職業MMORPG

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梗 概

職業MMORPG

 前崎昂太は『ファース』というMMORPGにはまっている。留年する程入れ込んではいないが、いくつかの授業で評価が下がることは避けられないだろう。だけれども、と昂太は言い訳する。学生の本分である学業をおろそかにしているうしろめたさを感じながら。

 実際、『ファース』には他のMMORPGにはない独自のシステムがある。それは●に関係するあらゆる金銭のやりとりを仮想通貨ジーネ(GeNE)で行う事。●をプレイするための月額料金やアイテム課金だけではない。『ファース』内でも通貨がジーネになっているのだ。モンスターから手に入れた素材や、炭鉱で掘り出した鉱石などを売ればその場でジーネを受け取れる。ゲーム内の行動で仮想通貨を手に入れることができるのだ。ジーネは世界で最も普及している仮想通貨だ。仮想通貨を取り扱う取引所なら、必ずジーネの名は掲げられている。
 そんな独自のシステムを利用し、ある事を実現させたプレイヤーが現れた。それは●で稼いだジーネで生活を成り立たせる事。「職業:ファース」と言い表せられるようなプレイヤーが登場したのだ。
 昂太はネットニュースでこれを知り、衝動的にその日のうちに●へ会員登録しプレイしていた。ゲームで遊んで稼いだお金で生活できるなんて、夢みたいな話だ。ゲームの世界に行けたら・・・・・・なんて夢想をしたこともあったが、もうこれは疑似的にゲームの世界で暮らしていると言えるのではないか?昂太は『ファース』に夢を見てプレイを始めた。だが、お金を稼ぐのは容易ではない。大金を得ようとするならば、まずその準備に多額のお金がかかるのだ。お金になる貴重な素材が手に入るモンスターはそうでないモンスターと比べ非常に強い。倒すためには良い武器、防具等が必要だ。当然高い。錬金術などの生産で稼ぎたければ自前の工房を建てなければならない。誰でもつかえるフリーの工房は存在するが、そこで製造出来るアイテムはランクの上限があるからだ。お金を稼ぐにはこういった投資が必要不可欠である。
 「職業:ファース」の人々は元々社会人として働いて収入を得ており、そのお金を『ファース』につぎ込んでいた。彼らは重課金プレイヤーでもあったのである。大学生の昂太には到底まね出来ない。昂太もそのことは重々承知していたが、あきらめてはいない。学生の己には大人と違って時間がたっぷりとある。地道な努力を積み上げ、将来「職業:ファース」になるのだ。

 レポートを最低字数で仕上げた昂太は、今日も『ファース』に没頭する。

文字数:1044

内容に関するアピール

 仮想通貨という単語は知っていても、その実態は全く知らなかったのでこれを機会に少し勉強してみました。思っていたよりも様々な場面で使えることに驚きました。

 なんだか仮想通貨だけでも生活が成り立ちそうな気がしてきました。それで、仮想通貨をゲームで稼げたらどうかと。ゲームの世界に行ってみたいというのは私の願望でもあったので。

文字数:160

課題提出者一覧