神隠しの向こうがわ

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梗 概

神隠しの向こうがわ

「寝れないの。頭が痛くって」、夢は訴えた。

痛みは激しさを増していった。「赤ん坊の声が聞こえる」幻聴も聞こえるようになった。精密検査を受けるも、原因がわからず状態だけが悪化した。夫、山吹朔太郎、娘、青菜は、助ける術もなく焦るばかりだった。

ある朝、朔太郎の横に寝ていたはずの夢が消えていた。警察に失踪願を出した。親戚、友人、全てを探った。防犯カメラも映っておらず、警察は失踪に見せかけた家族内の殺人すら疑った。結局、裏付ける情報は一切出ず、捜査が打ち切られた。ある晩、親戚から電話があった。失踪人を見つける能力を持つ祈祷師がいると言う。すがる気持ちで、朔太郎と青菜は祈祷師の元へ。

祈祷師ゆた先生は、二人を見るなりため息をつき「厄介や」と呟く。「奥さん、別世界におる」と言う。別世界?と聞くと「うちな、人と違う目を持ってんねん」とゆた先生。青菜が、別世界はどんな感じですかと聞くと、似ているが透明な世界だという。青菜は、物理学者の父に、違う次元の可能性ある?と疑問を呈すると「わからん。だとしても次元間の移動はできんぞ。ただ、重力は次元の壁を超えると言う説もあるけど」と言うと、ゆた先生「重力?見えるで。ゆらゆらしとる。プチって切れている場所も」と言う。朔太郎は、切れ目がどこかに繋がっていることは、と詰め寄ると、ゆた先生が困り顔で「今度確認しといたる。今日はこれまで」と言い奥に。

10日後、三人は小さな池に。ゆた先生は「あそこや。身体の密度を下げたら通れるかもしれん。でも子供が精一杯や。行けるか?」と聞くと、青菜は力強く頷く。ゆた先生、青菜の手をとり歩きだす。青菜の身体が薄らいでいく。青菜は気がつくと同じ池の前に。周りは誰もいない。困る青菜。しばらく歩き回るが疲れ、帰ろうと家を想像した瞬間、移動した。驚く青菜。まさかと池を想像する。また瞬間移動した。それならと、母の姿を想う。身体が引っ張られる。

気づくと、母・夢が前に。「え、青?」驚く夢。腕に赤ん坊を抱いている。青菜が「赤ちゃん?」と聞くと、「青のお兄さんだよ」と言う。青菜は「ママ、帰ろ。パパも待ってる」と言うと「この子ずっと泣いてた。寂しかったんだね」夢は赤ん坊を撫でながら「青も、いてくれるよね」と言い、目がぎろりと開く。白濁し精気が無い。近づいてくる夢。恐怖で動けない青菜。「あかん、逃げろ」頭にゆた先生の声が響く。青菜は必死に立ち上がり、夢を突き飛ばし走り出す。追ってくる夢。焦りから瞬間移動ができない。「振り返るな。捕まったら永遠そっちや」とゆた先生の声。走る青菜、池が見えてくる。飛び込むように池へ。身体が消えていく。

元の世界に戻った青菜。ゆた先生と朔太郎を見ると泣き出す。ゆた先生、青菜を抱きしめる。泣き止んだ青菜「ママ、お兄ちゃんに呼ばれたみたい」と言うと、朔太郎は「そうか」と、口を紡ぎ遠くの空を見続けた。

文字数:1190

内容に関するアピール

青菜、ゆた先生、朔太郎、そして夢、一人ひとりの輪郭を磨き、息を吹き込み、試行錯誤して舞台を整えた時、四人が満足して演技を始めてくれた、そんな感覚がありました。

家族の絆、そして非情さ、ファンタジーとサイエンスの狭間、そんな僕が描きたかった物語を、想像もしていなかった形で演じてくれました。でもまだこれは予告編。

リハで見た、キリキリする演技、うるっとくる表情、決め台詞、文字数の制限で泣く泣くカットしました。きちんとした尺で、四人の悲しくもスピード感溢れるストーリーをお見せできればと思っています。

文字数:247

課題提出者一覧