世界の度肝を抜く跳躍をみせ、幅跳びの歴史を塗り替えてしまった。貧しい生い立ちというドラマも相まって、彼女の活躍は世界中の涙腺を刺激し、21年からは国連のアンバサダーとして、世界中の講演会にひっぱりだこだ。

一方で、視線を落とすと、サブロウに見えてきたのは、ピカピカに磨き上げられた新高層ビルの大鏡に映る、馬のかけっこに一喜一憂している中年男性だ。新社会人になりたての頃は、「警備を通じて、世界平和に貢献します!」なんて、本気で思っていた精悍な青年だったはずなのに。「なんでこんな惨めな自分に。ああ、なんとも憂鬱だ」

 

明くる日、出勤すると、何やら皆が騒がしい。
 「もしかして、先週ローンチした社内決済システムにバグが起ったのか?!」イヤな予感がサブロウに過り、慌ててデスクにつく。
 急ぎシステムのチェックをしてみたが、どうやら異常はない。フウと一息ついた瞬間だった。突然、肩を叩かれた。
 振返ると、課のメンバーたちが、ぎこちない笑みを浮かべていた。

「おめでとうございますー!」
 パチパチッ!普段は「我関せず」の態度で一切交流を持たない隣の課まで拍手の波は広がった。

「課長、おめでとうございます!凄いじゃないですか!」

一体何ゴトだ、と困惑するサブロウ。

「え?!まだ見てないんですが。異動ですよ、異動!」

「ん?あ、そうか。」
 5年以上、昇格とは無縁だったため、サブロウは全く気に留めていなかった。手元の会社端末をスクロールすると、見慣れた自分の名前を見つけた。

【佐々木サブロウ、総務部第三総務課課長の任を解く。10/1、社長特任ルーム「超空間警備室」室長へ着任】

「ちょ、超空間警備室?」

 

 

〇2章:SF的ビジネスの幕開け

東大の准教授アツシ、VRアーティストのミキ、元ハッカーで姿を現さないジェイとともに、「超空間警備室」の仕事をスタートさせることになったサブロウ。

何から手を付けていいのか…と悩んでいると、大手クライアントである国内有数のアパレル企業から「電子コマース上で、強盗にあった。事態の収拾および警備を求む」との連絡が入る。

当初は、起こっている事態すら理解できないサブロウだったが、アツシやジェイの発言をヒントに、徐々に解決策を見出す。

ジェイのハッキングによって、犯人の個人情報取得まで追い込むことに成功。しかし、「超空間警備室」の仕事はデジタルの世界だけで完結しない。ミキが作成した「実際に痛みを伴うVR兵器」を駆使し、リアルな世界での犯人拘束を実現し、身柄を警察に引き渡した。

日本初となるこの事件の解決劇は、日本で大ニュースとなった。
 この成果に手応えを感じた警備会社の社長ケンジは、大々的に「超空間警備室」の存在を世の中に広報した。

その結果、サブロウは更なる難敵たちと闘う日々が始まるのであった。

 

 

〇終章:ビジネスニーズ別SF小説のススメ

「VR」「AI」など、ビジネスニーズの高いキーワードと、それを学ぶのに最適なSF作品の紹介を行う

文字数:1722

内容に関するアピール

SF文学が「白紙の読者」に挑む場合、2つの壁があると思います。
 1つは「①SFというジャンルの壁」。もう1つは「②そもそも文学という世界への壁」。

SF作家志望が集う場では、①は積極的に議論される一方で、②についてはあまり議論される機会が少ないのではないか?と思いました(②のほうが分厚い壁なのに)。

しかし、冷静に考えてみると、「現代」という時代において、SFは、純文学よりも、エンタメ文学よりも、②の壁を突破する武器を持っているのではないか?と思うのです。
 ビジネス書コーナーを覗けば、SFではもはや死語と言えるような未来予測の本が並びます、売れてます。

この風向きを「SFの立場からするとナンセンスだよね」と嘲笑するのではなく、追い風だと味方につけて、「ビジネス書しか読まないサラリーマンたちよ、SFこそ最強の教養なのだ!」と叫ぶ一冊を用意できれば。

そうすれば、「白紙の読者」の心を動かせるのでは?と思い、ビジネス書の顔つきをした、SF小説ビギナービックという企画にしました。

文字数:438

課題提出者一覧