循環型社会形成推進基本法

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梗 概

循環型社会形成推進基本法

「I WANT YOU! 社会はアンドロイドの力を求めている!」

 

舞台は2040年のフクオカ・シティ。機械人口の有効活用と労働人口の減少をまとめて解決すべくアンドロイドの社会参加が積極的に推し進められている時代のお話。

公的機関への導入実験のために、マキノ’40がフクオカ・シティに1年間の任期で嘱託職員として採用された。

「人の役に立ちたいんだ!」そう意気込むマキノは「環境保護官」に任命される。その業務は循環型社会形成推進基本法をもとに『耐用年数が経過し凶暴化するアンドロイドの捕獲、もしくは収用を行い資源の循環を促し廃棄物化を防ぐ』というものだった。危険を伴う上に、住民や市民団体の非難に晒されることが多く、割に合わないとして誰もがやりたがらない仕事だった。

同期入庁の「フクヤマ」などの理解者に励ましてもらいながら、マキノはどうにか仕事に取り組んでいく。

そんな中、フクヤマがマキノから盗んだ情報を不正に利用し、自身が所有するアンドロイドの収用を防ごうとする事件が発生した。フクヤマの制止を振り切り、マキノは仕事をやり切らなければならなかった。

マキノの任期終了と耐用年数の満了が近付いていてきたある日、マキノはフクヤマよって拉致監禁されてしまう。

フクヤマはマキノを廃棄物として処分し、復讐する機会を窺っていたのだった。

マキノは監禁される中で、耐用年数を満了する。その時、自分の体に異常が発生していないことを知る。強制的に体の機能(例えば、しゃべる等)が使えなくなっている他は全く通常通りだった。これまで自分がしてきた行為は、声をあげられない無害の相手を一方的に攻撃するものだったと知る。

その事実に混乱しつつ、どうにかフクヤマの隙をついて脱出することに成功する。

その先で、監禁を犯したフクヤマを捕まえるべく警官たちが待ち構えていた。そして耐用年数を経過したマキノを迎え撃つために配備された新しい環境保護官であるマキノ’41も同様に待ち構えていた。自分と似た姿をし、自分を狙うマキノ’41を前にしてマキノは悟る。

自分の仕事とは全く別のところに、本来の目的が隠されていたのではないか?

自分の働きに意味なんてなかったのではないか?

抵抗を試みるマキノはその場で廃棄物として適正に処分されてしまう。

「ただ、人間の役に立ちたかっただけなのに」

声にならないマキノの遺言は、マキノ’41には当然届かなかった。

文字数:992

内容に関するアピール

ものには寿命がつきものです。寿命が尽きたものは処分されます。

ではアンドロイド等との共生が実現している未来にはどうなっているのか。

処分するのは、良心が傷みそうでなんか嫌。

じゃあアンドロイドの処分をアンドロイドに任せてしまえ!

というところから話が膨らんでいきました。

その結果、梗概の通りの話に。マキノくんに救いはありません。

 

みなさまご承知の通り、循環型社会形成推進基本法は実在する法律です。

罰則等はなく、あくまで枠組みを規定するものだと理解してよいのではないかと思います。(間違っていたらごめんなさい)

今回はこの法律を勝手に悪法として再利用(?)させてもらいました。

機械を作るためには材料、資源が必要です。限りある資源を有効活用するために、強引に資源の循環がなされるでしょう。そしてそのサイクルが短いほど、資本が動き技術力が蓄積していきます。当然そちらの方が儲かりますし社会にとっても有用です。

その目的のため、きっと法律を悪用するやつが出てくるだろう……

そんなアンドロイド目線のディストピアをエンタメ色強目で書きたいと思っています。

どうぞ宜しくお願いします。

文字数:477

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循環型社会形成推進基本法

画面の向こうでは女の子がインタビューに答えていた。白磁のようにまっさらな肌に、人形のようなぱっちりとした魅力的な瞳が素敵な女の子だ。血色の良い唇には生命力が溢れ、そこから出てくる声は溌剌とし、話しながら見せる表情は豊かで見ているだけで気分が晴れてくるようだった。

〈どうでしたか、これまでの人生は?〉

レポーターの問いかけに、その子は胸を張って答えた。

〈もちろん、私はとても幸せでした〉

〈理由を聞いても?〉

そう訊ねられ、女の子は少しはにかんだ笑みを浮かべた。

そして傍らに立つ男性を見上げると、そっと肩で男性の胸を押した。

カメラが引いて、二人の姿が画面に収まる。女の子の方は、薄いブルーのシャツに白のスキニーパンツという格好。とても爽やかで、見るからに涼しげだ。そして傍らの男性は蛍光色のパーカーに、ジーンズという格好。優しい顔つきをしているが、伏し目がちで自信がないように見えている。

