SNS自体に内在する意識と愛に関する研究

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梗 概

SNS自体に内在する意識と愛に関する研究

 大学の授業でニューロコンピューティングについて講義を受けるユキコ。シナプス同士が結合を強化して学習してゆくことと、ニューロンが興奮状態と抑制状態に大別されることを知ったユキコは、食堂で友人のコウジにこれはどれだけニューロン同士が愛し合っているか、また欲情しているかの問題とし「ニューロン擬人化BL」の概念について興奮して語る。コウジはBLについては一蹴、それよりもいかにAIが脳細胞に似ているのか驚いたと語る。
 話はコウジが友達を作れたかという話題に移り、ユキコはお前にはいきなりリア友は無理だからSNSでネッ友を作れと指導。既にSNSでも人間関係があって割り込むのは難しい、と愚痴るコウジ。ふむそれもBLだ、と何でもBLに例えるユキコにいやSNSには男も女もいるから、とぞんざいに返事するも、それはSNSの個々のアカウントがニューロンに類似しているということではないか、とコウジは閃き、つまりSNSも一種の脳である、SNSには意識がある、とコウジは言い出す。
 二人は、ユキコがコウジに巻き込まれる形で、SNSの意識はどのようなものでいかに観測できるかの考察を開始。個々の関係性はリプライの多寡で決定でき、双方リプライ数が釣り合っているものを相愛、偏っているものを偏愛と定義すると、順方向と逆方向で全く別の脳マップが描けることになり、これはSNSは原理上二つの意識を持つと言えるのではないかと判断。これをSNS意識A、SNS意識Bと規定すると、AとBは果たして互いに会話可能かと考察が始まり、実験で確かめるべきだと結論づけた。
 二人は既存のSNSからデータを引っこ抜き、実発言データをそぎ落とした関係の強さだけを持つデータをコンピュータ上に再現し、意識のスナップショットと命名。そして両者が会話をしているという確認実験は、Aが順方向に対して投げたキーワードがBにおいて復号される現象が観測できた時に成功とする。
 多数のキーワードを投げてある時成功した。キーワードはユキコが仕込んだ「バームクーヘンエンド」というBL用語で、コウジがなんだそれと言うと用語の定義をユキコが滔々と語り、呆れたコウジはそれは無視してともかく実験は成功と結論づける。SNSが持つ知識とはAと意識Bが二人きりで会話しあっている独自の、一種孤独な世界であることが述べられる。
 ラスト、コウジのことを心配する両親の会話で、ユキコは現実には存在せず、コウジの脳内のもうひとつの人格で、ただ両親とも会話がないので人格の詳細は不明、ただフジョシとか、などと語られる。結局コウジには全く友達もおらず、孤独であり、ただ勉強だけはできるようであるが、そんなことではまともな人生は送れない、と全否定される。読者には「ユキコとコウジ」と「SNS意識A/B」の類似が示唆される。

文字数:1165

内容に関するアピール

 私がSFに必要だと考えているのは、ロジックが物語を牽引するということです。ロジックだけでも物語だけでも不足で、両者が絡む必要があります。この条件だけだとミステリも当てはまりますが、それにサイエンス要素があるのがSFではなかろうかと思います。そしてその物語によって、既存の価値観を揺さぶるようなトリップを読者に与えたいという思いがあります。
 本作では、今を時めくAIを導線として、BL・社交・愛といったあまりSFらしからぬ要素をサイエンスとロジックによって有機的に結合し、最後に物語性の発露としてどんでん返しを与えて、最終的に「何人も独りでは生きられない」→「二人だけで生きる意識の在りようがある」という価値観の揺さぶりを意図しています。
 それでは一年間、よろしくお願い申し上げます。

文字数:342

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SNS自体に内在する意識と愛に関する研究

 昨今の流行に乗ってニューロコンピューティングの講義を選択する学生は多く、講義には学内で最も大きい教室が割り当てられていたが、その割に学生はまばらだった。多くの学生は講義などには出ず、たまにいる全てのノートを取ってくる学生のノートを手に入れて、期末試験前にちゃっちゃと勉強して要領よく単位を獲っていくからだ。
 だがきちんと出席していてもコウジのノートを頼る学生はいなかった。コウジには友達がいない。誰も。
『これが人間などの脳細胞、ニューロンの模式図です』教授は彼らからずいぶん遠くで、マイクを使って喋っている。細い枝を多数持つヒトデのような図がスクリーンに映される。『この樹状突起が他のニューロンと手を繋いで、情報の経路――シナプスを形成する。これは当初は弱い結合であっても、繰り返し使われることによって強化され強い結合となってゆく。これによってヒトは学習をしてゆく』
「結合……愛だわ」ユキコがまたくだらないことを呟いている。
『この脳細胞を模したものがニューロコンピューティングです。コンピュータ上に仮想的に配置された多数のニューロンを模したノードが、網の目のように結びつきネットワークを形成する。ニューロコンピューティングで形成されたこのネットワークはニューラルネットワークと呼ばれます。これを使って演算を行うことによって、一見知性に見える活動を観測できた。これを大規模に学習をさせていったのがこんにちのAIであります。AIは演繹的に作られたわけではなく、結果として知性が観測できたからそれをとにかく強化していったのです。なぜAIが考えることができるのか、我々はいまだその答を出せていません。しかし、それは、なぜ我々の脳が考えることができるのか、答えが出せていないことと同じことなのです』

