僕たちウーム

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梗 概

僕たちウーム

人類が移住できる星が見つかった。大きさは地球とほぼ同じで、月をひとつ持っている。水もあるし、生物の存在も確認されている。この星はベータと名づけられた。早速調査隊が派遣された。

月を拠点として、そこから調査員をベータに送る計画になっていた。地球からは確認できなかったが、月には巨大な穴が空いていたので、その穴を避けるようにして着陸した。5人が小型船で出発した。着陸して母船と連絡を取ろうとすると、誰も反応しない。不気味に思いつつも船外へ出て環境調査を始める。地球ととても似た風景が広がっていた。ベータの住人に出会う。黄色い肌の上に服を着ていて、個体間で会話もしているので、ある程度の知性はあるようだ。彼らを”ウーム”と名づけた。すると向こうから話しかけてきた。

「ホニャホニャホニャ」

「どうも」

当然言葉は通じないのだが、彼らの村に招待してくれるようだ。突然の歓迎ムードに戸惑ったが、警戒を保ったまま彼らについていく。遠くでこちらを見つめているウームがいる。

異変はその夜に起こった。調査員達が月を見ながら、母船のメンバーを心配に思っていた。心配でからだがムズムズしてきた。いや、本当に体に異変が起きているのだ。体が黄色くなってきている。腕が太くなってきて、宇宙服を破った。急いで小型船まで逃げようとするが、なぜか船が消えている。

「やあ、新しい仲間ですか」

ウームが話しかけてきた。言葉が分かるようになっていた。

「どういうことだ」

「月の光を浴びると、私たちと同じ姿になるのですよ。ようこそ」

数年後、5人はすっかりベータでの暮らしになじんでいた。月の光を何度も浴びていると、昔の記憶があいまいになってくるのだ。ウームは長生きで、平均寿命は200歳を越えるという。今は50年に一度の生贄祭の準備中だ。50年に一度だけ月から降りてくる”神”に生贄を捧げる祭りだ。しかし今回生贄としてくじで選ばれたウームがガリガリであまり美味しそうじゃない。たくさん食べ物を用意して太らせようということになり、急遽狩りが行われることになった。元地球人(彼自身はそのことを忘れているが)のウームが海にもぐると、見たことのない海中洞窟を見つけた。奥に進んでみると、そこには大量の宇宙船が遺棄されていた。そのひとつを見た途端に彼は元の記憶を思い出した。それは自分たちがベータに来る時に乗ってきた小型船だったのだ。仲間を呼んできて陸に引き上げることにした。小型船を見た仲間達も元の記憶を思い出した。そこで彼らは気づく。こんなに大量の宇宙船があるということは、他のウームたちも別の星からやってきたのでは。他のウームたちも呼んでくると、やはり彼らも他の星からやってきたのだった。驚いたことに中には地球人もいた。5人がベータに来たときにこちらを見つめていたウームだった。きっと地球人の姿を見て心がざわついていたんだね。

「俺たちはあの月にいるやつらの食糧として罠に引っかかってことじゃねーか」

「こうなったら俺たちで、目に物を見せてやろうぜ」

全員が宇宙船に乗り込んで、月に向かって出発した。そして日が暮れて、月が出てきた。

「ヤバイ!頭が・・・っ!」

「気を確かに持つんだ!」

月の穴から何か大量の宇宙船が出てきた。地球人にはおなじみの円盤型UFOだ。

「いつもあれに乗ってやってくるんだ!」

「撃ち落としてやる!」

各々のウームたちの宇宙船に搭載されていた武器で、UFOを次々と攻撃していく。相手は全く反撃してこなかったので、全てのUFOを打ち落とすのに時間はかからなかった。いよいよ月の穴の中に入っていく。中には多くの”神”がいた。豚が立って歩いているような外見。とにかく銃を撃ちまくって、殲滅していく。奥に行くと牢屋があり、かつて母船に残っていた地球人の仲間たちと、その他の宇宙人が捕まっていた。

「助けに来たぞ!(ホニャホニャ!)」

「誰?」

「爆発するぞ!急いでここから脱出するんだ!(ホニャホニャホニャ!)」

「よく分かんないけど、分かった!」

月に置いてきた母船も月内にあった。全員が急いで乗り込み、何とかぎりぎり脱出に成功できた。月が爆発すると、ウームたちはそれぞれ元の姿に戻っていった。地球人グループはベータにいた一人を加えて、全員が再集合できた。他の星の人たちも元の姿に戻り喜んでいる様子。ただ残念なことに、もう彼らの言葉を理解することが出来ない。でも一度は心をひとつにして戦った仲間だ。調査員達はとりあえず地球に帰ることにして、それからもろもろの始末をどうするか考えることにした。きっとなんとかなるだろう。

文字数:1876

内容に関するアピール

「二単位以上の登場人物」とあったので、動物がしゃべるようなメルヘンかファンタジーをやろうと思いましたが、昔の戦隊ヒーローっぽい話になってしまいました。実作ではもともとベータにいた地球人のことも含めて、彼らの感情の動きを一人称視点で描いていくつもりです。

月はしばしば希望の象徴として描かれます。しかし希望というのはそもそも人の勝手な思い込みであって、本当は逆の意味を持った存在であったり何も無いのかもしれません。大切なことは、期待し過ぎない程度に希望を信じて【自分で】がんばるということだと思います。そのためにも自分を見失わないこと、見失ってもちゃんと思い出すこと。そんなことを子ども達に伝えられたらと思います。

 

文字数:305

課題提出者一覧