梗 概
彼女は二度
「渡辺盛昭様、今回は次世代型セックスロボット『transposition』に申し込みいただき、誠にありがとうございます。『transposition』では、渡辺様と対象者の最初の出会いを設定できます。かつ対象者のメタデータをあらかじめ搭載した最先端AIを搭載しております。それは、渡辺様より頂いた生前の全身写真(見た目再現用)と冷蔵された死体の脳(中身再現用)を元にしておりますので、完全に近い対象者との様々なコミュニケーションが可能です。さらに、対象者は出会い以降の渡辺様とのコミュニケーションにより、自発的に学習していくため、より一層密な関係性も構築することができます。
今回は、ご依頼頂いた対象者データを無事搭載できたことをお知らせする書類を送付させて頂いた次第です。(※詳しい搭載情報やチュートリアル動画は添付のSDカードに入っておりますのでご確認ください。)
【対象者】
川北 早稀 (女性・二十八才・死亡)
対象者の肌や毛は移植によるものですので、一ヶ月に一度のメンテナンスが必要になります。日時が決まり次第、こちらから引き取りに伺います。メンテナンスは一日程度で終了しますので、翌朝にまたお返しに参ります。
あと三週間後、ご指定の日時に渡辺様の元へ送り届けることができますので、今しばらくお待ちください。それでは渡辺様と対象者との素晴らしい人生を開発者一同心より願っております。」
渡辺盛昭(二十八才)はてんかんの障害を持っており、つい最近ようやく職場に復帰できたばかりである。そんな中、彼にマッチングアプリで運命の出会いが訪れる。川北早稀(二十七才)は自分の双極性障害を隠しながら製薬会社のM Rとして働いており、二人は意気投合して付き合い始めるが、川北早稀は仕事と自分の障害に耐えきれずに自殺する。しかし渡辺は諦めず、自分の貯金を全部使い果たして『transposition』サービスに申し込み、川北早稀のセックスロボットを発注。無事にロボットが届き、一緒にデートに行ったりして満足するのだが、セックスロボット自体が、自分が川北早稀の下位互換ロボットでしかないことを知ってしまう。そこで喧嘩になるのだが、渡辺にてんかんの発作が出て、鬱状態になってしまう。渡辺はロボットとうまくやっていけないと家で自殺するのだが、ロボットは渡辺が残していった彼の携帯電話がロボットの自分の横顔であったことをきっかけに、自分もセックスロボットとして金を稼ぎ、渡辺の『transposition』ロボットを作って再び二人でやり直そうと決めたのだった。
文字数:1070
内容に関するアピール
これはすでに短いものが「The Shanghai Literary Review誌」に英訳作品として掲載され発売されているのですが(掲載名:『Her Agein』)、この作品をさらに膨らませて実作に挑みます。
文字数:100