《地形への想起》ステートメント

作品プラン

《地形への想起》ステートメント

日本三大崩れの一つとされる大谷崩れは、1707年に発生したM8.4の宝永地震により、糸魚川−静岡構造線と笹山構造線の2つの断層に挟まれた脆い地盤が崩壊することで形成されたものである。その約1億m3のおよぶ崩壊土は土砂資源となり、下流に土石流段丘を形成し集落を育んできた。

また崩壊による地形変動は、人々に集落形成の土壌を与えると共に、これまでの生活環境を破壊してきた。信州地震大絵図は、1847年に発生したM7.4の善光寺地震による地すべり及び崩壊の発生地や、河川の埋塞状況、洪水の氾濫区域を詳細に記したものである。

過去多くの土砂災害に対し、我々は絵図によりその記録を残し、後世への伝承が試みた。しかし地形変動の起源は、戦後、都市域の膨張による開発の中、盛土、擁壁の下に潜在的自然として埋もれていった。

大規模な地形変動から我々が享受するものは、土砂資源だけではないはずだ。

我々は地形への想起から、潜在的自然との対話をはじめなければならない。

 

 

05_伊藤允彦_地形への想起

文字数:419

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