〈とても、楽しい時間を過ごせましたから〉

視聴者にとっては見慣れた光景ではある。

だが見飽きるということはない。こうしたカップルのやり取りはやはり見ていて胸の詰まる思いがしてくる。だからこそ、カメラマンとレポーターはこの二人に声をかけたのだろう。

〈彼女、こう言ってますが。あなたはどんな気持ちで?〉

どこかレポーターの声が優しくなったのは気のせいだろうか。

そしてそれは気のせいでは無かった。確かにこのレポーターが見せる気遣いの色が濃くなっていた。マイクを向けられたパートナーの方が、言葉に詰まってしまい今にも泣きそうだったからだ。

すると女の子の方がパートナーの袖を引っ張った。そしてちらりとカメラを伺う視線を投げると、そっと彼の耳元へと顔を近づけた。内緒話をするのだろうか。そんな美味しい場面を逃すつもりのないスタッフのおかげで、その声は微かなボリュームでお茶の間に届けられていた。

〈ほら、最後なんだから。しっかり格好いいところを見せてよ〉

彼女の言葉に俯いたまま頷くと、ゆっくりと顔を上げていく。露わになる眼はすでに赤く、唇は細かく震えていた。まるで決壊寸前のダムのようだった。油断すれば、あっという間に涙が溢れてしまいそうだった。そんな瀬戸際で彼は踏ん張っていた。彼女の前で泣き顔を晒したい男はいない。絞り出すように、彼は声を発した。震えていたし、声量もわずかなものだった。それで目一杯だったのだ。

〈僕も、幸せな時間を、過ごせました〉

そう言うと、すぐに彼は目線を落とした。

ゆっくりとカメラが引き、二人の姿が画面に収まる。項垂れる男性の背中をさする女の子の表情は、目の前の愛しの人にだけ向けられたものだった。そんなものを垣間見てしまい、思わずどきりとしてしまう。

女の子は彼の肩を優しく叩き、そのまま彼を促した。そしてカメラに視線を向けると、照れ笑いを浮かべた。

〈じゃあ、そろそろ時間なので〉

カメラに会釈をし、その場を離れていく。

カメラはその二人の背中をずっと追っていた。二人の他にも、ちらほらと人の姿は見えていた。彼らは皆一様に、黙って坂道を登っていた。誰一人として、足取りが軽い人はいなかった。

僕はその坂道を知っている。環境保全公園をぐるりと回る、散歩コースを兼ねたゆるい坂だ。そしてその坂は公園を一周し、頂上にある環境センターへと続いている。我々アンドロイドにとっては生まれる場所であり、同時に帰る場所でもある。

去っていく二人の姿が小さくなる。

するとカメラの前にきつく髪を結んだ女性が現れた。

レポーターを務めるアナウンサーだ。タイトなスカイブルーのスーツがよく似合っている。彼女はちらりと視線を下ろし、すぐにまっすぐカメラを見据えた。

〈二人はこれから環境センターに向かいます。二人にとってそこは出会いの場所であり、同時に別れの場所にもなるのです。耐用年数を経過したアンドロイドはパーツ等の劣化により、エラーが起こりやすくなっています。そのため、一度回収されることが法律によって定められています。そのために二人にとってかけがえのない時間は、ここで一度終わりを迎えるのです。以上、現場からでした〉

 

//循環型社会形成推進基本法#施行要綱より抜粋

 この法律において「循環型社会」とは、製品等が廃棄物等になることが抑制され、並びに製品等が循環資源となった場合についてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進される社会をいう。

 

 立ち上る紫煙に気付いた僕は、斜め後ろに立つ同僚をじろりと見た。

「ヤン、仕事前のタバコはやめてください」

ヤンは中国系の痩せた男だった。古木を思わすような乾ききった頰には影があり、静かな迫力があった。ヤンは僕を見返すと、肩をすくめてタバコの電源を落としてくれた。

「お前みたいにタフじゃないんだけどな」

そんな小言を聞き流し、インターホンを押す。

間の抜けた電子音が鳴る。程なくしてインターホンの向こうから息遣いが聞こえてきた。

僕は顔の筋肉を緊張させ、百パーセントの愛想笑いを浮かべた。

「こんにちは、役所のものですが。今お時間よろしいでしょうか?」

インターホンの向こうでは戸惑いが生まれたようだった。全く身に覚えがないらしい。こういうケースはままある。

ドアの鍵がまわり、内鍵をつけたままゆっくりとドアが少し開いた。

その隙間から、若い女性が顔を出す。この家の住人だろう。

僕はフクオカ・シティから交付された職員証を掲げた。

「環境保全室のマキノです」

環境保全室、その言葉でようやくピンときたようだった。不審げだった表情はさっと引き、その顔にはわずかな焦りが見えていた。ドアを一度閉め、内鍵を解除してもう一度ドアを開く。

