梗 概
夢のお告げ
五反田駅前派出所に勤務している木崎哲夫巡査は、ある日変なことに気がつく。
派出所の壁に掛けられているカレンダーが、一週間が八日間になっている。
え?と彼は思い、自分の見間違いだろうとカレンダーに近づきもう一度よく見ると、
間違いなくカレンダーの一行は八日間になっていた。
日曜・月曜・火曜・水曜・木曜・金曜・土曜、そして、地曜となっている。
地曜日?英語表記はearthdayになっている。earthdayって確か地球環境の日ではなかったか?
と思いながら彼はカレンダーを一枚ずつめくっていった。今日は六月一五日。もうそろそろ今年も半分が終わるなぁーと思いながらカレンダーをめくっていくと、彼の手は止まった。このカレンダーには十月までしかなかった。
イタズラ好きな上司の上田巡査部長が、自分を騙すためにこんな手の込んだカレンダーをわざわざ作ったのだろうか?と木崎は思う。
昨日は確かに一週間七日間のカレンダーだった。木崎は間違いなく覚えている。
今この派出所には自分一人しかいない。午後二時になるところだ。今日はカレンダーを今初めて見た。
木崎哲夫巡査は今年の四月に巡査になったばかりの新米おまわりさんだ。四年制大学を卒業して地方公務員の試験を受けて警察官になる道を選んだ。いわゆるノンキャリア組だ。東京出身だけれど五反田にはほとんど来たことがなかった。
木崎哲夫は夢を見ることによりパラレルワールドにいるもう一人の自分と連絡が取れるようになる。
最初は、起きると夢を忘れてしまうので、そのことに気がつかなかった。
しかし、パラレルワールドの自分からのメモでそのことに気づく。「夢を忘れるな!」というメモ。自分で書いたメモではない。でも間違いなく自分の筆跡だった。
そして木崎は、もう一人の自分の夢を見て目覚めるたびに、昨日まで自分がいた五反田とは少しずつ違った五反田になっていることに気づく。自分はパラレルワールドの別世界に夢転移しているんだということを確信する。
なぜ自分にそんなことができるようになったのか木崎には全く分からなかった。
夢で出会う別世界の木崎達にもわからなかった。
しかし、木崎巡査はある晩見た夢の中で、その夢の中の別世界に存在する木崎から
「五反田にある企業が池田山公園の池にある実験装置を仕掛けた。
五反田の住人の深層心理を操作することができるかどうかの実験らしい。
どうやらその装置の影響で、我々木崎たちははパラレルワールドの自分たちと夢でつながることができるようになったらしい」という情報を告げられる。
木崎は、夢のお告げを確かめるために池田山公園に行く。
そして、その装置を見つけ出し破壊する。
パラレルワールドへの夢転移はなくなる。
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内容に関するアピール
五反田駅前派出所勤務の木崎哲夫巡査は夢を見るたびにパラレルワールドの別世界に転移してしまう。今までいた世界とは少し違う世界。
この少し違う世界を「ただひとつだけ現実とは異なる設定」にしました。
彼はなぜ自分にそんな奇妙なことが起こるのか、夢の中で別世界の自分と情報交換しながら、その原因を突き止めようとします。前半は木崎巡査の戸惑いと不安を、後半は原因追及をサスペンスのように描きたいと思います。
文字数:196