梗 概
世界の容量
「世界はもうすぐ終わる。」
高校生のサトコは、下校途中に神と名乗る男にそう言われ
無視すると、神とサトコの意識以外、全てが停止し、世界は灰色になった。神はサトコがやることを伝え、その場を去る。すると世界は動きだした。
暗い部屋の中でパソコンを操作しながら、エナジードリンクを飲むナオト
サトコが家に帰るとノートが机に置いてあり、電源を入れるとWARNINGと表示され、空き容量10/256RB(1RB=10³³バイト)世界の容量は既に限界の状況なので、情報量の多い人間をデリートする作業を行うようにと書いてあった。デリートとは存在の消滅であり、過去未来の情報が消えること。デリート作業には報酬もある。
一カ月後、神からサトコに連絡がきた。サトコは倫理的なことは考えず、事務作業のようにアプリに書かれている凶悪さの高い順からデリートしていったことと、もう一人デリート作業を行っている存在について話す、神はナオトの存在を明かす
殺人で10年の懲役を終え、出所する男。刑務官が泣きながら男を見送っていると男の体が0と1の数字になり、消滅してしまう。刑務官は自分がなぜ泣いているのか不思議に思いながら、業務に戻る。
ナオトがデリートする人間の数を見ていると、ある一定のパターンになっている事に気づき、友達に解読を頼み、ナオトが「神があなたを殺す」というメッセージを送っていることに気づく
「民主主義の母」と呼ばれる政治家がいた。彼女は軍との闘争が忙しく民族問題に対しては無関心。そんなマスコミの勝手な報道が流れる中、彼女が軍に拘束される。彼女は悲痛な思いで家で暮らしていると消滅する。民衆は軍を批判するデモを行っていたが目的を見失い、解散する。
サトコはナオトとメールで会話を行うことになる。ナオトは最終的に情報の容量が大きくなった自分達を神は殺すつもりでいるという話をする。回避方法を聞くサトコ。容量が増減しないように人間をデリートしていくしかないという話になる。
しかし、サトコは既に1年デリート作業を行っていたので、心身共に疲れていた。容量を大きく減らす方法が無いかと聞くと、イベント機能を使って、ウイルスなどを蔓延させ一気に減らす方法があると言われる。
ネットを介し、デリートウイルスがあらゆる動植物に感染し、ウイルスはあっという間に世界に蔓延し、1年で30億人の人間がデリートされる。
ナオトがPCを閉じると、神がナオトの前に現れる。サトコを操り、大きな容量をデリートさせることに成功したナオトの望みを聞く
「自分のデリート」
今までデリートした人間はもう一つの世界に移動されるのか確認すると、神は頷き、とても人間が住める世界だとは思えないがと付け足す
ナオトはデリート作業を行った自身の責任の取り方と新たな世界に対する僅かな希望を神に話し、今の世界から消え新たな世界に向かう。
文字数:1197
内容に関するアピール
世界には容量があり、容量を超えると世界が崩壊してしまうので、容量を減らすことによって世界の崩壊を防ごうという話です。この世界の中で最も情報量が多いのは、ストーリーを生み出す人間であり、その人間をデリートしていく中で、常識的に考えると悪である存在も、「容量」と言う視点から考えると、世界にとって都合の善い存在であり、逆に人を多く救う存在はこの世界にとって「容量」が増えてしまう原因になる悪い存在です。最終的にデリートした人間は別世界で存在する形となっているのですが、これは一種の問題のすり替えであり、いい結果とは言えません。ですが、ナオトは人の「知」がどんな苦難も乗り越えるという淡い希望と現在の世界への絶望から、自分のデリートを神に希望します。
文字数:322