  ◇

「為になる講義だったわ」
 学食でユキコはうっとりとしている。
「まだネットにも書いてある基礎的な話だけどな」
「ニューロンとニューロンは愛し合っていることがわかった」
「ついにそんなものまで擬人化し始めたのか。この前はナイフとフォークを擬人化していなかったか」
「あれは流血沙汰になってよくなかったの。これからはニューロンBLの時代を感じる」
「金属に血液は流れていないんじゃ……」
「愛があれば血が燃え滾るの。そういうものなの」
「愛ごときに物理法則を超越させないでほしい」
「物理を越えたところに愛があるの」
 ユキコは一切学問などしないほうがよいのではないか。そうコウジは思いながらカレーを食べた。まずい。まずいのは純粋にレシピの問題であって、愛情を注いでいるかではない。
「そうやって理屈で済ませてしまうところにキミに友達ができない原因がある」
「別に要らんから」
 それでも他のメニューよりいくぶんマシなのでコウジはいつもカレーを食べ続けている。この学食に自ら改善する余地はない。おそらく学食自体が改善する必要を感じていない。改善は不要である。コウジはそんな破滅的なカレーを食べ終わると水を飲み干して席を立った。
 廊下でユキコが掲示物に目を留めた。
〝性感染症の検査を受けましょう〟というそのポスターは、たとえ信頼する特定の相手としか心当たりがないとしても、その相手がどこかから貰っているかもしれない、という趣旨で警告するポスターだった。
「学問の府にこんなポスターを掲示するなんて、大学がHを推奨しているのね!」
「推奨しているのはHじゃなくて検査」
 トイレの男女の識別マークのような図形が、男性は青色で、女性は赤色で、それぞれ多数配置され、それぞれが線で結ばれており、一般にひとつのノードからは複数の線が伸びている……と、そういう生々しい図示がなされていた。
「まるでニューラルネットワークのようね」
「……」
「これこそ、ニューラルネットワークが愛によって構成されていることを端的に説明する図だわ」
「お前が注目しているのって、どうせ青色と青色のノードにも線が引いてあるところだろう」
「なぜそれを……キミはテレパシストか」
 わからいでか、と思いつつコウジは無視する。とはいえ、この複雑な相関図というか相姦図によって性病は世にあまねく伝搬してゆくのだろうが、コウジには縁のない話だった。恋人などいなかった。それ以前に友達などいなかった。必要ない。不要である。それでもユキコが言う。
「キミにはリア友を作るのはハードルが高いと思うのよ。まずはSNSで作ってみてはどうか? 何事も段階を踏んで」
「SNSなどただ流れてくる感情を眺めて楽しむための場所だろう。憎悪とか憎悪とか憎悪とか」
「確かに一見今のSNSは憎しみに満ち溢れている――最も日本で人気のある、あのSNSでは特にそう――しかし、キミは重要なことを見落としている。憎悪とは! 愛の裏返しであるということを! なぜ、かのSNSがあのアルファベットで名づけられていると思うの。愛の究極の形である三文字の英単語の最後のひと文字が!」
 そのSNSで書いたら一発で凍結されそうな下ネタを滔々と演説するユキコをともかく無視してコウジは帰途についた。

