世界の果ての輪廻

印刷

梗 概

世界の果ての輪廻

国で最も優れた術士の称号を得たものは、世界の果ての塔へと昇り、新たな魔法を授かるのが役目となっている。稀代の術士として名を馳せたウロは齢二十にして、称号を獲得し塔へと昇る。次元の地平線上にある塔は、白磁の輝きを放ち、徒歩では勿論のこと、船舶や航空機をもってしても届かない。一定周期の適切な日時場所にて、術士として地平線を越えることの出来る者だけがたどり着ける。
 
塔への大接近の日、ウロは地平線を越えて、塔へとたどり着いた。
舗装された地面に、白い円柱の構造物が、何層にもわたって積み重ねられている。先ほどまでは蜃気楼のようにぼんやりとしていた輪郭が今でははっきりとみることができた。それは、どこにでもありそうな建築物にみえた。むしろ、塔以外の空間にこそ違和感を覚えた。白い壁が、塔の四方を覆っている。ウロがそれに触れようとしたとき、背後から待ったと若い男の声がかけられる。男はリンネと名乗り、もうずっとこの塔で暮らしていることをウロに告げた。
 
ウロは塔の調査をしながら、リンネとともに生活をはじめた。
リンネはこの空間にはほとんど時間方向の影響がないこと。四方の壁は一見白い壁に見えるが、微小に波打っていて、触れたものを世界の外に弾き飛ばしてしまうこと。ときどき、ウロのような客人がやってくることを教えてくれた。
 
塔には四方の空間から零れてきた様々なものが、リンネの手によって保管されいる。
客人のほとんどはその中で目当てのものを見つけると、もとの世界に帰るという。その際に、ここでの時間は一気に圧縮されるため、記憶もつぶれてなくなってしまう。リンネは”遍在”という魔法を使うことで、時間方向に圧縮されずにすんでいる。
 
ウロはリンネから”遍在”の魔法を教えてもらうが、その際に一つ、この魔法には条件があることを伝えられる。それは、”遍在”の力をそのまま行使すると、世界中に自分が散り散りになってしまい、自分を保つことができなるなるという問題だった。リンネは、この塔を自らの楔とすることで、自分の存在を保つことができていた。
 
ウロは、リンネの存在を楔に、”遍在”の魔法を唱えることとした。
詠唱の刹那、ウロの魂は粉々に砕け散り、リンネがこれまでに影響を及ぼした世界の光景を知る。リンネを神の一柱として崇める世界、リンネの力を行使したがために滅びを迎えた世界、リンネのように誰もが時間に縛られなくなった世界。
 
最後に、今まさに”遍在”の魔法を手にしたリンネの前に現れた。
魔法を唱えようとするリンネをウロは制止する。ウロは見てきた景色をリンネに伝えるが、それを聞いたリンネは嬉しそうに微笑む。リンネは他者との接続を求めて、”遍在”の魔法を作り出したのだと告げた。ウロはそれを聞いて、ならば一つ提案を聞いてくれないかとリンネに語る。
 
世界の中心にはどこまでも聳える白磁の塔がそびえる。
その塔には2人の術士が暮らしているということを誰もが知っている。

文字数:1216

内容に関するアピール

実作に当たっては、物語の冒頭を、遍在の魔法を使ったウロの描写からはじめて、間に塔へと上り、魔法を習得するまでの流れを挿入し、リンネに再開するところでつなげていく構成にしたいと考えている。

神話回で候補に残れたので、その方向性で最終梗概案を作成した。

 

文字数:123

課題提出者一覧