梗 概
犬になりたくなかった犬
今年の新人にやたらとへんちくりんな奴がいて、我孫子比斗志っていうちび助なんだけど、ま、見た目はなかなかのジャニーズフェイスで銀色の長髪をポニーテールにしてるあたり、同級の悪ガキたちになかなかの好評を頂いているようで、今日も体育館裏へと呼び出し中。
「お前、この間、どんなマジック使ったんだよ?」
すっかり人気者の比斗志君、四角四面のこのご時世に、やたらとクラシカルに長ラン決めたリーゼント坊やに胸ぐら掴まれ、高校入学親睦会の真っ最中。
「どんなちびでも、人間が犬になるわけねぇだろ、そんぐらい俺にだって分かる」
「あんまり舐めたまねしてっと、殺しちゃうよ」
と、もう一人のぱっと見さわやか、鼻ピとへそピがチャームポイントのさらさらロン毛君、がにやにや笑って凄んでみせる。
「そんなこと言ったって、僕、何も知らないし、何も憶えてないんだ」
悲痛に叫ぶ、あわれ比斗志君、さあ、どーなる。
「先輩、関係ないっしょ。ほっといてもらえませんか?」
なんだか三人ともうんざりした表情を浮かべて、此方を見ている。なーんだ、本当は仲良しなんだ。心配して損した。
「・・・・・・」
なんだかしらけた空気が漂っていて、俺はどうにもいたたまれない。間を取り持って、みんなで仲良くなることができたら良いなと思ってたのに、あんな目で見られるなんて、心外だ、耐えきれない、かーえろっと。
帰るよ、ほんとに。
もう、帰っちゃうよ?
「分かったよ、止めるよ、活動弁士ごっこ。てか、そいつ、部活の後輩だからさ、関係なくないんだよね、さっさと失せろって言いたいのは、俺の方だっつうの」
本当、最近のガキって可愛げがないし、ユーモアもない。比斗志を放り投げるように放すと、此方をざらざらしたまなざしで、いやな感じで凝視している。なんだその面、上等だ、あ?
そこへ、
トテトテトテ
って感じで一匹の子犬がリードを引きずりながら走ってきて、比斗志の横にぴたっと座る。「俺が来たから大丈夫」と言わんばかりの顔で、一声、
「わん」と吠えた。
「また、出た」
と、二人は走り去る。
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内容に関するアピール
せっかくSFなんだから変なもんと変なもんの会話を書こうと思って、まず、地の文と会話文の会話を書こうと思った。なんだかよく分からなかった。
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