ミトセイジの憂鬱な日々

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梗 概

ミトセイジの憂鬱な日々

五反田で生まれたミトセイジは。父親のいない貧困家庭で育ち、貧乏を友達にも馬鹿にされ続けた、孤独に苛まれながら大人になり必ず格差社会を撲滅すると、一大決心をしていた。
シングルマザーの母は教育の為には金を惜しまず、懸命に働き大学まで行かせてくれた。母は事あるごとに悪いのは社会の格差だとボヤいていた。セイジは景気に恵まれず正社員にもなれず、アルバイターとして働き職を転々とし、格差をなくすなんてことは夢夢で終わっていた。

ある日、些細なことで失職しやけ気味のセイジは、立ち寄ったゴジラノヒタイというバーでタキジと名乗る男に出会う。初対面でも、ホンネを聞いてくれる懐の広さに、格差をなくしたユートピア社会も語る。頷きながら聞いていたタキジは唐突に「自分をなくすことができますか」というとセイジの額に手を当てた。周囲の景色が入替わり、古びた街で逃走劇がされてた。過去であり干渉をされないと理解し、観察を続けて昭和初期の東京生活も徹底した格差を実感した。

無事に戻ったも、就活が上手くいかずセイジはバーで独りヤケ酒を飲んでいた。現れたタキジに、前のは小林多喜二の党生活者のモデルになった過去体験、と訊き頷く。今度は未来を、と言われ頷くが、そこには何も変えられずただそのまま人生を終えるセイジの姿があった。悔しがるが何故か目の前に原稿用紙が置かれ、描いたどんな未来でも見せましょうという。
文なんか素人だ、というセイジだが引っ張られ地下に秘密部屋に連れていかれた。ここはSF世界思考実験倶楽部だといわれ、文豪の名の個性的なメンバー、ソウセキ、リュウノスケ、ユキオといった文豪名の話しかけてきた。ジュウザ、キュウサクといった面々もいる。自由、平和、人間とは何か侃侃諤諤と議論した。格差についても勿論。そこで閃いたアイデアをもとに執筆に勤しんだ。
就活も忘れ、誰も納得する最高のユートピアを書くぞ、意気込んで書きあげたのは史上最悪なディストピアだ。タキジに見せセイジは体験させて欲しいと懇願する。最後に狂気の内に主人公は自殺すると知ってながら、最高傑作と信じて疑わない未来が見たかったのだ。

目が覚め知らない部屋で新聞を手に取ったセイジは自分の何故かベストセラーとして売れていた。
三か月はゆうに過ぎていたが、その間の記憶はなかった。
出版社を訪ねてみた。ミトタキジという人が持ち込んで、昏睡状態だから特例で出版した。回復する見込みはないと聞いていた、という。
礼をし、今度はタキジを探しにバーを訪ねたが、見つからない。同所にはネコノヒタイというバーがあったが、タキジを知らず、秘密の部屋も無くなっていた。
購入されたマンションには見たこともない金額が印字された通帳が置いてた。
セイジは母の墓前に来て格差社会はそうそう変えられないと謝る。これから一冊でもベストセラーなのを契機として作家人生で世界をいつか変えてやると決意を報告した。

文字数:1199

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