「もう、そんな時期でしたか?」

どうやらすっかり失念していたようだ。こんな反応を見せてくれる人はありがたい。こちらの回収に素直に応じてくれるからだ。

こちらが安心していると、廊下の向こうから一人の女の子が駆けてきた。レースがあしらわれたシャツに、子供サイズのハーフパンツを履いている。大きな目を不思議そうに揺らし、すぐに母親の影に隠れた。半分顔を出し、僕の様子を伺っている。

そして廊下の向こうから、目当ての機体が現れた。小型のペットロイドである。小型犬ほどの大きさの、小さな機械だ。彼はこちらをじっと見つめ、何かを考えるように黙っていた。

「ちょうど良かった。今日回収していっても?」

「いや、それは。また後日でも? こちらで連れて行きますから」

もちろんダメ元の提案だったので、断られたところであまりショックはなかった。

「わかりました。では、こちらが催促状になります。環境センターにてこれを添えて引き渡してください」

「期間はだいたい一週間くらいですか?」

「そうですね。期日は一〇日ありますが、土日は休みですので、実質一週間くらいかと」

納得するように何度か頷いてくれた。どうやら面倒事が起こることはなさそうだ。ホッと胸をなでおろしていると、こちらをじっと見上げていた女の子が身を乗り出してきた。

「一〇日って?」

母親は困ったように頬を撫でていた。このことを娘にどう告げるべきか、判断しかねているのだろうか。

「もしかしてジーン、連れて行かれちゃうの?」

ジーンという名前なのか。僕は大人しく待つペットロイドの姿を見下ろした。ところどころへこみ、汚れている。随分と酷使されたようだ。だがそのことを誇りに思っているのかと思うほど、主人を待つジーンの姿は凛として堂に入っていた。

「そうね。もうそんな時期だったみたい。お母さん、忘れてたわ」

母親は愛想笑いを浮かべ、僕のことをちらりと見た。話は終わりということだろう。あとはこの二人の問題だ。僕の出る幕はもうない。

「では、これで失礼します」

そう言って頭を下げて帰ろうとしたところで。

運悪く女の子と目が合ってしまった。その目は僕のことをまっすぐに見据えていた。僕はその目に映る敵意を否応なしに受け止めてしまった。

すぐに目を逸らし、そのまま扉を閉めてしまう。

扉の向こうからは女の子の涙まじりの声と、諌める母親の声が聞こえてきていた。何度も経験していることとはいえ、なかなか慣れるものではない。いくら仕事とはいえ、それを仕方ないと割り切るのはなかなかに難しい。

「済んだか?」

ずっと僕の後ろに控えていたヤンは、いつの間にかまたタバコのスイッチをいれていた。旧式の電子タバコだ。巷ではレトロ・ブームが巻き起こり、紙巻きたばこが一般的になっているがヤンは頑なにそれを拒んでいた。

じっと見つめる僕の視線に気付いたヤンは、肩をすくめていった。

「仕事終わりの一服もダメかい?」

扉の向こうで女の子が泣きだしてしまった。その泣き声を向けられているような気がして、僕はヤンに文句を言うこともなくその場を後にした。

 

//循環型社会形成推進基本法#施行要綱より抜粋

 3 この法律において「循環資源」とは、廃棄物等のうち有用なものをいう。

 4 この法律において「循環的な利用」とは、再使用、再利用、および熱回収をいう。

 

「それにしても、大変な仕事だよな」

「そんな言葉をかけてもらう機会は殆どない」

「だろうな。俺たちは怒られることはあっても、褒められる事はほとんどない」

並んで座る同期のフクヤマは、ビールを片手に焼き鳥を食べていた。短く刈った短髪が似合う、やや肉のついた男だ。その体つきと生来の愛嬌の良さがあってか、彼はとても人気がある。僕だって好感を持っていた。

