流刑星

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梗 概

流刑星

西暦2415年。地球人類は平和だった。
テロもなく戦争もなくなり殺人事件などの凶悪犯罪も地球上からなくなっていた。
何故かというと、地球人類全体を統制している地球連邦政府が、三カ月ごとに行われる全地球人類を対象にした定期深層心理検査により、心の中に悪意を持つ人間を早期に見つけ出し地球上から排除していたから。
ある一定レベル以上の悪意を持つ人間は流刑星に星流しにされている。

流刑星は25世紀に入ってすぐある宇宙飛行士によって偶然発見された。
太陽系内航行中に宇宙船の故障により不時着した星が、今まで観測されたことのない惑星だった。
しかもその惑星は地球と同じ大気成分だった。
地球連邦政府は地球上での死刑制度を廃止。危険思想を持つ者と死刑相当の受刑者をこの惑星に流刑することに決めた。

谷口雅雄は地球歴史学の高校教師。
大学時代のあることを心に引きずりながら生きている。
その当時付き合っていた彼女がある言葉を残して失踪していた。
「わたしは20歳になったら星になるの。だから20歳の誕生日が来たら、さよならね」
という彼女の言葉を谷口は冗談だと思っていたら、本当に誕生日のその日から彼女はいなくなってしまった。
彼女には両親・親戚が誰もいなかった。
谷口は行方不明届を出したけれど何の手掛かりもないまま数年が過ぎていった。

ある日、谷口は大学時代の友人から流刑星について話を聞かされる。
その友人は太陽系内を航行している観光宇宙船の通信技師。
谷口に聞かせたい音声データを持ってやってきた。
その音声データはノイズばかりで聞きづらいけれど、間違いなく学生時代に失踪した彼女の歌声だった。
友人は流刑星の近くを航行中に彼女の歌声の電波を受信したと言う。
谷口はその歌声を聞いて、彼女が助けを求めているようだと思った。

谷口は流刑星に行く決心をする。
しかし、そこへ行くには犯罪思想を持つか犯罪者にならなければならない。
悩んでいる谷口にある女生徒が
「定期深層心理検査のとき、この薬を飲めば流刑星に行けるよ」と言って一つの薬を渡す。
それは、服用すると悪の思想を持ち妄想に浸れることができる禁止されているドラッグだった。
谷口は流刑星に行くことができる。

谷口は流刑星で知り合いになったある受刑者の男と協力して流刑星の秘密を探る。
そして、谷口は、流刑星は彼女のDNAとニューロンを取り込んだ生命体惑星だということを知る。
彼女は言葉通り星になってしまっていた。
そして、この流刑星は星流しにされてくる受刑者たちのニューロンを食べて成長していた。
その結果、流刑星は悪意の星となり地球人類に復習しようとする。
流刑星自ら軌道を修正して地球に衝突しようとする。
谷口は星になってしまった彼女を説得するけれど、もう昔の彼女ではなかった。
それでも、谷口はわずかに残っている彼女の意識に語りかけ地球衝突はなんとか避ける。
そして、流刑星の彼女とともに宇宙の果てへ去っていく。

文字数:1200

内容に関するアピール

未来の話です。
地球上での死刑制度は廃止され、危険思想を持っている者や重罪犯は全て流刑星に星流しにされているという設定です。
クライマックスでの驚きは、主人公の谷口雅雄が、行方不明になっている彼女の手掛かりを探しに流刑星に潜入して調査した結果、彼女が流刑星になっていた!ということを知ることです。流刑星は生命体惑星でその中枢は彼女のDNAとニューロンで作らていて、星流しにされた受刑者のニューロンを食べて成長しています。
一つの惑星が意思を持ち人々の悪意を吸収して大きく育っていく、という荒唐無稽な話をリアルに描いてみたいと思います。

文字数:264

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