ある朝スマートロックで

印刷

梗 概

ある朝スマートロックで

過去をいつわってジェイクの家に同棲するようになったアリシア。中卒という最終学歴はイギリスの大学に留学したことになっている。
西海岸から東海岸に引っ越し、過去とは決別したつもりのアリシアは、先日街でばったりアンドリューと再会してしまった。それ以来、ジェイクに過去をばらされたくないならお金をよこせとせびられ続けており、この日もアリシアはアンドリューと会う約束をしていた。
ジェイクとアリシアは口座が別々で、生活費として一定の金額を二人の口座に入れさえすれば、あとはお互いに何をしているかわからない。
だからジェイクはアリシアの経済状況を知らなかった。
昨日アリシアはアンドリューに対し、支払う現金がないことを知らせていたが、アンドリューは聞く耳を持たず、ないなら彼氏のお金を引き出せば良い、と提案していた。
ジェイクの口座の暗証番号を厳密には知らないものの、なんとなく検討がついていたアリシアは、アンドリューの提案に乗ってしまう。

ジェイクが出社する前、ジェイクの財布からクレジットカードを引き抜くアリシア。
いつもは駅まで一緒に行くのに、アリシアは家でやることがあると嘘をついてジェイクを先に行かせた。
ジェイクの家は数年前にできたばかりのマンションで、スマートロックを採用していた。
スマホからもロックを操作することができる上に、顔認証機能もついていて、登録された人間がドアに近づくと鍵が開くシステムである。

ところがこの日、アリシアが家を出ようとすると、ロックを解除できない。スマホと連携もできず、顔認証も反応しない。
ジェイクに連絡するが、ジェイクはもう地下鉄に乗ってしまったようだ。状況を伝えるメッセージを送る。
管理人が来てもどうにも開けることができなかったので、スマートロックのメーカーに修理を依頼した。

アンドリューとの待ち合わせ時間が迫り、アリシアはイライラしていた。彼は時間にうるさく、遅刻すれば請求金額を上げてくるような男である。
待ち合わせ時間が過ぎたころ、メーカーの修理担当者がやってきた。

アリシアがメーカーの人を迎えようとして玄関に向かうと、ロックが解除された。
メーカーの人は不思議がりながら「本当は壊すしかないと思っていたんですが、特に問題はないようですので…」と言って帰っていった。

だがメーカーの人が帰って、アリシアが出かけようとすると、また鍵が開かない。
アリシアがキレてドアを蹴ったりしていると、警報機が鳴り始めてしまう。同じタイミングで、ベランダの窓が割れた。
石を投げ込まれたようだ。スマホには、アンドリューから「ふざけんな、早く来い」とメールが来ていた。
そのときインターホンが鳴り、アンドリューがやってきたとわかる。

アンドリューが玄関までやってくると、ドアの鍵が彼に反応して開いた。
しかしアンドリューが中に入ろうとした瞬間、ドアが勢い良く閉まり、アンドリューは首を挟まれて死んでしまう。

監視カメラは玄関の様子を映しており、玄関が勝手に閉じたことは明白であった。
現場にやってきた刑事は「これはもう、ドアが意思を持っているとしか言いようがないな…」と呟いた。
アリシアは、帰ってきたジェイクにクレジットカードを返し、泣きながら過去を打ち明けはじめる。

文字数:1326

内容に関するアピール

舞台はアメリカ東海岸のマンションの一室。最新のスマートロックが全部屋に完備されています。
顔認証でロックを解除できるので、住民は鍵を持つ必要がありません。(閉まるのはオートロック)

自分が普段安心して住んでいるはずの我が家が、自分の意思に逆らってくる恐怖を描きます。
アンドリューという外側からの恐怖と、人工知能が搭載された「スマートロック」という内側からの恐怖を用意しました。
スマートロックはその知能を駆使して、主人であるジェイクの身に迫る犯罪を未然に防ぐように動くのですが、アリシアにとってはそれが逆に恐怖となります。

はじめスマートロックはジェイクを守るべく、ジェイク名義のクレジットカードを盗んだアリシアを家から出さないように動きます。
スマートロックは自分が修理・交換されるのは避けたいので、メーカーの担当者の前では大人しくなったり、意思があることを少しずつ提示していこうと思っています。

アリシアの身に危険が迫ったことがわかると、今度はアリシアの身を守るようにも動き始め、アリシアに襲いかかる敵・アンドリューを殺してしまいます。
アリシアは最後までロックに振り回されながら、刑事のひと言で、ロックに助けられたことに気づきます。

文字数:512

課題提出者一覧