受戒

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梗 概

受戒

これは物語の梗概ではなく紀行文の前段であり、たぶん紀行文全体の1/15くらいの梗概メモ。
わたしは2020年東京オリンピックが中止になると前から言っていた人を二人知っている。
これは、その一人である中国人の住む村でわたしが体験する記録になるはず。
2月26日に偶然NHKスペシャルの放送を見た。それは中国の巨大鍾乳洞を捜索するという番組だったが、「もしや」とわたしは思った。
番組は鍾乳洞の紹介が終わるところだった。画面が一度暗くなったところで、一人の仏人の専門家がさらに奥に巨大空間を見つけて興奮して叫ぶという場面でエンドタイトルになった。いったん画面が暗転してから、急に森の中で女性が「龍の巣にはどんな光りも届かない」とカメラに向かって言うと番組は終わった。この女性が10年ぶりに再開した、扬(ヤン)だった。
それから約一ヶ月でわたしはいろいろな伝をたどり、幾つもの企画書をでっち上げ、この少数民族の地へ取材に行くことになった。

わたしが扬の住む村へ行くことを決心したのは、龍の巣を探検するためではなかった。村で旧暦の12年に一度開かれる「受戒」を取材したかったからだ。この村での受戒(じゅかい)とは村人全員が参加する、役割の全取り替え儀式だ。役割とは仕事も男女も家庭も住む家も何もかも交換するのだ。
彼女がわたしの住む団地に越してきたのは中学二年の夏休みだった。同じクラスにもなり、わたしが言葉や勉強を教えることになった。彼女は三ヶ月程度で殆どクラスの誰とも普通に話すことが出来るようになった。そして誰もがヤンのことを好きになった。
成田から福州へ行き、その夜に龍岩町でわたしはヤンと再会をした。わたしたちは、十代の頃の出来事を昨日のことのように夢中に話した。
朝早くバスに乗り、小さな停留場から30キロを歩いて、わたしたちは彼女の村に着いた。
歩きながら、彼女から今回の受戒について教えられたことの中で全く想定しなかったことは、わたし自身がこの受戒を受けることになっているということだった。
紹介してくれた部屋にヤンが来た
持ち物はここで全て預けることになった。受戒後はわたしの役をする者が取材をすることになる。
受戒で入れ替わるというのは、村の全員がその人のふりをすることなのか?と訊ねるわたしにヤンは、
「やってみればわかるよ」としか説明をしてくれなかった。そして、「きみはどんなふうにわたしのことを想い出していたの?」と訊ねてきた。
受戒の儀式が始まる 全員髪は剃髪し、初めて受戒を受ける子供やわたしは、頭に香で六カ所の焼きを作った。
TVで見た仏人がわたしに近づいて中国語で言った「・・には気をつけろ。おまえは、」

彼女には2020年に東京で起きた出来事をどこまで予知していたのかわからないが、テレビを通してわたしをこの森で囲まれた村に呼び込んだことは事実だ。
2020年3月27日 中国の福建省のどこかで 今野あきひろ

 

文字数:1200

内容に関するアピール

事情があり、この梗概メモのアップは自分ではできないため、知人に依頼をしました。これをご覧になっているといれば、無事にアップはできたのかもしれませんが、如何でしょうか。またその事情が暫く続く可能性が高いため、残念ながらこの実作を書き上げることは難しいと思います。
こんな紀行文の梗概が最後の提出作になってしまいそうですが、みなさま約一年間どうもありがとうございました。また機会があればどこかで。

文字数:195

課題提出者一覧