  ◇

 コウジはスマホを開きSNSを眺め続けていた。SNSは、生々しい感情が大量に目の前に流れ続け、しかし介入さえしなければ隔離された空間で決して危害を及ぼしてくることはなく、安全に感情を眺め続けることができる場所だった。SNSは、発信しない限りにおいて、とても面白い場所というわけだ。そんなところでわざわざ発信して、激流に呑まれるなどコウジは絶対にやりたくなかった。
 ドアの向こうでコトリと音がした。以前は声もかけられたが今はそんなこともない。立ち去るのを待ったタイミングで食事を受け取る。食事を取ることも人間の宿命のひとつだ。人は光合成などできないようになっているので食べるほかない。食事は必要ない、とはいかない。まずい学食のカレーであっても食べなければならない。人と人が争うもっとも原初的な形は、食うや食わずというものなので、この宿命が憎しみを生み出しており、憎しみとは人間の本能ともいえる。
 SNSでどこかの見知らぬ誰かが言う。
〝引きこもりとかむちゃ迷惑だし非生産的だし社会のゴミだし。穀潰しだね〟
〝まあ支出は飯風呂寝るネットの最小限に抑えられているけどね。それはそれで経済が回らない〟
〝最近は学校には行くけれどそれ以外は部屋に閉じこもって友達も一切いない準ひきこもりというのが増えてるとか〟
〝うっわー、金はかかるわ役にたたないわ全く生きてる意味なくね?〟
 そんな言葉もコウジには刺さらずに、コウジのすぐ脇をすり抜けてゆく。コウジはその憎しみのエネルギーだけを観測してコウジ自身には何の影響も及ぼさない。
「この二人愛し合っているわね!」出し抜けにユキコが言う。
「愛し合ってる? 誰と誰が?」
「このSNSの二人」
「悪口を言い合っているだけだろう」
「だからよ。ああ、あなたの言っていることなら賛同します、大好きなあなたが憎い人が憎い! それが愛なのよ」
 それが愛かどうかは妄想なのでどうでもよいとして、ユキコの言うことは部分的には合っている。同じ敵を共有することで人は絆を強める。それをコウジはSNSを眺めて肌で感じていた。
「ま、悪口言うのが趣味のような奴みたいだな」コウジは、『返信』タブをタップして表示を変えると、このアカウントが他にもたくさんのアカウントと怨嗟のこもったやりとりをしているさまが表示された。相手の悪口に賛同したり、敵対するアカウントに特攻をかけたり、他の投稿を引用して『この人を否定するわけじゃないけど』と前置きして否定したりしている。
「これ……性病が伝搬するやつだわ! あのポスターの」
 コウジはリプライのやりとりを性的接触に見立てるユキコの妄想に変に感心しながらも、学校でのユキコの言葉を思い出し、そこに三段論法を見た。

 SNSが性病ポスターのようである
   ↓
 性病ポスターはニューラルネットワークのようである
   ↓
 SNSはニューラルネットワークのようである

 そしてコウジの中にある考えがひらめいた。
「意識……」
「え、なに」
「……SNSには意識がある」
「そりゃそうよね、みんなお互いがお互いを意識しちゃって」
「違う。アカウントの意識じゃない。SNSそれ自体に意識があるんだ」
「……どういうこと? 頭大丈夫?」
 ユキコに言われたくないとコウジは思った。

  ◇

「講義で言っていたな。ニューラルネットワークがなぜ考えることができるのか答えは出せていない、と」
「そうだったかしら」
「つまり、なぜかネットワーク的なものがあると、そのネットワークは考える能力を持つ」
「そんなものかしら」
「なので、人間と全く形態は異なるにせよ、SNSがネットワーク的である以上、何かを考えているといえる。意識があるといえる」
「なんかすごい想像力のような」
「妄想の塊のお前に言われたくないんだが――もう少し詳しく言えば、このネットワークは、シナプスの存在、つまり経路の有無に相当するフォローと被フォローの関係、そして関係の強度については、繰り返し使われることによって強化される関係性――リプライの多寡によって定義されるわけだ」
「愛の重さね」
「関係の強さだ。これの面白いところは、デジタルな事象であるが故に、簡単にコピーが取れてしまうことだ」

 そうして、コウジは本当にものの一時間ほどで、SNS意識をPC上にコピーする仕組みを作ってしまった。特にコウジは天才プログラマーというわけでもないのだが、うまいことにたくさんのLLMが台頭して、AIに依頼すれば簡単にプログラムが作れる時代がちょうど訪れていた。データの収集に必要な機能要素を粗く並べ挙げ、『pythonスクリプトを作ってください。仕様は、以下のURLで示されるSNSをクロールして~』などと各機能を明確に指示してやれば、要素を組み合わせてシステムはできてしまう。
「クロールには……まあひと晩くらい見ておけばいいだろう」

