蘇る悪夢

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梗 概

蘇る悪夢

 冴島アキオは毎夜悪夢にうなされる。しかし、朝起きるとどんな悪夢だったか思い出せない。
寝起きの頭にボンヤリと残っているのは、夢の中のアキオは五歳くらいの子供で山道を一人歩いている場面だった。そして五歳のアキオは山道ですごく怖いものと遭遇する。
 そこでアキオは目が覚める。怖いものが一体どんなものなのか、夢から覚めたアキオの記憶からは欠落していた。ただ強い恐怖心だけが心に残っている。
 
 アキオがその悪夢を見るようになったのは一ヶ月前の会社の飲み会があった夜からだった。その飲み会の席で、アキオは自分が子供のころ山道で迷子になった話をした。今まで忘れていたのに、あの飲み会のときふと思い出したのだ。子供のころの迷子になった記憶が悪夢になっていることは間違いないようだった。悪夢が続いて寝不足となり仕事にも支障をきたすようになったので、アキオの上司は見かねて心療内科を紹介した。
 
 その心療内科は、患者の深層心理をデータ化して映像化して、心の悩みの原因を特定して排除する、という最新の技術を駆使して治療している。アキオの治療を担当したサイコセラピストの河埜サナエは、アキオの深層心理をデータ化して悪夢の原因となっているものを映像化した。その映像は解像度が悪いながらも黒っぽい服を着ている男だということがわかる。サナエはその映像をアキオに見せて治療を始めた。アキオは映像の黒い男を見て、子供のころ迷子になったときの詳細を思い出す。
 
 何処だか分からない山道を五歳のアキオは一人で歩いている。
母親と手をつないで歩いていたはずなのに今は一人だ。心細くなって涙が込み上げてきたとき前方に黒い服を着た男が突然現れる。こちらに背中を向けて何かしている。アキオは立ち止まり男の背中を見つめる。
黒い男が振り返る。五歳のアキオには見上げるような大男だ。男は両手に何かを持っている。アキオの目にそれは人の形に見えて、その男はそれを食べているように見える。男の口の周りは真っ赤だった。五歳のアキオは驚きすぎて泣くことも忘れている。黒い男がアキオに近づきアキオの正面でしゃがみ込みアキオの耳元に顔を寄せて「坊や、このことは誰に言ってはいけないよ。お母さんにも言ってはいけない。約束を破ったらオジサンは必ず坊やを食べにやってくるからね」
 気がつくとアキオは母親と手をつないで山道を歩いている。
 
 サナエは、アキオの悪夢の原因になっている黒い男のデータをアキオの深層心理から削除しようとする。しかし、何故かできない。削除できないようにライトプロテクトがかかっている。サナエは見えない力に操られるようにして映像化したデータをホログラム画像にする。立体化された黒い男は、もう解像度の悪い映像ではなかった。黒い男は実体化してアキオに襲いかかり食べようとする。アキオとサナエは、アキオの深層心理内のライトプロテクトを外して黒い男を消去する。

文字数:1200

内容に関するアピール

物心ついだばかりの幼少期の記憶は、現実に起こったことなのか夢で見たことなのか、ボンヤリとしています。
そして成長していくにつれて忘れてしまう思い出もあると思います。そんなあやふやな記憶の中の怖い記憶。
忘れていた怖い記憶を、成長して大人になって、ふとしたことで思い出して、それが現実となって襲いかかってくる、
そんな恐怖度100パーセントのSFホラーにしたいと思います。

文字数:182

課題提出者一覧