梗 概
点滅
レン、ユーヤン、マサムスは五反田に住む小学6年生。ユーヤンは物知りの秀才、マサムスは太っちょの明るい子、レンは聡いが勉強が好きではない。
夜、3人はユーヤンの塾帰りに待ち合わせて、コンビニで「英単語カード」のコピーを取り、池上線高架の下に行く。やがて大崎警察署の巡回ドローンが現れる。巡回ドローンは高架周辺に待機する間、コンクリート橋脚にプロジェクションマッピングを行う。人の手のような形をしたゆらめく海藻の間をすり抜けて魚が泳いでいる。3人のコピー用紙に複写した英単語は「fish」と「finger」。「実験成功!」レンはノートに「インプット……駅西のファミリーマートのコピー機、アウトプット……警ドロの映像」と書き込む。ノートには他にも、「ブックファーストの検索機」と「駅前の青信号の時間」、「不動産屋の自販機」と「水道水の温度」、「UFOキャッチャー」と「駅前の自動運転車の台数」等、3人の「発見」が記されている。五反田の街はいたるところに「インプット」と「アウトプット」の組み合わせが存在している。「五反田が大きな電卓、コンピューター、いや、スーパーコンピューターみたいなものなんだ!」とユーヤンがいう。3人の見つけた秘密だった。
新しい組み合わせを探すうちに、3人は中学生のモッピに出会う。3人はモッピが自分たちと同じ秘密を知り、それ以上に研究を進めていることを知る。落ち込む3人を見かねて、モッピは「とっておき」を教えることを約束する。
翌日学校で、マサムスが駅前の自動車事故を見たことを自慢するのを聞いて、レンは自分たちの「インプット」が無人自動運転車の挙動をおかしくしたのではないかと心配し始める。同じ事に気づいたユーヤンは不眠症になり、両親に連れられて精神科を受診する。ユーヤンは3人の秘密を話してしまい、医師はユーヤンは受験ノイローゼになっているという。3人は「インプット」探しをやめることにし、レンはそのことをモッピに伝える。
時間が流れ、夏休みに入って急に母親はレンに中学受験をするようにいい、抗弁するが通じない。レンはユーヤンの気持ちがわかるような気がし、部屋の電気を点けたり消したりしながら物思いにふける。ロボット人形の顔が浮かんだり沈んだりする。自分たちの「発見」はすべて妄想だったのかと疑いながら街をさまよったレンはモッピに再会する。モッピは父親の会社が入っているというビルの屋上にレンを連れて行く。モッピが「仕上げ」に屋外照明を3度点灯すると、それに応えて向かいのビルの窓には照明を点滅させる人影が映った。レンは、人間もまたこの「都市=計算機」の回路として動いていたのだと気づく。五反田の街中が同期発光する蛍のように点滅し始める。
文字数:1128
内容に関するアピール
・ただひとつだけ現実と異なる設定は、
・センスオブワンダーは、主人公が自身の意思とは離れた「回路」
文字数:284