「お前、そういえば食事ってどうしているんだっけ」

「食べることはできます。まぁ、必要ではないですけど」

もちろんこのたくさんの串を全てフクヤマが生産しているわけではない。

僕も食べている。フクオカ・シティの焼き鳥は格別だという。その違いはよく分からない。比較対象がないからだ。それでも僕の味覚は間違いなくこの味を気に入っている。

「つまり食べる必要はないけど食べている?」

「その通りです。生きるため、というよりも楽しみのために」

そう言ってちらりとフクヤマの手元を見た。

「君でいうその飲み物のような感じだね」

ジョッキ一杯に満たされた黄金のお酒を掲げ、フクヤマはけらけらと笑った。今の冗談に乾杯するように軽く掲げると、そのまま一気に中身を飲み干してしまった。

「飲み過ぎは良くないですよ」

「いいんだよ。きついことしているんだから。その分ご褒美だ」

うめき声をあげながら背伸びをする。その表情には疲労感が色濃く滲んでいた。

「最近、休みを取れていないのですか?」

「今の時期は仕方ないさ。そろそろ年末だしね。まだまだ、大丈夫」

そうですか、と頷く事しかできない。彼のタフさに感心するしかなかった。

僕は機械で、彼は人間だ。肉体的な疲労感だけでいえば、僕の方が圧倒的なアドバンテージを持っているはずだ。それなのに、僕は最近疲労感を常に抱えている。

「そういえば、お前もあと少しだったな」

「あと少し?」

「お前の任期だ。在任期間。一年間で終了なんだったよな」

そういえば、と驚いてしまう。大事な事なのに、すっかり忘れていたのだ。僕がこのフクオカ・シティで働き始めてもう九ヶ月が経っていた。あと三ヶ月しかない。

「すっかり忘れていました」

「名目はなんだっけ? アンドロイドの社会参画実験だっけ?」

「その通りです。人の役に立つ為の実験です」

フクヤマは大袈裟にため息をついた。

「まぁそうは言っても、やらせているのはみんながやりたがらないアンドロイド回収業務だからな。便利に使われているだけじゃないの、マキノ?」

「でも、役には立っているんですよね?」

それはな、とフクヤマは言った。

「まぁそれはともかく、お前はよくやっているよ。最初はアンドロイドの同期なんて嫌だなとか思ったけどさ。付き合ってみれば案外悪くないやつだし。それにこうして金曜日は一緒に飯まで食ってくれる」

自分でも台詞っぽい事を言ってしまったと思ったのか、フクヤマはわずかに眉間にしわを寄せた。そして目の当たりをこすると、もう一度ぐっと伸びをした。照れているようにも見える。それは友好的に見すぎているのだろうか。

「まぁ、あと少しだ。頑張ろうぜ。応援しているから」

そんなことを言われると、すっと重たいものが落ちていくようなきがした。

僕がこのフクオカ・シティでの実験に耐えられているのは、彼の存在があるからだろう。誰かの助けがあるだけで、これほど気の持ちようが変わるのか。このことについてのデータはきちんと残すつもりだ。僕のあとに続くであろう、たくさんの機械達が同じように良い仲間に恵まれる事を祈って。

「あぁ、ちくしょう、酔った酔った」

毒づきつつ、フクヤマは肩を回す。

「水、もらってきましょうか」

「いや、大丈夫。すぐ治るから、会計だけ済ませてきてくれよ」

そう言ってフクヤマは一万円を差し出した。僕はそれを受け取ると、戸惑いつつ彼とお金を見比べた。今回の会計は五千円に届いてすらいないのだ。

「今日は俺のおごりだ」

そんな、と言葉を続ける事も出来なかった。奢ってもらうなんて。

「いいんだよ。時には、飯くらい奢らせてくれ」

その言葉の奥に隠れる照れを、僕は目ざとく見つけてしまう。もしかすると彼は僕の事を心配してくれていたのかもしれない。だからこうして話をして食事を囲み、励ましてくれていたのだ。まるで仲間にするように。

 

//循環型社会形成推進基本法#施行要綱より抜粋

 7 この法律において「熱回収」とは、循環資源の全部または一部であって、燃焼の用に供することができるもの又はその可能性のあるものを熱を得ることに利用することをいう。

 

プツン、と切れる映像の残像が瞼の裏に残っていた。

どうしてこのタイミングで、あんな映像を見てしまったのだろうか。

『おい、マキノ。応答しろ』

呼びかける、というには愛想が悪いヤンのぶっきらぼうな声がする。

何度か瞬きをすると、記憶が剥がれていくようにその残像は去っていった。

『どうしたんだ? 疲れたのか?』

「そんな事はありません」

『だろうな。ロボットが疲れるなら、わざわざ使う意味もない』

その言い草に取り合う気力もない。今日これで六件目の回収なのだ。ひたすら任務をこなす機械となって行動しなければ、とてもではないが追い付かない。

シールドスモークを上げると、そこはフクオカ・シティのベイエリア。金持ちが大きな家と豪華な車を並べる高級住宅街から少し離れた、時代の流れに放置された路地にいた。

事前の打ち合わせですでに袋小路に追い詰めたという警察の報告は受けていた。あとはこちらの処理待ちだった。

路地の前には古びたバンと、黒いバトルスーツに身を包んだヤンがいた。特殊カーボン繊維を編み込んだ特別性のスーツだ。銃弾を弾き、機械の強烈な打撃を体に直接受ける事もない優れものである。