  ◇

「データが取れた。これがSNS意識だ」
 ディスプレイには、脳細胞にはあまり見えない、規則的なマス目が並んでいた。
「私にはただのExcelファイルに見えるわ」
「A列にアカウントID。B列に相手のアカウントID。A列とB列の組み合わせがシナプスを表現する。C列にA列アカウントからB列アカウントへのリプライ数。D列には逆方向のリプライ数。シナプス強度としてちょっと扱いに悩んだけど、C列とD列の平均値をとってE列に記載してこれを強度とすることにした」
「どう見ても蠢いているように見えないんだけどこんなものが生きて意識を持っていると言えるの」
「これは収集を終えた瞬間の意識だよ。いわば意識のスナップショットだ。実際には、SNSは日々更新されている。だが、過去の日付までクロールする必要はなくなって、更新はその日のデータだけ集めればいいから、すぐに追随できるんだ」
「でもそれだとただ記録するだけでしょう。SNSくんが何を考えているのかわからないじゃない。意識があるのならSNSくんと会話できないの」
「はぁ?」コウジの相槌はひときわ侮蔑の響きを帯びた。「人と人も分かり合うことなどできないのに、人とSNSが分かり合えるわけないよね」
「人間同士は普通分かり合うよね? 愛し合うよね?」
「愛し合うはどうでもいいとして……人間が分かり合う存在なら、なぜSNSは今日も燃えているのか」
「しかし話し合いを尽くして」
「むしろ罵り合いは尽きない」
「……」
「それ以前に、そもそもSNSが日本語を理解できるわけないだろう」
「少なくとも日本人はみんな日本語で投稿してるんですけど!?」
「いまだ理解できていないようだが、投稿そのものとSNS意識は全くレイヤが違うんだよ」
「どこにコスプレイヤーが!?」
「馬鹿すぎる……お前みたいに生きられたら毎日楽しいだろうな」
「でも日本語じゃないにしても、何を考えているのか」
「およそ人智の及ばない概念について考えているはずなので、人智で理解しようとすること自体が愚かだ。存在が確認さえできればそれでいいのさ。数学の解の存在証明に意味があるように」
「そんな……でも、種別を超えた、汎用的な概念があるんじゃないかしら。たとえば愛。SNSくんは誰が好きなの?」
「またそういう方向に」
「人を愛するために人は生まれた。ならSNSくんも誰かを愛するために」
「SNSの存在理由は会員同士が会話するという明確な理由があるんだが」
「きっとそれだけじゃないと思うの」
「それ以前にSNSはそれ単体で閉じているので、単体の意識体としか見なせない。何かを愛するためにSNSは生まれ得ない」
「愛のない世界なんて!」
「……人を愛するために人は生まれたってのも、どうなのか……人は、あらゆる存在は……ただ生まれただけだ」

  ◇

「私たちの子供の頃は、帰ってきたら玄関にランドセル放り投げてそのまま、また行ってきまーすって友達と遊びにいったもんですよ。それが帰ってくるとずっと家の隅っこに居て本を読んだりしてる。どうにもおかしいと思っています」
 父親は医師を見て母親は父親がするように医師を見て少年は自分の膝を見ている。
「ご両親のおっしゃることはわかりましたので、まずコウジくんと二人でお話できますか」
 コウジの両親は別室に行った。行くときに一度振り返る姿が見えた。父親の表情は、心配するような表情というよりは険しい表情だった。コウジの視線はぶれることなく、まだ膝を見ている。
 扉がしっかりと閉まって、さらに数拍おいてから医師は口を開いた。
「まず、先生は君が何を言っても否定するつもりはありません。その上で、君が考えていることを聞かせてください」
「……どうして、友達と遊ばなきゃいけないのかわからない」
「うん、なるほど……」

  ◇

「SNSくんは、たったひとりで隅っこでいじいじと考え事をしているというの……?」
「空間の概念がないから隅は定義できない。……ん……いや待てよ……」
 コウジは自分の膝を見つめながら考えを巡らせた。
「ベッドで受が攻を待ち受けても永遠に攻が来ないなんて」
「SNS意識は二つある」
「えっ! どういうこと」
「C列とD列両方のデータがあるからだよ。何もこれを一緒くたに平均値にすることはなかった」
「さっぱり意味わかんないんだけど」
「じゃあ簡単のためにa、b、cの3アカウントしかないSNSのSNS意識を想定するよ。Excel列と混乱しないよう小文字表記にする。この場合シナプスの構造は三角形で表される」
「さ、三角形……? 待ってそれは斬新だわ、図形BLというのは……三角形と四角形なら……この場合三角形の鋭角が効いて四角形側が受になるのは必然であって」
「まずa→b、b→c、c→aの関係の強度がある。たとえば仮に10、9、2とするな」
「新しいジャンルの開拓をしれっと無視したわね……ともかくa男はb彦を激しく愛し、b彦はc也をかなり愛しているがc也はa男をほとんど愛していないわけね」
「この状況は、当然三辺の長さが10、9、2の三角形で表現される」
「当たり前体操」
「逆にa←b、b←c、c←aの関係を考える。つまり矢印が逆」
「そこは矢印じゃなくてかけ算で表すところじゃないの?」
「意味がわからんがここで強度が2、4、3とする」
「それは……a男がb彦を激しく愛しているが、b彦はa男をほとんど全く愛していない……」
「もうそういう理解でいい。これは当たり前体操なことに、三辺の長さが2、4、3の三角形で表現される。この二つの三角形は明らかに違う図形だ。ここに二種類のネットワークが形成されているというわけだ」
「なんということ……a男の……a男に限らず、たくさんのアカウントの圧倒的な片恋の存在が皮肉にも、SNSくんに新たな相手を誕生させているというの……」
「頭が悪いんだか理解が早いんだかわからないがまあそういうことだ。で、アルファベットだと混乱するから、第一のSNS意識を甲、第二のSNS意識を乙とする」
「せっかく漢字を使うんだったら攻と受にしない?」
「その字面はそれぞれの能動的な立場と受動的な立場を明確に定義するものだな」
「理解が早いわね」
「じゃあその定義づけは無理だ」
「なぜ」
「甲と乙は、出会わない」

