梗 概
光へ繋げ
ワープ技術や光速超えは無理とされてきた。が、人間の脳の使われていない一部にワープ用の機能があるこ
とが発見される。しかし実用的には、脳を船に繋がなくてはいけない危険な手術を伴い、またやたらに外せな
外せず、実行後の影響も未知数であるので宗教界も含めて喧々諤々の大騒ぎになった。犯罪者を使う、軍人に適性検査をして志願者を募る等の案が出ては消えた。
中でも宇宙船パイロット、アウズ・クリストファドーティルは悔しがっていた。
「行けるのに、なんでよりによって人間の脳が要るのよ」
パートナーの脳科学者中村建治は、研究所のラウンジでコーヒーをすすりながら答えた。
「人間ぐらいしか高速を超えるようなんて思わないからねえ」
そのうち、「何も無理をして高速を超えなくてもいいんじゃないか」という案が出てきた。別の方向を模索してみればというのだ。
パイロット達は、アウズを含め悔しがったが、建治は変わらずのんびりと「実用化にも時間がかかるからねえ」と言っていた。
取りあえず実用化への研究は細々と続けられた。やがて世間の関心が失われた頃、ブレイクスルー突破が起こった。盛り上がるが、どの人間を使うかが問題になる。再びの議論が繰り返される頃、志願者が出たと噂が
流れる。その当人、中村建治は言った。
「こういうのは言い出しっぺがやるもんだよ。パイロットは君に指定しておいたからね」
「律儀なお馬鹿さんなんだから」
目標はアルファ・ケンタウリに定められた。
「無事に帰ってこられたら英雄よ」
「そんなものなりたくないね。脳科学者連中と君のパイロット仲間とでどんちゃん騒ぎが出来れ充分さ」
船は飛び立った。
文字数:685
内容に関するアピール
私の原点であるマキャフリイ「歌う船」を意識して書いてみました。実作をを書く機会があれば、宗教界の悶着も描写してみたいです。
文字数:61