「状況の復習だ」

僕をちらりと見ると、ヤンは再び路地を見つめた。

「目標はこの先にいる。すでにガイノイドの方には凶暴化の傾向が見られつつあるらしい。あまり時間をかけるなよ。もし住宅なんかに逃げ込まれたら厄介だ」

もちろん、そのつもりだ。

「それに加えて、だが」

そこで不思議とヤンは考えるように一拍をおいた。まるでこちらの様子を伺うようだった。今までそんな様子なんて見せた事もないのに。

その逡巡はすぐに止んでしまう。髪を掻き、ヤンはため息まじりに言った。

「ガイノイドを匿っている奴がいる。持ち主だ。そいつは」

「フクヤマ、でしょう。知っています。先ほど確認しました」

その声色は自分でも驚いてしまうほどに淡白なものだった。

ヤンは黙って僕の表情を伺っていた。

「確認、したか」

まるでその先に何かを期待されているようだった。もちろんその先なんてない。

「フクヤマの所有するガイノイドは耐用年数を超過しています。どうしてそんなに隠し通せたのかはわからないですが、すぐに処分する必要があるかと」

ゆっくりと鼻から息を吐くとヤンは頷いた。

「その通りだ。ただ気になって調べてみたんだが、俺たちの持っているデータにあいつのガイノイドはいなかった。これは明らかに人為的な介入がある。何か心当たりはあるか?」

それはつまり協力したことなどはあるか? ということだろうか。

「いいえ、一度もありません」

「じゃあ、データの閲覧を許したことは?」

それもない。そうなると。

「あいつはお前の隙をついてデータを盗み見た上に、削除したということになるな。懲戒免職ものだな、これは」

それについて僕は何も感想を述べられなかった。

ただ黙って装備を確認するだけだった。今回のように耐用年数を超過してしまったアンドロイド・ガイノイドの処分方法は熱回収に該当する場合が多い。捕獲の際にパーツが傷付くことが多く、そもそもが劣化してしまっている場合が多々見られるからだ。

「こちら、準備は出来ています」

僕の言い方が気に入らなかったのか、ヤンは不機嫌そうに頭を掻いた。

「わかった。すぐに突入だ。相手が友達だからって手加減するなよ」

「もちろんです」

手加減をする必要なんて、ひとつもない。その必要性を感じたこともない。

なぜならこれが僕の仕事であり、これこそが僕の存在証明なのだから。

それなのにどうして手加減をする必要があるのだろうか。僕は自分の仕事を全うすること期待されているのに。人間と共生するロボットとして活躍することが求められているのに。だから僕は与えられた仕事をこなすしかない。今の僕は「マキノ」ではなく「公務員」という身分を背負っているのだから。

それなのに手加減をしてしまうとすれば、それはきっとエラーだろう。

僕はまだ廃棄物ではない。環境センターに帰るには、少し早すぎる。

 

 

//循環型社会形成推進基本法#施行要綱より抜粋

 第7条 

 4 循環資源の全部又は一部のうち、循環的な利用が行われないものについては、処分されなければならない。

 

 スモーク・シールドを下ろす。自動で暗視に切り替わり、暗がりに沈んでいた路地の姿が画面に浮き上がってきた。

まっすぐに伸びる路地の奥。ゴミ箱の影に身を寄せ合う二つの姿が映った。

とっさにカメラを切り替える。即座にCADが起動し、針金を編んで作ったような立体造形が浮かんでくる。表情が伺えず、とっさの細かい反応を目視で確認することはできないが、動きを捉えるだけでよければこれで十分だった。

『どうした、カメラの故障か?』

カメラを切り替えたことに気付いたヤンが声をかけてくる。

『なんでもないです。標的、動き始めました』

僕がそう言うが早いか、二つの影のうち一つが動き始めた。女性的なフォルムをしている。間違いなくガイノイドの方だ。まっすぐにこちらのほうに向かっている。気持ちを落ち着け、そっと懐から警棒を持ち出す。官給品の電気警棒だ。これに殴られれば、いくらアンドロイドやガイノイドといえど、無傷では済まされない。一撃で機体の中枢にまで届く容赦ない高圧電流が流されている。

こちらに駆け寄る針金人形の動きをよく観察する。迷いなく、こちらへと進んできている。頼むから止まってくれ、と思うもその様子は見られなかった。おそらくは腰のあたりに飛びかかり、こちらを抑え込む算段なのだろう。狙いがわかれば御しやすい。

 

ふと、頭をフクヤマの顔が掠める。

 

そしてすぐにその幻想を払い退ける。

間違えてはいけない。いくら友達とはいえ、フクヤマの大切なアンドロイドとはいえ手加減をしてはいけない。定められた法を、ただ誠実に執行することのみが僕に求められていることなのだ。

それなのに。どうしてだろうか。この気持ちの重たさは?