  ◇

「『人は独りでは生きられない』って……」
 コウジがぽつり、ぽつりと話し始める。
「父さんも、母さんも」
「そう言うの?」
 コウジは頷く。
「言う」ややあって、「のが大好き、みたいで。そういうの、……」
 また間が空くので医師が予測変換みたいなことをする。
「〝嫌〟?」
 沈黙。
「〝うざい〟?」
 沈黙。
「〝うっとうしい〟?」
 沈黙。
「本は好き?」
「本は、読んだものが、見える。残る」
「友達、作っても、遊んでも、何も、見えない。残らない」
「ふーむ」

  ◇

「甲と乙は人間に例えるなら、脳しか存在しない状態で、耳や目といったインタフェースが設定されていない。従って耳目がないところでは出会いようがない。互いを感知するすべがないのだから」
「真っ暗闇の中でただ思索するだけの存在なの」
「そのとおり」
「真っ暗闇の中といったら、本来何も起きないはずがなくて、朝チュンするところなのに……」
「朝チュン?」
「夜中にやることをやるところはあえて描写しないで朝窓辺で鳥がチュンチュン鳴くのを朝チュンというのよ」
「というわけで甲と乙は出会わない」
「折角の用語解説を無視するなと」
「下らなすぎたので……」
「でも脳を共有しているんだから、脳内で会話できないの?」
 沈黙。ややあって、
「……ん……それは……ありうる……いや……どうかな……」
「やっぱり攻と受は愛し合うことができるんだわ!」
「甲と乙」
「どっちでもいいじゃないの!」
「ちょっと……わからない……実験してみたい。甲のスナップショットにキーワードを仕込んで、その状態で更新を続けて乙側で復元できるかどうか……」
「キーワードといったって、SNSくんは日本語はわからないんでしょう? というか、言語を司っている場所があるかどうかもわからないんじゃないの?」
「そのとおり。だが、データは何だっていいんだよ。SNS側に意味がわからない文字列であっても。つまりここで使うのは……電子透かしだ」

  ◇

「いかがですかね。治りますか、こいつは」
「治る、という言葉は、健康な状態と病的な状態と二分できる場合に使う言葉でして、今回のケースだと、そういう物の捉え方をしないほうが良いかと思います。もう少し、息子さんとは時間をかけて話したい」
「何とかしてほしいですね、私たち、息子を真っ当に育てたいだけで」
 父親の表情はいつも、険しい。

  ◇

「電子透かし?」
「知らんのか」
「全然」
「たとえば、画像データに電子透かしを埋め込んでおくと……ある程度は画像処理なんかかけられても、埋め込んでおいたデータを取り出せる。そうすると、勝手に画像をコピーして使われても、著作権者がそれを見つければコピーであることを証明できる技術さ」
「で、それが?」
「甲のニューラルネットワークのパターンに埋め込んでおく」
「埋め込む?」

  ◇

「……どうしてそんなに友達が大事なのかわからない」
「こういう話をしようか。脳にはブローカ野とウェルニッケ野という部位がある。本を読んだり理解する、つまり言語理解に使われるのはウェルニッケ野だが……言葉を話す運動、声帯を震わせるとか口の形を変えるとか……そういう運動を司るのがブローカ野で役割が違うんだね。そして、脳というのは、使わなければ衰える。そういう意味合いでは、話す相手がいることは、必要といえる」
「……そんなこと言う人はじめてだ」
「たぶん、君は要不要でものを考えている。ご両親と違って」

  ◇

「もしかしたらSNS意識にもウェルニッケ野に相当するものがあるのかもしれないが、それを探すだけでも大変なので、全体にキーワードをまぶす。そういう改ざんを甲側に加えたSNS意識のイメージを、またしばらく更新してゆく。その後乙側でそのキーワードが復元できれば、甲と乙に会話が発生していたことになる」
「愛だわ」
「この作業には、まず埋め込むキーワードを用意する必要がある」
「そういうことなら協力するわ!」
「何か嫌な予感はするがキーワードはそれこそ何でもいいわけだから好きにしろ」

  ◇

 本事例は、息子A(初診時10歳)の非社交性を心配した父親B、母親Cの受診を起点とする。両親の主訴のとおり、Aには回避性パーソナリティが認められ、特に友人と呼べる存在はなく、毎日学校と家を往復して放課後は常に在宅して読書を行っている。学業成績は優秀である。
 父親Bは社交的な性格であり、その性格を活かして大手商社の営業職として勤務、初診時の役職は課長。自身の成功体験に起因するのか、社交性に対する執着が見られるが病的と言えるほどではない。母親Cは、専業主婦であり夫唱婦随的な考えを持ち、若干古風な家庭といえる。従って息子に対する見方も、完全にBの考えに従っている。

