梗 概
トモダチ
その人形師には幼い病弱な娘がいた。
四歳でその娘は亡くなってしまう。
人形師は、友人の脳科学者の協力を得て、亡くなった娘の「友達ともっと遊びたかった!」
という想いを人形に移植した。
その時、ある手違いにより、殺人鬼の邪悪な想いも人形に移植されてしまう。
人形師はその人形を娘のように可愛がった。
数年後、人形師は車を運転中に交通事故で亡くなる。
助手席には人形がいた。
ここは真っ暗です。
わたしはいけない事をしたので、お仕置きとして押入れに入れられました。
ここはかび臭い臭いがします。壁の向こうとか、天板の上とかで、何かが駆
けまわる音がします。
怖いです。
早くここから出して欲しいけど、なかなか許しては貰えないみたいです。
わたしは、そんなに悪いことをしたのでしょうか?わたしは、ただ仲良しの
トモダチと仲良く遊んでいただけなのに……。でも、なぜか、その仲良しのト
モダチは、一人また一人といなくなっていきました。
春の日に桜の木の下で一緒にままごとをして遊んでいたミヨちゃんは、桜の
枝が目と喉に刺さって、血だらけになっていなくなりました。
夏の日に川で一緒に泳いでいたコトミちゃんは、溺れて流されて帰ってきま
せんでした。
秋の日に落ち葉を集めて一緒に焚き火をしていたキミコちゃんは、服に火が
燃えうつって焼けてしまいました。
冬の日に一緒に雪だるまを作って遊んでいたタエちゃんは、足を滑らして転
んで頭を打って、それっきり動かなくなってしまいました。
どうして、みんなわたしを置いていなくなってしまうの?
わたしは、いつまでもずっと、トモダチと笑いながら楽しく遊んでいたいだ
けなのに……。もう二度とわたしはここから出して貰えないのでしょうか?
新しいトモダチが欲しいです。
わたしは産まれたときから声を出すことができません。声が出せないわたし
は、誰にも助けを求めることができなくて、こうやって待つしかないのです。
誰か助けて!と念じ続けながら……。
あ、人の話し声が聞こえる。
久しぶりに聞く人の声です。私の想いが伝わって、長い時間待ちわびた新し
いトモダチが、やっと来てくれたのでしょうか?
わたしをこの暗闇から助け出すために……。
「中古でも、なかなか良い家だろ?」
「そうね、ちゃんとリフォームもされてるし。とても築三十年とは思えないわね」
「あれ?でも、この部屋の押入れだけは、ずいぶん古びているなぁ」
「あら、本当ね。手抜き?あ、見て、押入れの中に何かあるわよ」
「あれは人形みたいだなぁ……。お、まだ新品みたいに綺麗だぞ。この目なんて、
まるで生きてるようだなぁ」
「マナミにあげれば喜ぶわよ。新しい人形をほしがってたから」
「そうだな、新しいトモダチができたって、大喜びするだろうな」
桜井夫婦はこの中古住宅を購入する。
押し入れにあった人形を六歳になる娘のマナミに与える。
桜井は、マナミが人形と会話をしているろころを目撃する。
そして、この人形の中には二つの人格が存在していることを知る。
桜井は人形が怖くなり、マナミから取り上げて焼却炉で燃やしてしまう。
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内容に関するアピール
人形の気持ちになって書きたいと思います。
この人形は、幼くして病気で亡くなった女の子の「友達ともっと遊びたい!」という想いの記憶が移植されています。それと、別人格の邪悪な想いも移植されています。
二重人格の人形です。
どうやって人形に人間の想いの記憶を移植するんだー!という、ごもっともなお言葉が聞こえてきますが、
そこはSFらしい発想をしたいと思います。
思っていたのですが、残念なことに発想できないうちに締め切り日となってしまいました。
実作を自主提出できるようにSF発想力を鍛えて、SFホラーを書きたいと思っています。
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