そんな風に考え事をしていたせいか、ガイノイドの手が頰まで伸びてきたところでようやく正気に戻る事が出来た。

無言のまま伸びてくる指先に、僕は思わずのけぞってしまう。さまよう指先に捉えられないように身をそらすと、一歩引き思い切り警棒を振り下ろした。

硬い音と共にスパークがきらめく。その強烈な光はカメラをショートさせてしまう。目の前が真っ白になり、すぐにスモーク・シールドを上げた。

暗がりの様子がすぐ目の前に広がる。

足元には、人影が倒れていた。その場で精根尽き果てたように、両手両足を放り投げて転がっている。暗がりの中で、その表情は伺えない。

「やめろ、やめてくれ!」

そんな叫び声と共に、何かが動く気配がした。

とっさのことでそれに反応することができなかった。いくら違反者とはいえ、電気警棒を食らわせるわけにはいかない。相手は人間だ。死んでしまう。

そうして躊躇している間に、何かが僕の下腹あたりから飛びついてきた。バランサーを作動させる必要すらない弱々しいタックルだった。しかしそれは実際のダメージ以上に、僕の心を抉り取っていった。涙に沈んだ友人が、何度もタックルを仕掛けてくるのだ。その度に鈍い衝撃音と涙の混じった悲鳴がする。痛みに耐え、悲しみに沈んだ嗚咽が繰り返される。そんなものを聞かされ続けて、気分がいいはずがないだろう。

何度目かのタックルの頃、ようやくヤンが照明を点灯させた。

強烈な光が路地を照らし、ありとあらゆる影が引き剥がされていった。

そして当然僕とフクヤマの間を仕切っていた暗がりも取り払われる。ちょうどその瞬間、僕たちは互いに見つめ合う形になっていた。

瞳と瞳がぶつかり、一瞬世界から音が消えた。

まっすぐにこちらを見据えるフクヤマの瞳は、まるで井戸のように深く暗いものだった。まるで磁石でぴったりと合わせたように、僕はその瞳から視線を引き剥がすことができなかった。ヤンがフクヤマを拘束したところで、ようやく僕は正気に戻ることができた。

ハッとして辺りを見回す。

そこはなんてことのない路地の一画だった。ゴミ箱の裏では暗がりに住む虫たちが迷惑そうに蠢き、ジメジメと湿った足元はこちらの気持ちも滅入らせてしまうものだった。

そんな中に、一体の人形が転がっていた。

僕が振り下ろした警棒は顔を直撃したらしい。顔の半分が割れ、その下には基盤がむき出しになっている。泥と苔に服と体は汚れていた。髪は乱れ、湿り気を帯びた地面に張りついている。事態は散々なものだった。わずかに焦げ臭いのは、きっと回線がショートしてしまったからだろう。

ふと、ひとつの映像が頭をよぎった。

 

〈とても、楽しい時間を過ごせましたから〉

 

ニュース映像で見たガイノイドとパートナー。

そして目の前に繰り広げられている惨状。

もちろんフクヤマだって幸せな期間を過ごしたはずだ。このガイノイドだって、きっとそうだ。同じくらい大切な時間を過ごしただろうに。

「おい、ぼーっとするな。仕事だ」

どうしてここまで差がついてしまったのだろうか。

「俺がこいつを警察に引き渡してくる。それまでに熱回収できるところとゴミを分けておけ。いいな。次の現場だってあるんだ。ぼんやりするなよ」

僕は去っていくヤンの方を一回も見なかった。

フクヤマがどんな表情をしているか見たくなかったからだ。だがそれは表向きの理由である。本当は僕の表情をフクヤマに見られたくなかったのだ。きっと僕の鋼鉄の皮膚は、こんな時にも変わらずいつものままだろうから。

 

 「まぁ、あと少しだ。頑張ろうぜ。応援しているから」

 

 そんな優しい言葉をかけられた日々はおそらく帰ってこない。

ただ心配することはなかった。僕の任期が切れるまで、あと一ヶ月だからだ。それが終われば、僕は鉄くずに還るだけだ。何も心配する必要はない。もうないのだ。

 

//循環型社会形成推進基本法#施行要綱より抜粋

 9ー12条

  循環的な利用が行われることを促進するよう努めると共に、協力する責務を負う。

 

 「君たちが思っている以上に、アンドロイドは金がかかる。資材もかかる。昔々の話だけど、都市鉱山ってやつもあってね」

「わかりましたから、ドクター。それはもう四回目です」

環境センターに入所してからもう何度も同じ話を聞かされている。そのことをどうやらドクターは覚えていないらしい。というよりも、出会ったアンドロイド全てに同じ話をしているのではないだろうか。だから誰に何回なんて瑣末な問題は気にもしていないのだ。

「僕たちはとにかくお金と資材がかかる。だからこそ、循環的な利用をする必要がある。だからこその耐用年数なのでしょう? 耐用年数を経過してからは劣化の一途だ。使い回す事が前提であるならば、ダメージが小さいうちに回収してしまいたい」

さすがに四回も同じ話を聞かされれば、おおよその話は覚えてしまう。

ついでに言えば、僕がこう指摘するのも二回目だったりする。

「あぁ、うん。そうだったね。よく理解していると思う」

少しバツが悪そうなドクターの顔を見るのはこれで二回目だ。そんな表情を見ることは案外悪いものでもないから、もう二、三回くらいは間違えてもらってもいいかもしれない。

 