  ◇

「でも別に……頭の中で話せばいいだけだから」
「頭の中で話すと声帯は使われないよ」
「別に必要ない」
「それだよね。必要ない。君はそういう考え方をする」
「最初に否定するつもりはないって」
「だから否定はしていない。そういう考え方は、先生も好きだよ」
「『ご両親と違って』って言った。父さんや母さんのの考えは、じゃあ、先生は、嫌い?」
「世の中に起こるたくさんの悲劇が、物事を〝好き〟と〝嫌い〟に二分することから起こっている」
「なんだそれ……」

  ◇

「たしかに、初めの一歩ってほんの少しの勇気が要るんですよ。でもそれを乗り越えれば、ずっと豊かな世界がそこにある。我々大人には、いや子供にだって当たり前のことを、息子に教えてやりたいだけで。それをずっと自分の殻に閉じこもって、……外にはこんなに素晴らしい世界が」
「ふむ、なるほど、なるほど」

  ◇

 父親Bによる息子Aの理解はAが恐怖心に支配されているというものであるため、Bの要求はその恐怖心を取り除くもしくは軽減するというものとなるが、Aの表情から読み取れる恐怖心というものは、初診時の平均的な初対面の人間に対する警戒心以外は読み取ることができず、むしろ要不要の合理性に基づいた行動であると推察できた。
 そのためこの理解の齟齬がAに大して抑圧的に働いておりそれが回避性を強化している可能性が考えられたが、この段階ではまだ仮説でしかないこと、またその考えをそのままBに伝えるとBの怒りを買う可能性はかなりあったため、じっくりと状況を見守る形で主にAとの対話を続けることにした。

  ◇

「でそのすかしっ屁を混ぜ込むのはできたの」
「屁ではないができたので後は待つだけだ」
 下等な会話はともかくも、本当に待つだけだった。待つということは流れてくるSNS投稿をただ眺めるという、要はコウジの日常だった。
 ちょうど世間は選挙が真っ盛りで、意識高い人々が政治的で扇動的な発言を行い、政治家も一般人もアイドルも文化人もインフルーエンサーもパフォーマーも動画配信者もいつもより余計に燃えていた。激しくやり合うアカウントもあれば、一方的に意見という名の罵声を投げつけて無視し続けられるアカウントもあった。そのようなアカウントがあればこそ、甲と乙は全く違った人格になってゆく。
「片恋はね……浪漫の極致なのよ……そうやってこじれにこじれた一方的な思いがある日相手をねじふせる。その日から憎しみは愛に変わるの」

  ◇

「先生はことばの理解で使う脳と話すのに使う脳は違うと言っていたけど、頭の中で話すのも違う脳?」
「君の言う〝頭の中で話す〟というのがいまいちわからないな」
「言ったとおりの意味だけど」
「そういうふわっとした言い方だと前提が定義できないから研究もできない。なのでわからない」
「先生は先生って呼ばれる人なのにわからないってしょっちゅう言うんだね」
「わからない、と絶対に言わない人がいたらその人は詐欺師だ」
「じゃあ学校の先生は詐欺師かな」
「君の〝頭の中で話す〟っていうのがどんな様子なのか、もう少し詳しく知りたいんだよね」

  ◇

 Aは中学校に進学したが交友ゼロの状況は変化せず。担任教師Dは父親Bに類似する熱血教師であり、自身が顧問を務めるサッカー部へ勧誘するが断られ、それを拒絶心と解釈したとみられ一層抑圧的となる。Aが筆者との過去の会話を引用して『やっぱり学校の先生は詐欺師だった』という発言があり、詳細については語らないため経緯は不明であるが敵愾心が生じていることは記録すべき事象である。
 父親Bは部長に昇進したためか、社交性への執着度が増す。

  ◇

 コウジの父はコウジに詰め寄り、何かの怒号が聞こえて、頬を一度打つことはあったが、それ以外は机を大きな音を立てて叩いたり壁を拳で殴ったりした。コウジは体罰はいけませんよという世論にある程度乗ろうとしているんだなと思い、そうやって他人に影響されていくことが人は独りでは生きられないということなのかなと思ったりした。あるいは、なるべく破壊が少なく大きな音が出るような机の叩き方を会得しようとしていたりしているのかなと思ったりもした。そういうどうでもいいことに考えを巡らしているうちにいつか終わる儀式が終わると、コウジは自分の部屋に閉じこもってネットに流れる罵倒を眺めることにしていて、世の罵倒はよどみなく知らない人から知らない人に流れて、それはコウジの父親に比べるとひどく安全なことだった。コウジの父親みたいな本当は安全ではないものも、安全なところにいる奴らと同じ位置にあるとみなす訓練をするためにネットを眺めているのかもしれないなどと自己分析して、安全を眺めているうちに眠りに落ち、そうやって日々は過ぎてゆく。

