仮想現実の彼女

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梗 概

仮想現実の彼女

 都内でOLをしている千代瀬ちよりは、彼女に別れを告げられ、失意のなか夜道を歩いていた。家電量販店の明かりに誘われPCゲームコーナーに立ち入るちより。そこで恋愛ゲーム『VR すきぴ』を見つける。パッケージに写っている選択キャラの一人が元カノに似ていることに気づいたちよりは、ソフトの購入を決意。合わせてヘッドギアと触感グローブを購入する。帰宅後ゲームを開始するちより。
 ヘッドギア越しの世界で、ちよりはセーラー服を身に纏っている。そこに、曲がり角からビキニ姿の女が現れ、ちよりの手を掴み駆け出す。「逃げるよ」。後方からはスーツ姿の男が追いかけてくる。拳銃音が響く。気づくと廃屋。いつの間にか元カノ似の女は拳銃を持っている。男2人との銃撃戦。その状況下で女は自己紹介を始める。
「私の名前は結花。あなたは?」
「ちより! 千代瀬ちより!」
「いい名前だね」
 ラッパの音が辺りに鳴り響き、花が飛ぶ。銃撃戦は続く。
 ちよりの部屋。外ではチュンチュンと小鳥の鳴き声。ヘッドギアを外したちよりは惚けている。
 ヘッドギア越しの世界。『続きから』が選択され、ちよりは結花の部屋に入る。キッチンでは、結花がビキニの上にエプロンを身に付け料理をしている。ちよりは結花との食卓を楽しむ。一方その頃ちよりの部屋では、薄暗い中PCの前でヘッドギアを身に付けたちよりが「美味しい、美味しいよ」と言いながら何かを口に運ぶ仕草をしている。
 ゲーム内。床暖房が決め手だったマンションの部屋に湯船は無く、ちよりと結花は銭湯に向かう。帰り道、車に轢かれた犬の死体を結花は見つける。死体を顔だけ地上に出した状態で土に埋める。「飼い主が探してるかもしれないから」。時々くる変なシナリオにちよりは笑う。
 触感スーツ、触感マスクなど、VRグッズを次々購入していくちより。貯金が底を突く。結花と暮らす時間が長くなっていく。
 雷が鳴り響いていたある日、ゲームを楽しんでいたちよりの耳元を、落雷の大きな音が襲う。視界がブラックアウトしちよりはヘッドギアを外すが、現実の部屋の中も真っ暗。ブレーカーを上げに行くちより。部屋が明るくなり、ゴミ袋が散乱した室内が目に入る。「もー、邪魔しないで欲しい」。PCの電源を入れ直し、再びヘッドギアを身につけるちより。
 ヘッドギア越しのメニュー画面には『ニューゲーム』しか選択肢が無い。データは初期化されている。仕方なく『ニューゲーム』を選ぶ。
 ちよりはセーラー服姿。路地の曲がり角から、ビキニ姿の結花が現れる。結花がちよりの手を掴む。「逃げるよ」。相変わらずのビキニ姿を見てちよりは笑い、結花の名前を口にする。すると結花は立ち止まる。
「なんで私の名前を知ってるの? あなた、名前は?」
ちよりはそれを聞き、急激に何かが冷める。

 ちよりの部屋。ヘッドギアを外すと、PCから『VR好きピ』のディスクを取り出すちより。それをフリスビーのように投げると、散乱したゴミ袋の上に落ちる。

文字数:1226

内容に関するアピール

現実とヘッドギア越しのゲームの世界。この行ったり来たりを、シーンの切り替わりで描きます。

VRな恋愛シミュレーションゲームというベタな設定なので、主人公・ゲーム内ヒロインともに女性にしました。百合ですが、いわゆる百合SF的な綺麗め仕上がりではなく、アホっぽいコメディを予定しています。

文字数:141

課題提出者一覧