一年間の任用期間を経て、僕は無事環境センターへと収容された。

僕は一年間の功労賞として特別に一人部屋をあてがってもらった。適正な処分が下るその日まで、ここでしばらくのんびりすることになる。

終わりが見えてくると、少しばかり気持ちにも余裕が出てきた。慌ただしい一年間という歳月を思えば、今の時間はまさに楽園と呼べる気楽なものだった。センター内は清潔で、まっさらな床、まっさらな壁があり、そこでは強目の照明に照らされ、廊下はまるで光の中を進むようでもある。

ここにいると、この一年の出来事が夢か幻の事のように思えてしまう。下界を見下ろす窓だけが、わずかに現実を思い出させてくれる。タチの悪い冗談のような日々は確かにそこにあったのだ。そして僕はそんな一年間を駆け抜けた。僕は使命に燃えて戦い抜いたのだ。任せられた仕事を。アンドロイドとして社会に参画出来る事を証明するために。

悔いが残る事もある。ただ全体としてはなかなか上手くやったと自分では思っている。

そんな事を考えながら窓の外を眺めながら歩いていると、ふと、見下ろした先に見覚えのある人影が動いたような気がした。確信は持てないのだが、あれは確かにフクヤマだったような気がする。

どうしてこんなところに?

その疑問と共に、僕の中にわずかな希望も湧き上がってきた。最後の最後に、僕は彼に一言言葉を伝えることができるかもしれない。これで最後になるのに、あんな別れ方はあんまりではないか。せめて、一言謝ることはできないだろうか。

僕はしばらく考える。

そして結論はあまり迷わなかった。僕は彼に謝りたーーー

 

   ◯      ◯

 

ブツン、と大きな音を立てて電源が落ちた。

目の前が暗転し、ひどい耳鳴りがした。キンと鳴り響く金属音に脳が揺れている。体が動かなかった。どうやら胴はワイヤで固定されているようだった。それならばとワイヤを引きちぎろうと腕を動かそうとした。しかし虚しく小さな駆動音がするだけだった。見ると腕からむき出しになった接合部、その中で機構がから回り、むなしい空音を響いている。

そんな。先ほどまでセンターにいたはずなのに。

パニックに落ちる寸前の自分をなだめ、ゆっくりと息を落ち着ける。

何があったのか、そしてここはどこなのかを思い出そうとする。天井の向こう側で鈍い通過音が響いた。電車の通過音だ。となると、ここはどこかの高架下の小屋なのだろうか。

ひとつ、ひとつ状況を思い出してきた。

僕はこっそりとセンターを抜け出した。フクヤマを窓の向こうに見つけたからだ。そこで運良くセキュリティの目をかい潜りフクヤマに接触した。そしてーー

「誘拐させてもらったというわけさ」

声のした方を見ると、そこにはフクヤマが立っていた。顔は薄汚れ、シャツはよれてしまっている。疲労の色が濃く出ていた。おそらくしばらくまともな休みを取っていないのだろう。

久々に会うフクヤマはまるで知らない人のようだった。

「誘拐って、どうやって」

その問いにフクヤマはにっこりと笑みを浮かべて懐から棒を一本取り出した。それは電気警棒だった。それで一撃を食らわされれば、いくら僕でもひとたまりもない。

「どうしてこんな事を?」

思わず口から出た言葉に対し、フクヤマは苛立ちを隠す素振りも見せなかった。

「何故って復讐だよ」

思い当たることは一つしかない。

「でもあれは仕方がないことだった」

「そう、あれは仕方がないことなんだ。あいつが泥にまみれても、無残な最後を迎えても、確かに全部仕方のないことなんだ」

苛立ちを抑え、フクヤマは興奮することなく淡々としていた。

「でもあれはあの子が先に向かってきたんだ」

「襲いかかる意図はなかった。敵意のある様子だったか?」

それは、と返答に窮してしまう。

向かってきたから迎え撃ったまでだ。針金人間のままでどうやって確認することが出来ただろうか。

答えることのない僕をフクヤマはじっと見下ろしている。僕はゆっくりとその目を伺う。もうあのぽっかりと空いたような目はしていない。ただしもう僕のことを見てはいなかった。まるで路傍の石でも見るように、僕を風景の一部としてしか認識していないようだった。

「でも、耐用期間を過ぎたら環境センターに連れて行くことになっている」

僕が言える精一杯はそれだった。

しかしそれを待っていたかのように、フクヤマは一笑に伏した。

「何故そんなことをしないといけないか、お前は知っているか?」

「それは」

環境センターで聞かされた内容を思い出す。パーツが古くなり、エラーが起こりやすくなるからだ。そしてパーツなどを無駄にしないように、再利用する為に耐用期間を守る必要があるのだ。

「お前は、どうなんだ?」

頭から降ってくる言葉は重い。

「僕が、どうかしたか?」

「お前を監禁してからもう一週間だ。耐用年数、切れているんじゃないか?」

そんなはずはーーない。そうでなければおかしい。何故なら僕の体のどこにも異変はないからだ。エラーを起こす予兆はなく、特に問題はなかった。戸惑う僕を見るフクヤマは、ため息混じりに手をひらひらと振った。

「なぁ、時々わからなくならないか? 自分がしていることは、本当に誰かのためになるのかってさ。もしかすると、自分がやっていることは全部無駄な事なんじゃないかって」

すべての前提を間違っていたという事なのか?

