①あなたのためのステンドグラス ②ガリンペイロ・ウォーターラッシュ

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梗 概

①あなたのためのステンドグラス ②ガリンペイロ・ウォーターラッシュ

①あなたのためのステンドグラス

2021年4月現在、然るべき人間が水晶を覗けば、水晶を通して時空を歪めて過去や未来を見ることが出来るように、然るべき人間はガラスに時空を抽象化し固定出来ることが知られている。

吉祥寺の中道通りをしばらく進んだ左手に、蔦で覆われたアパートがある。その一階にあるのがステンドグラス屋「Emotional」である。そこには、ステンドグラスに思い出を感情化し作品にしてくれる名工、タンビリ・ファドールとその助手真殿がいる。自称魔女であるタンビリの目的は、永遠に遺り愛される作品を生み出すことである。
 そこに、実業家の龍崎健が訪れ、タンビリに「まだこの世に存在しない世界最高のステンドグラス」を依頼する。タンビリはステンドグラスの作製準備に入る。
 タンビリは真殿に過去現在未来において史上最も喜怒哀楽に溢れた瞬間を見てくるよう指示する。真殿は水晶で過去現在未来を覗き、それを投影した。
《喜》ベルリンの壁崩壊
《怒》フランス革命
《哀》第二次世界大戦
《楽》東京オリンピック2020
 三人ともが《楽》に東京オリンピック2020が出てきたことを驚く。超近未来の東京オリンピック。それはコロナウイルスによって史上最も望まれていないオリンピックになると誰もが信じて疑わない世界的イベントであった。
 ありもしない未来が見えたのか、それとも……。タンビリが《喜》《怒》《哀》のステンドグラスを作製するとともに、三人で東京オリンピック成功のために動き始めた。
 作戦は一つだけ。感情を増幅させるステンドグラスを作り多くの人の目に映して、そのステンドグラスたちが全て東京に繋がることを種明かしする。全世界の人の感情に《楽》を訴えかけるのだ。
 感情には上下と段階がある。喜怒哀楽で言えば、最後に《楽》というプラスの感情を発散させるには、マイナスの感情を溜め込ませて段々とプラスの感情へと引っ張っていけば良い。
 タンビリは七つのステンドグラスを作製し、真殿がステンドグラスの超近未来を確認したのち、龍崎がそれらを拡散した。
 まずはマイナスの感情である《哀》。
『名のない少女が未知の生物に襲われ、雨に打たれ死にゆく絵』
『産業廃棄物となり海底に捨てられたロボットが人を求めて海底を登り始める絵』
 次に衝動を得るための《怒》。
『ゴーレムが死にゆく主人を助けられず、天に歯向かう絵』
『兄妹が凄惨な実験を繰り返した故郷を焼き払う絵』
 そしてプラスの感情へ誘導するための《喜》。
『男が巨大な黒い物体を削り、思い出を取り戻していく絵』
『人類と未知の影が互いに敬意を表したファーストコンタクトを遂げる絵』
 この6枚のステンドグラスが現れ、発信された場所同士を直線で結び、その中心にあるのが新国立競技場だ。その新国立競技場前に最後の一枚、《楽》のステンドグラスを掲げ、全世界に発信した。
『雲ひつじに降り立った冒険家が原住民に歓迎され未知の文化に触れる絵』
 こうして、世界は《楽》に包まれた。
 タンビリは、龍崎に依頼されたステンドグラスを完成させ龍崎に渡すと、龍崎はそれを東京オリンピック閉会式で全世界に発信した。
(1253字)

 

②ガリンペイロ・ウォーターラッシュ

地球から二万光年離れた水の惑星、オディム。そこには、未知のレアメタル(一攫千金)を求めて出稼ぎたちが暮らし、土を掘っていた。札付きばかりの彼らはオディム・ガリンペイロと呼ばれていた。そこでは「誰のものも盗んではならない」、これが唯一にして至上のルールだ。
 カティラは16歳にして地球から追い出されオディムへとやってきたルーキーだ。粗暴で慈悲のないオディムでのルールに戸惑いながらも彼は一攫千金を狙って未開拓地区で土を掘り始める。すると、出てきたのは水だった。周囲は嘲笑する。地球もオディムも水の星、そんなものには大した価値がないのだと。
 しかし、カティラは掘り当てた水に微弱の粘性があることに気付き検証を行うと、その水はエネルギー伝導率が高く、加工がしやすい。更に加工後の剛性が高く、一方で飲料としても栄養バランスが整っており、治療薬にもなりえる。水同士をぶつけ合えばエネルギーを生み出し、それは簡単に電気に変換できる。そしてそれらは、その水の中に自分が望む素材の構造を模した電線を入れて電気を通せばその通りになるのだ。
 万能物質。その事実にオディム中が興奮した。これで大金持ちになれる、地球に戻って大腕振って暮らせる。
 しかしカティラは彼らを制止して旗を振る。「お前らは地球から弾き出された爪弾き者たちだろう! ならば地球なんてところとは決別して、今こそここに僕たちの星を作るべきだ!」
 多くの物がカティラの言葉に同意し、自分たちの星を作りはじめた。組織はぐちゃぐちゃで統制は一切取れていない。それでも彼らは一途に自分たちの場所を作り上げた。そうして難攻不落の星「誰にも盗まれない星オディム」が完成した。
(696字)

文字数:2025

内容に関するアピール

二つ考えました。

①現在を舞台にしたSFを書いてみたい・過去作をどうにか使えないかという感じで作りました。楽しいエンタメが書けたらと思っています。

②科学が全然分からないので適当な説明にしていますが、出来るだけ調べてそれっぽく整えたいと思っています。独自文化を作り上げたはぐれ者たちの反逆賛歌というイメージです。

もしモノにならなそうなら今回提出した実作「持続可能なトビ方」をリライトします。率直な印象や感想をどうぞよろしくお願いいたします。

文字数:218

課題提出者一覧