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「AIあるいは仮想通貨を題材に短編を書け」

  • 東浩紀
  • 小浜徹也
  • 大森望
  • 課題提示、梗概審査:東浩紀
  • 梗概審査:小浜徹也(東京創元社)
  • 実作審査:藤井太洋
  • 実作審査:河北壮平(講談社)
  • 梗概審査、実作審査:大森望

梗概提出締切| 2018年6月14日(木)

梗概講評会| 2018年6月21日(木)

実作提出締切| 2018年7月12日(木)

実作講評会| 2018年7月19日(木)

この講座も3年目。ぼくが課題を出すのも3回目。ぼくの授業は毎回講座の初めに置かれています。

1年目は、ジャンルSFの核である「センス・オブ・ワンダー」を磨いてほしいということで、「変な世界を設定せよ」という課題を出しました。2年目は逆に、日常の延長にSFを持ち込む手腕を見たいということで、「五反田をSFにせよ」という課題を出しました。いずれも、これからの厳しい1年(創作講座のスケジュールはまじめに取り組むとかなりハードです)に向かいあうにあたり、まずはSFとはなにか、SFでなにができるかを真剣に考えてほしいという希望を込めて設定した課題です。

今回の課題もまた、同じ希望を込めて考えました。SFはそもそもサイエンス・フィクションの略。つまり科学小説です。SFの歩みは科学の進歩と切ってもきれない関係があり、名作のなかには、それぞれの時代の最先端の科学的知見や技術的可能性を大胆に取り入れたものが少なくありません。アイザック・アシモフは科学ライターとしても有名なひとでした。

というわけで、みなさんにもぜひ、最先端の科学を取り入れた作品を書いてみてほしいと考えました。そして2018年の日本で最先端といえば、それはもう、AIとか仮想通貨とかシンギュラリティとか、そういうのに決まっている。だからそれで書いてもらいたい次第です。

いやいや、むろん、ぼくだってわかってます。きっとみなさんのなかには、ぼくなんかより科学知識の豊富なかたがいて、そんな手垢のついたネタよりもっと知的でわくわくする話題があるよ、そっちこそ本当の最先端だよ、人類を変えるんだよと言いたいひとが多いにちがいありません。そりゃそうに決まっている。科学の世界は広大ですからね。けれども、ほら、みなさんは「プロ」を目指すわけです。プロとはなにか。それはアマチュアを相手にする人々です。プロの作家とは、同僚の研究者向けに小説を書くのではなく(そういうひともいるのですが)、一般読者に向けて、「彼らが想像する最先端」を書かなきゃいけない職業です。そもそもプロになったら、週刊誌や新聞にも書かなければいけない。担当記者や編集者は、準惑星と小惑星の区別もついていないし、ウィルスと細菌の区別もついていないかもしれません。現実はそんなもんです。そしてそんななか、SF作家というだけで、AIや仮想通貨にも詳しいとカンチガイされ、コメントを求められる時代が来るわけです(来ないかもしれないけど)。そのときの準備をいまからしておこう、ということですね!

というわけで、2018年ならではの、AIあるいは仮想通貨ネタの楽しい短編を期待しています!
(東浩紀)

課題提出者一覧