梗 概
はじめましてSci-Fiさん、エイリアンより
高校生のヒュウゴは大のSF好きの、SF研究会の男の子。ある日、転校生としてやってきた恵理好(エリス)という女の子に、超能力で殺されそうになる。エリスは別の惑星からやってきており、地球の文化を学びに来た宇宙人(スパイ)だというのだ。ヒュウゴが休み時間中に、やたらと惑星やら国家やらについて話しており(もちろんSFの話)、同じ宇宙人のスパイだと疑われたらしい。
ヒュウゴはエリスをSF研究会に案内する。何冊かの本を読んだ彼女は愕然とした。地球滅亡ものや時代改変もの、海底ものや宇宙ものが登場するのが信じられないというのだ。これらの書物は「SF」と呼ばれるものらしいが、エリスの惑星ではSFは禁書とされていた。厳密には、エリスの惑星の文明は地球より進んでいたものの、惑星間戦争が長く続き、文化は大きく後退していた。SFの存在は一部の特権階級には認知されていても、「国民に非科学的な幻想を抱かせる禁書」とされていた。
「こんな空想に惑わされてはいけない! 連合国側の煽動だ、ニセ科学だ!
こんな書物があってなぜ地球は滅亡しないのだ……!?」
クラーク、アシモフ、ハインライン、ディック、イーガン……つぎつぎとSFの名作を読んでいくエリス。(とくにスペースオペラ、歴史改変、ディストピアものに執心)。読むたびに母国を思いだし、発狂したり泣いたり超能力で本を燃やそうとするものの、ヒュウゴや部員たちに止められる。SF研究会の他の部員、ヒュウゴのことが好きで彼女に嫉妬するマナ(恋愛SF、タイムトラベルSF好き)、彼女のことが生物学的に気になるリク(バイオSF好き)とともに、エリスは徐々にSFを認めはじめる。
そんななか、SF研究会の部活指導として、教育実習生の男がやってくる。それはエリスと同じ惑星から来た、彼女を見張る上官スパイだった。エリスはそれに気づき、SF部員たちに真相を語る。今回の彼女の任務は、母星で長く続く戦争を有利にするため、地球への侵攻も視野に入れた偵察だった。地球が侵攻しやすい惑星と判明すれば、母星に報告されてしまい、地球侵攻が始まる。エリスはSF部員たちにひと芝居うつように頼む。つまり地球は侵攻に対する備えがあり、文明としても成熟した惑星であるように見せるのだ。部員たちはSFの知識を総動員して、エリスを普通の女子高生として扱い、エイリアンであると気づいてないふりをしながらも、スパイに向かって芝居をうつ。
スパイはだまされたかそうでないのか、エリスに帰還命令を出して惑星に戻り、続いてエリスも惑星に帰ろうとする。地球侵攻が始まるかどうかはまだわからない。エリスはSFの存在を母国に持ち帰ろうとするが、おそらく自分は軍法会議にかけられ、処罰されるだろうと推測する。どちらにしても、自分はSFを知って後悔はないと言うエリス。彼女が母星に戻って数年、地球はまだ侵攻されていない。
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内容に関するアピール
過去の講座のテーマ、『まだSFを読んだことのない読者のためのSF』で提出したものです。
恥ずかしながら、自分はこの講座に入って初めてSFを意識したので、「子どものころ、こういう小説があれば早く好きになれたかも」というのが書きたかったです。(ゲンロンに載せるべきかはわかりませんが)。また「SFがなかったら、こういうアブない世界になっちゃうんじゃないか」というのも。
また自分の中で、SFってわかりにくいでしょ、みたいな気持ちもないことはないので、「SFってこんなにおかしい」を間接的に言わせたいのかもしれません。講座で苦しみすぎたかもしれません。
中編でSFすべてを網羅はできないと思うので、章ごとにジャンルの話ができればいいなと思います。
以前の講評では、「すでに涼宮ハルヒがあるのでこういうのは……」と言われたので、がんばって差異を出したいです。もうハルヒも古く感じるようになってきましたが。
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