《僕たちの「かわいい」天皇》ステートメント

作品プラン

《僕たちの「かわいい」天皇》ステートメント

昔の反天皇制主義者たちはある意味で徹底していた。知識人や文化人たちはあからさまに天皇への嫌悪を表明し,また,考えうる限りのあらゆる罵詈雑言で批判・中傷した。その天皇や国家への異常なまでの執着は平成に生まれた僕には正直に言って理解しがたいものがある。

僕自身も天皇制は普通に無くしたほうがいいと思う。平等を理念に掲げる民主主義社会において国家が天皇や皇族のような特権階級を認めるのは,公にある種の差別を肯定することになり自己矛盾になるからだ。

にもかかわらず,僕が昔ながらの反天皇制主義者に共感できない,さらに具体的に言えば天皇個人に対して特段,敵対心・嫌悪を抱くことができないのは,平成に生まれた僕らの世代にとっては天皇や国家の存在そのものが希薄になってしまったからだろう。

戦争の記憶が新しかった世代にとっては,国家は明確な脅威であり天皇は戦争責任を問うて糾弾すべき敵で,目の前で困っている人の苦しみと国家や天皇が直結していた。しかし,グローバル化し社会が複雑化した現在では,国家を糾弾すれば問題が解決するほど事が簡単ではないのは皆わかっているし,今上天皇は直接的にも間接的にも戦争に関わっていないため特段天皇個人を糾弾する理由もない。つまり,無論天皇を崇めるつもりなど毛頭ないけれど,はっきり言って積極的に批判しようと思うほどの思い入れもない。

それでは僕にとって天皇とはどういう存在なのかと問われれば,せいぜい「ゆるキャラ」がいいところだと思う。「くまもん」が熊本県を「せんとくん」が奈良県を象徴しているように天皇は日本を象徴しているということになっていて,ゆるキャラと同じように式典などの大事そうなイベントにはとりあえず呼ばれるけれども,お飾りのようにそこに居るだけ。ゆるキャラの多くが政治的中立性を保つために自分でしゃべることができないのと同じように,天皇もまた自らの言葉を持つことができない。僕にとって天皇は人畜無害なおじいちゃんのゆるキャラで,それ以上でも以下でもない。

昔ながらの反天皇制主義者からは「そういう無関心が封建制を助長するんだ」とか言われそうだが,これが僕なりのやり方だ。天皇を悪の権力者として描くのではなく,人畜無害なゆるキャラとして描くことで陳腐化する。そして作品が世に出回ることによってそれが既成事実化し,天皇は忘れ去られる。こっちのほうが断然スマートでしょ。

 

 

僕たちの「かわいい」天皇 作品URL

http://www.fastpic.jp/viewer.php?file=9466828510.jpg

文字数:1061

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