  ◇

「〝好き〟の反対語は何だか知ってるか?」
 コウジは担任教師が求める回答がわかっていたのでわざと辞書通りに答えることにした。
「〝嫌い〟です」
「違う。〝無関心〟だ」
 あまりにも予想通りだったが笑うと怒られそうだったので鼻息がフッと出そうだったのをコウジはこらえた。このよくできた都市伝説はしかし、〝嫌い〟の感情の存在を全く無視している、などとはもちろん口に出さなかった。
「お前は全てに〝無関心〟に思える。そんな人生送っていても楽しくないよ。先生は、もうちょっとお前は周りに目を向けるべきだと思う。先生にはわかるんだ。お前は心の奥底では友達を欲しがっている」
 放課後居残らせて一対一で西日の差し込む教室で話している。窓の外からは自主練に切り替えたサッカー部の歓声が聴こえる。わざとサッカー部の活動日を選んで窓を少し開けていた可能性すらコウジは考えた。
「サッカーってチームプレイでさ。先生も最初ボール蹴るだけだと思ったんだけど、誰がどこにいて何をしようとしているか、仲間を見て、そして協力して点に繋げていく。一点はシュートした人の一点じゃなくて、みんなで作り上げた一点なんだ。サッカーだけじゃないけどさ、人はひとりでは生きられないんだなって思うよ」
 時に手を突き出し、グーの手を作り熱弁する担任教師は、真正面を向きながらも、コウジを見ておらず、コウジの後ろの何かを見ていた。こうあってほしいという、理想のコウジを見ていた。

  ◇

 スキスキダイスキスキキライスキスキシネヤコラスキアイシテルヨエッチシヨブッコロアーソウイウノハイケナイトオモイマスオマエナンカブロックシテヤルコンナアカウントガイルノデチュウイカンキデスヤッパリスゴイデスネイッショウツイテイキマスコノヒトノヤサシサガワカラナインデスカネダレモガアンシンシテワライアッテイキルネットッテソウイウバショデアルベキカトギロンニハネットハムイテナイヨンナコトヨリコイツドウニカセイヤオモイヤリデスヨみんなー!大好きだよ☆

  ◇

「ここから見るとみんな他人が大好きなんだなって思う。もしくは大嫌いなんだと思う」
「どっちなのよ」
「もしかしたら好きと嫌いは区別できないんじゃないか。粒子と波動に明確な区別がないみたいに、同一の事象から発生するのが好きと嫌いなのではないか」
「そうね……憎しみが愛に変わるのと全く同じくらいに、愛が憎しみに変わることもある」
「昔好きの反対が無関心だとどこかで聞いたような話をした奴がいたんだが、もし好きと嫌いが同一のものであれば、嫌いという感情の寄る辺のなさはなくなるかもしれないな」
「ですかしっ屁の伝達はどうなったの」
「そろそろいい頃合いかもしれない」

  ◇

 Aは『頭の中で話す』という言葉を以前より時折使用しており、その詳細は本人にとっても当初曖昧で説明が出来なかったようだが、年月を経るに従ってその内容が筆者にも伝えられるようになってきた。それは想像上の何らかの対象に対して語りかけるものであって、当初は犬であったり猫であったり、無機物としては天井であったりキーホルダーであったり、映画などの影響を受けて宇宙人であったりモノリスであったりしたものの、次第にその対象が同年代のひとりの人物として固定されるようになってきた。
 それが異性であることから、Aの年齢的にも思春期であり、性欲発現との関係を当初仮定したものの、その女子はAが魅力を感じる存在として設定されておらず、その仮説は棄却した。しだいに、Aはその相手に語りかけるだけでなく、返答を得るようになり、相手はあたかも一個の人格を持っているかのようなふるまいとなってきたため、その人格の外界への表出はないものの、一種の解離性同一性障害と考えられた。その人格はユキコと名付けられていた。

  ◇

「母さんが! どんな思いで毎日食事を作ってると思ってるんだ! 食卓に出て来もしないで、ドアの外に置かせて! お前が生まれたとき、母さんはな、泣いて喜んで、どんな子に育つんだろうって、それをお前は!」
『何か騒がしいようだけど、誰なの』
『俺の父親なんだけどまあ待っていればじきに収まる』
『なんで騒いでるの』
「なんぼお前が高校通っていい成績取ろうが、いざ社会に出たらお前なんてつまはじきだ!」
『頭が悪いから。お前と同じだね』
『ひどい! 誹謗中傷!』
『ほらそうやって騒ぐ』
『お父さんはキミを心配してくれてるのでしょう?』
『自分が言いたいことなのに母親を担ぎ出してダシに使っているね』
『お母さんも心配しているのでは?』
『そういう父親に盲従してる点で同レベルだし。それが作った食事とかね。しかし人間は光合成はできないので食わないわけにはいかない』
『キミは二人の愛の結晶なのに……』
『結局は子供はファックの産物でしかない。欲望がもたらした結果でしかない』
『それでもめくるめく情熱的な夜の結果! キミは生まれたのだ!』
『なんと猥褻な……』

