梗 概
天カケル銀河
ある夏の日のこと、冴えない独身中年男である銀河二郎は、仕事を終え、自宅にデリヘルを呼んだ。
来た女がスレンダー体系だったため、『おっぱいコズミックコース120分』の不履行が決定したことに怒りを示したところ、その女に謎の力で打ち負かされた。
女はどうやらデリヘル嬢ではなく、宇宙人のようなものであるらしく、宇宙を創造・誕生させる使命を、二郎に果たさせるためにやってきたというのだ。
訝しむ二郎が、どのような方法で宇宙を誕生させるのかと問うと、女は『下地が黒地の、キラキラしている刺繍がしてあるゴムクッションのようなもの』を取り出した。
さらに二郎がそれについても追及すると、『そのゴムクッションのようなもの』を、二郎の思うまま、望む形で使用し、宇宙を創れと言う。
反発する二郎であったが、圧倒的な科学力を前に、時間、空間、概念の牢屋となってしまった安アパートの一室から二郎は逃れられず、遂に二郎は『宇宙の創造』に取り組むこととなった。
そこから膨大な試行錯誤が始まった。
その『ゴムクッション』は丸い形だろうが四角い形だろうが、どんな形にも変化した。(ただし、粘土のように単純な図形や形にしかならない)
しかし、どのような形にしても女はうんとは言わず、それどころか毎回、『これでは未完成だ』と言い、そこら辺に不完全な宇宙を投げ捨てるのだ。
長時間の試行錯誤を行った、と感じた二郎が空腹を訴えたところ、「この場所で腹が減るはずないだろう……」と蔑みの眼差しを向けながらコンビニに買い出しに出かけた。
玄関を出るときに屈んだ女のスキニーから生の腰が見えた。意識することは無かったが、刑務所のような閉鎖空間では、他に気がまぎれるものは無く、人間の欲望は鋭敏になるらしい。
二郎は下半身の一部が熱くなり、その欲はごろごろと床に転がる不完全な宇宙の残骸へと向かった。
女が買い出しから戻ると何か不可解な音がする。
女は怪訝に思い、玄関の前で立ち止まったが、二郎の太い悲鳴が聞こえたことで意を決して勢いよくドアを開けた。
何ということでしょう。そこには、下半身裸で、宇宙に対して腰を振る二郎の姿があった。
言い訳じみたものを呟く二郎をシバきつつ、女が強引に宇宙を二郎の下半身から引抜いた瞬間にそれは起こった。
「アッ…ふぅ」
二郎のそのつぶやきと共に、下半身から宇宙へ、宇宙から室内へ、室内から地球へ、地球から銀河へ、銀河から宇宙へと、白く雄大な光があふれた。
女は認めたくなかったが、これがまさしく宇宙の誕生であったのだ。
二郎は気がつくと、女も、宇宙も、何もない、いつもの散らかった室内にいることに気づいた。
少々呆けていると、いつものデリヘル嬢が現れた。
軽い挨拶を交わして二郎は、嬢の口から、本日は七夕であり、窓の外に天の川がさらさらと流れるのを知ったのだった。
文字数:1179
内容に関するアピール
短時間で書きました。
冷静になって見返してみると「何でこんなもん書いたんだ俺」と、酒の怖さを今更ながらに実感しております。
さて、「SF」から連想される言葉で私が真っ先に思いつくのは、「科学技術の発展」であります。
「科学技術の発展」と共に人類は進歩してきたが、それを扱うのもまた、「愚かな人類」です。
科学にこの先どんな発見、発展があっても、人間はどうせ下らないことに全力を尽くします。
しかし、その「愚かな人類」こそ、強かな、愛すべき存在であるとも私は思います。
そのような想いを抱いて作品を作りたいと思います。
皆様、一年間どうかよろしくお願いします。
文字数:280