梗 概
螺旋のどん底
《人類の分類》
・ニジューサ…DNA二重螺旋構造(右巻き)を持つ旧来の人類。
・シジューサ…DNA四重螺旋構造(右巻き)の新人類。他の人類よりも脳が3%活発に活動。癌が多発し、体が弱い。平均寿命は約50歳。
・レフター…DNA二重螺旋構造(左巻き)の新人類。不老不死。知能はニジューサと同等。
【梗概】
21世紀は人類進化の時代だった。現在ニジューサと呼ばれる人類から突然変異によってシジューサ、レフターの二つの新人類が誕生した。その知能の高さからシジューサは世界各国で政権を掌握し、シジューサ、ニジューサ、レフターと社会が階層化された。不老不死であるレフターは社会的負荷でしかなく、人権が剥奪され、殺処分が常態化した。しかしレフター人権回復運動の機運が次第に高まり、いち早くアメリカが三人類の平等を実現。昨年、日本も表向きにはレフターの人権を認めたが、いまだレフターのブランド人肉をアメリカに密輸している。
アメリカの諜報部員である日系アメリカ人タケル(レフター)は東京で潜入捜査を開始する。先に潜入した同僚ミナ(シジューサ)によると豊洲市場が殺処分センター兼人肉市場になっているという。人肉畜産団体の幹部と仲良くなったタケルとミナは人肉和食屋に連れられ、レフターの刺身を食す。そこでタケルはミナに拘束される。ミナは日本政府の二重スパイだった。そこでミナから日本政府の真の狙いである『意識細菌』計画を聞かされる。それは、シジューサの意識をインストールした人工細菌をレフターに感染させ、脳炎を起こし、脳を乗っ取るものだ。ミナも意識細菌を作ってもらい、永遠の肉体を手に入れるのだという。
そこに「マルーンズ」(レフター解放運動を行うレフターの集団)が現れ、タケルは救出される。タケルはリーダーのミツアキから「政府は天皇の意識細菌も保有している」と告げられる。政府は天皇の意識細菌をレフターたちに感染させ、数万人の意識天皇を作り出すつもりだ。天皇制を瓦解させ、日本統治の新時代を作るのだという。
その後、密輸現場を偵察したタケルは再びミナたちに捕まり、殺処分センターに入れられる。タケルは多くのレフターと共にホールに連行され、シジューサの意識細菌を噴霧される。タケルは数週間後に自分ではない意識を持つ不老不死の人間になってしまうことを悟る。
その時マルーンズが市場を襲撃しにきた。マルーンズはレフターたちを解放するかと思いきや、ホールに入ってくるなりレフターたちを一斉射撃、燃やし始める。その目的は、感染者たちが平凡なレフターを虐げる未来を防ぐこと。タケルも銃撃を受け、血を流す。
すぐさま自衛隊が出動し、豊洲市場でマルーンズと激しい戦闘を繰り広げる。
タケルは朦朧とした意識で市場内の研究室に行くと、ミツアキが自衛隊との戦闘により倒れている。ミツアキは「これが天皇の意識細菌カプセルだ」と差し出し、果てる。タケルはカプセルを受け取り、市場を脱出する。
湾岸でタケルは倒れる。カプセルが地面に転がる。一羽の海鳥がカプセルをくわえた。タケルは息を引き取る。海鳥が飛び立つ。
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内容に関するアピール
僕たちのDNAは右巻きの二重螺旋構造をしていますが、「なんで右巻きなんだろう」と色々と調べていました。すると、局所的には二重鎖が四重鎖になることもあるようで、四重鎖が原因で癌細胞化するといった研究結果も発表されていました。しかし四重鎖を中心としたDNAを持つ人はどこにもいません。左巻きのDNAは試験管の中では存在しうるようですが、自然界にはありません。
DNAが右巻きの理由、それは地球で最初の自己複製が右巻きだった。その一度の偶然が地球上のあらゆる生物のDNAを右巻きにしているようです。
「もし突然変異で四重鎖の人類が生まれたら…」「左巻きの二重螺旋構造を持つ人類が生まれたら…」という問いがこの物語の着想です。三つの人類の対立構造の中で、不老不死が圧倒的に虐げられる社会を描きます。あと「人肉グルメ」「天皇」も欠かせないテーマだと思っています。一年間、ありがとうございました。
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