青龍関に会いにいく

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梗 概

青龍関に会いにいく

自然妊娠で生まれたジュン、15歳。
兄は遺伝子操作で生まれたのに、ジュンは両親の気まぐれで、自然妊娠の子だ。
遺伝子操作で生まれるのが当たり前の時代。
自然妊娠で生まれるのは、ベーシックインカムを生活の糧にする貧困層のみだ。
ジュンは富裕層の生まれだが、貧困層の家庭出身のユアンと仲が良い。

ジュンは運動能力が明らかに劣ってたせいでバカにされていたし、本人も劣等感を抱いていた。

ある日ジュンは祖父から、かつて「最強の横綱」と呼ばれた青龍という力士がいたことを聞かされる。
ジュンが生まれる前、青龍は筋肉増強剤の投与によって横綱に登り詰めた。しかし違反がバレて、相撲界を永久追放された。

青龍も自然妊娠で生まれていたと知り、ジュンは青龍に憧れを抱くようになる。
祖父によると、青龍はその後も薬物の中毒から抜け出せず、いまも薬物を接種し続けているという。

ジュンは青龍に会ってみたいと思った。そしてもしそんな薬があるのなら、自分も飲んでみたいと。
ネットで調べると、青龍はジュンの家から2時間の地域に住んでいる。
しかしそこは国内でも有数の犯罪率の高い地域で、もし行きたいといえば両親が反対することは明らかだ。

ジュンはある日の夕方、ユアンの家に泊まりに行くと嘘をついて、青龍に会いに行くことにした。
出かけるとき、ジュンは外で祖父とバッタリ出会ってしまう。
ジュンがユアンの家とは逆のほうに行くのを見て、祖父は「気をつけるんだぞ」と言った。

街を出るとき、ジュンのあとをユアンが追ってきた。
ユアンはジュンの祖父から話を聞いて、ジュンに会いにきたのだ。ふたりは一緒に街を出た。

夜、ふたりは青龍が住む地域に着いた。
街は想像以上に荒れ果てていて、道ゆく人々にじろじろと見られた。
貧困層のユアンですら、その地域では「小ぎれいな格好」だったからだ。
この街には、過去の犯罪歴などを理由に、
ベーシックインカムの受給資格を剥奪された人々が多く住んでいた。

青龍の居場所を探していたふたりは、そばを通りかかった車から出てきた男たちに誘拐されそうになる。
そこに老人がやってきて、杖で男たちを追い払う。
フラフラと歩くその老人は「私を探しているらしいじゃないか」と言った。

ジュンはお礼をしながら、こんな細い人が青龍?と思った。
そして「青龍ならその証拠を見せて」と言った。

ジュンとユアンは老人の家に案内されて、その家族に出会う。
みな一様にやせ細っている。家族は、その老人は確かに「青龍」だと言う。
証拠となる物はすべて売り払っていて、そこにはないとも。

その日、ふたりはその老人の家に泊まった。
老人は、薬物を使ったときのことや、その副作用のことを話してくれた。
周りからは薬物の使用を反対されたのに、「どうしても勝ちたかった」と老人は話した。

翌日、「本当にあの人が青龍だったのかなあ?」と話しながら、ふたりは家に帰った。
祖父が「まだ青龍に憧れてるか?」と尋ねた。
ジュンは「憧れていうか、まあ、会えて良かったよ」と言った。

文字数:1227

内容に関するアピール

本当はホログラムやパワースーツを使った相撲の話を書こうと思っていたのに、それらの装置が一切出てこないことに驚いております。
本作は子ども向けのSFで、劣等感から脱出する方法を主人公が摸索する話になります。
青龍も本来は筋肉ムキムキですぐに青龍だとわかるはずのキャラクターでしたが、書きながらどうにも筋肉ムキムキの青龍に魅力を感じず、いつの間にかやせ細った老人になっていました。

文字数:186

課題提出者一覧