梗 概
バーφサンタフェで会いましょう
統合科学研究の立脚と普及を目指し、最先端の技術の知見を持つ女性キャスト達がもてなす高級会員制ガールズ・バーがある――。
ゴタンダにある研究所で環境情報工学を研究する天月准耶は、研究の行き詰まりの中、そんな噂を耳にする。
「サイエンス・バーφサンタフェ」
ゴタンダ弐番街の通りを抜け、奥まった路地を曲がると新築の全面ガラス張りのビルのふもとに地下続く回廊階段がある。
ビルの地下に足を踏み入れると、クラインの壺を象ったランプと重厚な鉛色の扉で誂えられたサンタフェへの門があった。
店内で妙齢の紳士に出迎えられる。店内は一見普通の広めのバーを装っているが、通常の接客バーと、サンタフェの枠で分けられ、申告があった場合にのみサンタフェに通される。最初に入会テストがあり、結果・来店等に応じてクラスが分かれ、上位クラスではより多くの施設が利用可能である。
天月は、難なくテストをパスし、最高クラスの一つ下のクラスの得る。
案内役のキャストから説明を受けていくうちに、天月はサンタフェは大規模な科学実験的な施設であることに気付かされる。
キャストは、殆どが20代前半の容貌、知能に優れた多様な科学分野を専攻する女性たちで、各キャストに自分専用のラボがある。
地下5階(以上)の各階、約500平米あり、様々な科学技術の趣向を凝らした接客用のセッションルームが存在する。
文献を人工知能で日々収集する智恵の図書室。以前の部屋の映像を書換つつ流す円環の部屋。遺伝子検査で相性診断ができるの部屋。人工培養で作られた食事、飲み物が提供されるエネルゴンの部屋などなど様々だ。
そんな中、天月は、知的にも本能的にも好奇心をそそられるキャストたちと出会い、何人かのキャストと親密になり、同伴やアフターまでするようになる。
ある日、カラオケで毎回ドンピシャの点数を出すマリカからアフターの帰りの立ち食い讃岐うどん屋で衝撃的な告白を受ける。
マリカは実は多次元宇宙から派遣された超次元存在であり、地球の現時点における科学技術の状況と限界を調査しているという。
冗談か真面目かわからないマリカの言動に翻弄されつつも、天月はマリカの地球、ひいては地域に寄り添った活動に好感を持つ。マリカは時折、大崎橋の近くで弾き語りを行っており、ひっそりとした人気を集めていた。
ある日、ゴタンダの夏の風物詩であるゴダフェスにおいて、ゴタンダをSF化せよ、とのお題目のもとSFパフォーマンスを競うコンテストが同時開催されることを知る。優勝賞金は1千万円。
マリカは天月に協力を仰ぎ、超次元能力と地球のテクノロジーとを融合させた仕掛けを企てる。
「あなたのこれからの人生に、どうかたくさんの幸福が降り注ぎますように」
大崎橋を横たわる目黒川にはホログラフィックの巨大な竜が立ち現れ、マリカの歌声と共に煌々とセロトニン結晶が降り注ぐ。
その日、ゴタンダに現れた竜とマリカの歌声は伝説になった。
文字数:1200
内容に関するアピール
五反田は、飲食店や夜のお店の繁華街でもあり、ベンチャー企業や大手企業、研究所が点在するオフィス街でもある、バラエティ豊かな街です。
下見に行って感じたのは、夕方以降の東口付近は街の規模に対してキャッチの人が非常に多いという印象でした。
壱番街があるのを見つけ弐番街がなかったので架空の存在として位置づけました(あるのでしょうか?)。
ぼんやりとサイエンスな会話ができる夜のお店があったら面白いだろうな、という着想があったため、今回梗概の形にしました。
現実とは唯一異なる設定は「サイエンス・バーφサンタフェという異空間に集う異人たち」です。
現実にありえない空間の集合・現実空間の空集合φ、人の範囲を越えた要素の集合・人の要素の空集合φな存在が集まるお店をサンタフェとして設定しました。
また、サンタフェと五反田の地域の固有性との融合を図るため、場所、飲食店、地域イベントとの交差も意識してみました。
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