僕は自分の活動が人の役に立つものだと信じて疑わなかった。ただその根っこの部分から誤りであったとするならば、僕が過ごしてきた一年とはなんだったのだろうか。

「君にとって、僕の仕事はそうだったのか?」

「そうさ。俺はお前のおかげで不幸になった」

 

 〈どうでしたか、これまでの人生は?〉

 

 〈とても、楽しい時間を過ごせましたから〉

 

遠くからサイレンの音が聞こえてくる。聞き覚えのあるサイレンだ。環境保全室の所有するバンに取り付けられたサイレンの音。

「お前を処分しに来たんだな」

その通りだろう。それが目指しているものは、きっと僕だ。この場をどうにか打開しようにも、腕を取り外され、体を固定されたままでは僕は身動きひとつ取ることはできない。逃げるなんて選択肢は初めから用意されていないということだ。

そこでようやく僕はフクヤマの目的に気が付いた。彼は僕が酷い目に遭う瞬間を待ち望んでいるのだ。自分の最愛な存在が同じ目に遭ったように。

「なぁ、フクヤマ。今なら間に合う。助けてくれないか」

その申し出にフクヤマは薄い笑みを漏らす。

「ごめんな。でもお前は俺を助けてくれなかったじゃないか」

そういうと、パチンとフクヤマは指を鳴らした。すると不思議なことに目の前の情景が歪み始めた。その歪みは床に走り、まるで絨毯を丸めるように現実世界がまとまり始めた。それとともに、フクヤマの姿も消えてしまう。まるで目の前の空間からフクヤマだけを切り取ったようにも見えた。それは現実をすり替えられたかのようだった。

その光景に僕はハッと息をのむ。その瞬間に暗闇が視界を覆った。そこでようやく僕は顔の辺りに違和感を持った。顔を振るうと、わずかに異物感があった。もう一度振るうと、取り付けられたマスク型のウェアラブルモニターがずれ、先ほどまで見ていたものと同じ光景が目の前に広まった。

「残念ながら僕はそこにいないよ。SRシステム。代替現実さ」

耳元のスピーカーから嘲笑うフクヤマの声が響く。つまり僕は映像に映るフクヤマを本物だと思わされていたということだろうか。

彼はきっと今頃は手の届かない場所にいるのだろう。そこでこの場所の様子をうかがっているのかもしれない。

慌しい足音が近付いてくる。強烈な照明が焚かれ、容赦ない光線が古びた家屋の隙間から侵入してくる。静かな緊張感を小屋の向こうに感じる。

そして次の瞬間、容赦なく壁が蹴破られた。

そこから入ってきたものを見て、僕は言葉を失う。

僕と全く同じ姿形、そしてつい先週まで僕が着ていたバトルスーツを着ていた。

彼は電気警棒を片手に小屋の中を見回した。そして縛り付けられた僕を見つけ、じっと静かにこちらを伺ってきた。その様子に背中を冷たいものが落ちていった。

どんな風に、僕は映っているのだろうか。

耐用年数を過ぎ、正気を失ったアンドロイドだろうか?

それとも、助けを求める一体の機械人形だろうか。僕と同じ姿をしたアンドロイドは警棒を構え、ゆっくりとこちらに近付いてくる。彼が環境保全室の一員として活動しているということは、次の実験が始まったという事なのだろうか。

僕がたどってきた、理不尽な日々を追い始めるのだ。

 

 〈どうでしたか、これまでの人生は?〉

 

あのニュース番組が再びよぎる。僕はあの女の子のように笑う事は出来なかった。フクヤマのガイノイドのように、誰かに最後まで想われることもなかった。

どこから間違ったのだろうか。それを考えるのは今更だろう。

僕は本当にただ人の役に立ちたかっただけなのだ。ただそれは叶わなかった。ただその事実が残っただけだった。

 

だからこそ、僕はこの経験を次に繋ごうと思う。このような事を繰り返さないために。

廃棄物となっても、僕が実験機であることに変わりはない。だから僕のメモリーは回収されるはずだ。そこに記憶を、そして教訓を残すのだ。未来を生きるアンドロイドのために。そして記憶の循環の先に未来が作られることを願って。

僕の時間はとりあえずここで終わらせておく事にしよう。

 

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