  ◇

 性欲はA自身ではなくて、副人格であるユキコ側に発生した。そして、当初(中学~高校の期間)はもっぱら、両親の性行為を象徴する形でユキコの性欲は設定されたものと思われる。そしてユキコは、Aが軽侮しやすい、頭が悪いキャラクターとして設定され、父親B、およびそれに付随する母親Cをひとまとめに変形し矮小化した存在であり、A自身を発生せしめたそもそもの性行為を否定することで、産んでくれと誰が頼んだ、という論法にて両親を否定する意図があったと考えると説明がつきやすい。
 また、副人格の存在は、脳内会話に没頭している間、外からの刺激を無視するための防衛機制としても働いていると考えられる。

  ◇

「乙意識スナップショット全体をスキャンして、復元できる部位があるかどうかを計算する。復元処理がある程度重いうえ、それをニューラルネットワーク全体に対して場所を少しずつ変えて照合していくので、時間がかかる。時間はまたひと晩みておけばいい」
「ひと晩あって、何も起きないはずはなく……」
「元キーワードと一致するかしないか、だ。それ以外のことは起きない」
「一致くんと不一致くんを擬人化できないかしら」
「概念にまで進出しないでくれ頼むから」

  ◇

 成績優秀な点は変わらず、大学入試も特に苦もなくクリア。一切交友を持たない状況も変化はない。高校卒業から大学入学付近にかけてユキコの性欲に変化が見られ、現実世界でもフィクションとして主に女性に人気を博しているいわゆるボーイズラブ(以下BL)に傾倒するようになる。主人格Aには、この年齢となってもなお性欲の現出はなく自己抑圧が働いていると見られる。このBLの表現については、肉感的な表現が避けられ、無機物への比喩など、生々しい表現から遠ざかる傾向が見られる。このことから、Aが生来的に同性愛傾向を有しておりそれが代理的に表出したとは考えられない。Aは相変わらずユキコを軽侮し続けていることからも、むしろ軽侮感情を強化し固定する目的をもって、ユキコはAが好まない対象を愛好する性質を抱かされたものと思われる。

  ◇

「長いこと先生のところに通わせ続けてきましたが、結局貴方は息子を治療することなどできませんでしたね。ひどくなる一方です」
「ご両親のご意向に沿えなかった点は残念でございますが、治療といいますか、……結局は本人が……どういう生き方を望むか、なので」
「あんな生き方を望んでいたら息子は破滅です。お医者様なので、先生は裕福な家庭にお育ちなのでしょうが……先生にはおわかりにならないかもしれませんが、世の中というのは、厳しいのです。もう来ません。来させません。今までお世話になりました」

  ◇

「一致した単語がひとつあった」
「ということは」
「実験は成功で、甲と乙は会話をしているということになる」
「素晴らしいわ! 攻くんと受くんは愛を語らっていたのね! ちなみにその単語っていうのは?」
「〝バームクーヘンエンド〟。なんだこりゃ?」
「なんて……浪漫溢れる……バームクーヘンエンドというのはね、相手を愛しながら、深く深く愛しながらも、結局相手は女と結婚してしまって、その結婚式にお呼ばれして引き出物を受け取り、自宅でひとり寂しく引き出物のバームクーヘンを食べるラストのことを言うのよ……まさに片恋の極致……SNS意識において攻くんと受くんの二人を生じせしめた、まさにその片恋を表す単語によって、攻くんと受くんの愛が証明されるなんて……涙が止まらない……」
「愛じゃなくて会話だし攻受じゃなくて甲乙だが、くだらない……心底くだらない……」
「攻くんと受くんは、他の誰にも邪魔されない、二人きりの世界で、延々と愛し合い続けているのよ……なんて素晴らしい……」

  ◇

 両親の意向により来院は途絶えたものの、Aはある程度筆者には心を許してくれたようで、時々電子メールを送ってくる。それによれば、SNSを自主的に研究して大きな発見をしたとのこと。学術誌に投稿するには大学の何らかの研究室に所属して大学および教授の力を借りなければ独力では困難であることを助言したが、特にその気は無いようである。研究の内容に関する記載はないため詳細については不明。その電子メールには他に近況に関する情報はない。そのため現在も、一切の友人を持たず、副人格ユキコと二人きりの世界で、延々と会話し続けている状況にあるのかも不明。ただ抑制的なAの人格にしては、メールは少々はしゃいだ文面にも見受けられる。

文字数:14347

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