梗 概
天岩戸の祈り
天照大神は、弟である素盞嗚尊の度重なるうざ絡みに困っていたが、機織殿に皮を剥いだ馬を投げ入れられたことで、意味がわからなすぎて天岩戸に引き籠ってしまう。ギャルである天照が姿を消すと、世界は闇に包まれ、混乱が広がる。そこで神々は団結し、天照を引き戻すための祈祷集団を結成することを決めた。
団長には、舞踏に造詣の深い、天鈿女命が就くこととなった。彼女にとって天照は読んで字の如く神推しだったので、適任と言えた。
知恵の神である思兼神は、かつて祈祷経験があり、伝説のOBだった。彼は祈祷の振りの基本は「突き、反り、回し」であり、祈祷集団にとって団旗は神以上の存在であることを告げる。天照の機織り仲間が張り切ったところ、団旗は180畳を超えてしまったが、力の神である手力男命はそれを振ることが出来、旗手となった。
もう1人の力の神である天手力男命は太鼓を担当することとなり、神具を司る布刀玉命は、機織殿で神具・学ランを編んだ。
多くの神が団員となる中、天鈿女命は苦しんでいた。超高速の祈祷歌に、身体が付いていかない。音速の”反り”による腰への負担が大きすぎるのだ。二人の力の神による過酷な筋力トレーニング、神々の学ランの着丈に対する異常な拘り、重要なパートを担うはずだった天児屋命の想定外の音痴、更には恋愛禁止の祈祷集団の鉄の掟に反して天手力男命と天児屋命の恋愛関係が発覚し、力の神同士での殴り合いが始まってしまう。祈祷集団は最悪の状態で、祈祷日を迎えることとなった。
当日、孤軍奮闘する天鈿女命に対し、神々の神威が高まらない。思兼神はあらゆる策を講じるが解決に至らない。世界の暗闇が深まる中、天鈿女命はその手に神具・奪いしものを手にし、おさげを切り落とした。絶句する神々。顔を上げた天鈿女命が口を開く。「もう、背中を押して下さいとは言いません。ついて来て下さい」。
瞬く間、神々の神威が横に繋がり、一つになる。一閃した団旗により、岩戸ではなく次元の扉が開く。
先の暗闇には、天照がいた。ネイルはボロボロになり、ブリーチした金髪はプリンになっている。濁流する空間の中、天鈿女命は手を伸ばす。天照は掴み返してくれない。それでも繰り返し、天鈿女命は手を伸ばす。そして叫んだ。「掴んで、 心を!」。
天照が目を覚ますと、岩戸の中にいる。外からは太鼓の音が、そして彼女の笑い声が聞こえる。天照は立ち上がると、岩戸の隙間から、外を覗いた。
文字数:1148
内容に関するアピール
TVが好きなのでTVばかり見ているのですが、日テレの『超無敵クラス』という番組の中で、高校の応援団に密着することがあります。そのシリーズが毎度青春スポコンでとても良いのですが、SF味は全く無く、「逆にこれがSFなのでは?」という困惑を、私に与えてくれます。時代錯誤な言葉や価値観が頻発し、同時代に生きているのに何かズレを感じるところが良いです。
私の中でSFというと、「変なアイデア」かなと思います。これまでに無かった掛け合わせとか。それを神話や宇宙でやってくれると分かりやすいですが、そうでなくても全然いい。
今回は、シスコンの弟にうざ絡みされすぎて引き篭もってしまった天照大神を、天岩戸から神々の応援団の応援で引っ張り出せたらと思います。やれることをやっていこうと思います。
文字数:337