梗 概
月のうさぎの跳ねる日に
満月の夜に、少女が自宅で託児ロボットと過ごしている。
母は無重力分娩での妹の出産を間近に控え、宇宙ステーションに滞在中。父はそれに付き添っている。
ロボットと少女は月面の模様を見ながら、月の兎の話をする。
学校に馴染めず、両親も傍にいないので少女は感傷的。
少女はピアノで合唱曲「月のうさぎ」を弾く。
翌朝、学校。ピアノが上手な転校生が来ると噂になっている。
少女は自分と同じ趣味の人が来るかも、と内心喜ぶ。
ヤジを上げるいじめっ子。
少女はピアノを弾けることを、教室では隠している。
転校生は両親とも音楽家だという。
合唱コンクール(校内立候補制)でピアノ伴奏をするという転校生。
少女は迷いながらも参加を決める。
練習を通じ打ち解けてゆく転校生と参加者。
少女はピアノを弾けることを話せない。
妹が生まれる。どこか他人事のような、画面の向こうの泣き声が印象に残る。
本番、コンクールは3位。演奏賞は転校生が勝ち取り、いじめっ子の陰口が始まる。
クラスでの参加者は数名で、誰も声を上げられない。
避けられ始める転校生。少女も応対がぎこちなくなり、話せなくなる。
寂しそうな顔をするものの、気丈にふるまう転校生。
少女はロボットに人間は嫌だと愚痴る。
ロボットは「自分はつまらない機械にすぎない」と主張し、人間の友達を作るよう諭す。
妹の泣き声を空耳する。
少女はロボットがわざと卑下していると判断する自分を肯定する。
妹が父に連れられ家に来る。少女は充電スリープ中のロボットのケア対象を妹に再設定する。
ロボットがベッドの中の妹をあやしている。
少女は寂しそうに笑い、学校に向かう。手にはピアノの楽譜を持っている。
文字数:683
内容に関するアピール
SFですが、めちゃくちゃ遠い何かとの関係を物語の形で表現したものだと思っています。宇宙、人工知能、タイムトラベル、題材はなんでもよいのですが、両者の関係が心的・物的にあまりに遠いがために、なんらかの概念を共有できるか分からない状態を物語化すればそれはSFになるだろうと感じます。
なので、今僕が最も遠いと感じるものが何なのか挙げることができれば、「これがSFだ!」と言えると思いました。
梗概を思いついた頃、この世で最も遠いのは「信頼し合える人間関係」と考えていました。なので、そういう気分が反映されていると思います。月のうさぎがパレイドリアであることを、人型ロボットが存在するときにそれを人と認識するのかと絡めて、相手が哲学的にはゾンビだとしてもいいや、それも思い込みかもわからないよな、頑張って生きよう、というところに着地する小説を書きたいと思っています。
一年間どうぞよろしくお願いします。
文字数:399