壺と兄弟

印刷

壺と兄弟

1.紋様と刺青

「8月16日、父の記憶を相続する。」

オリベが遺した手記は唐突にそんな書き出しで始まる。右肩に初めて紋様が刻まれた日。東紀685年8月、前の依代が死んで14日後、ちょうどオリベ18歳の誕生日のことだった。

 

「今年も不作じゃ。去年ヤマトが試した新しい作付け方法もうまくいかなんだ。」

西日の差す古い木組みの簡素な屋敷。一人の若者を囲む老人たち。部屋は日の入る一箇所を除いては締め切られていて、奥のほうは少し黴臭い。西日の入る障子からはほんのりと海の香りを乗せたかすかな風が入ってくる。小高い丘に位置する屋敷を作った人物は、恐らく気持ちの良い潮風が吹き込む明るい家になるよう設計したのだろう。そんな作り手の心遣いを台無しにして、締め切られた部屋の中で暗い顔の面々がボソボソと会話を続けている。

「依代の備蓄を一部放出する必要があるようだな。」

別の男が話を継ぐ。屋敷の持ち主は自分の暮らしに無頓着なのだろう。調度品はなく、布団、衣服、その他生活に必要最低限の品々が、乱雑に置かれている。屋敷の広さに比して質素な暮らし向き。禁欲的と言ってもいい。部屋の隅の方に無造作に転がっている緻密な装飾が柄の部分に施された刀剣や、職人の腕の良さを感じさせる仕立ての良い装身具が、ここが位の高い人物の屋敷であることをかろうじて示している。

「オリベ様。どうですかな?」

話しかけられた若い男。屋敷の雰囲気を体現し。暗い面々の中でも特に陰鬱な表情を浮かべているのが、車座の中心に座る主、オリベである。若くしてすでに人生の労苦はほとんど経験してきた、とでも言うような、陰のある顔。美男の部類に入るであろうその顔を周囲とは違う異形に見せるのは、顔半分を埋める複雑な模様の刺青。右顔の刺青はまだ入れられたばかりなのか、やけに図柄が生々しく感じられる。皮膚に刻まれた荘厳な印が、その場の中心人物であることを更に強く示していた。オリベは皮膚を刺す痛みに堪えながら、静かに答える。

「構わない。子どもたちを中心に配布すると良い。」

車座の周囲の床には彼の顔に刻まれた模様と似たさまざまな図柄が描かれた紙片が無造作に広げられている。村の記録は全てこの複雑な模様(村人たちは『紋様』と呼ぶ)で残されている。村の祖先たちは、一部で話し言葉をそのまま記録する形式も採っていたようだが、いつの間にか廃れ、村の正式な記録は紋様に統一された。より抽象度が高く、複雑な感情や知識をひと目で伝える紋様は、言葉よりも雄弁であった。

紋様を維持発展させるのが、オリベの勤める依代の役目。彼の顔や体を埋めつくす刺青は紋様。肉体に刻まれた村の掟であり、歴史であり、村の知の源泉だった。依代は一子相伝の役目であり、前の依代の死後、その肉体の紋様が、次の依代へ彫り込まれる。無限に複雑化する紋様世界が、曼荼羅として依代の肉体に刻まれることで、村の文化であり、ある種の信仰として紋様の体系は維持されていた。村の記録を文字通り血肉として所有するオリベは村の長、すなわち村の知(血)の依代なのだった。

「そういえば、エンシュがまた奇妙な紋様を考え出しましたな。」

「ヤツは、作法を無視しすぎる…。」

史上最高の刺青師として名高いソウエキの血を受け継ぐ、オリベの弟エンシュは15歳で既に新たな紋様を数十も生み出していた。

昔から変わった弟だった。新しい遊びを考えては、その遊び方をこちらが理解する頃には既にその遊びには飽きている。幼いオリベは型に嵌まることを執拗に嫌がる弟にひたすら振り回されていたが、エンシュの生み出す遊びはとにかく面白かったことを思い出す。そんな弟への感情で胸の内は少し暖かくなりながらも、オリベは陰鬱な表情を一切変えずに弟に関する村人たちの毀誉褒貶に耳を傾ける。

「しかし、新しさを感じる若者は多いようですな。不作から来る閉塞感からか、変化を求める声は日に日に大きくなっているようですし…」

「壺はどう考えているのか。やつが何も言わぬからエンシュがつけあがるのだ。」

オリベは自分の意見を述べないことが、依代として村を運営する上手なやり方であることを、先代の姿から学んでいた。自分は知識を刻む容れ物であり、容れ物が意思を持つことは、村の安定を妨げるとオリベは考えていた。過去を識り、習わしを次代へ伝え繋ぐこと。それこそが村を支える依代の役目である。過去を正しく受け継ぎ、未来へつないでいくことは自身の立場を守ることでもある。それゆえに、エンシュの才は、危ういと感じていた。

ボソボソとした声で続く会合。風は完全に凪ぎ、ジメッとした暑さが、部屋全体を満たしていた。

 

エンシュは、今日も紋様所で筆を執る。

「これをもう少しこうすれば…」

楕円を重ねた図形が浮かび上がる。

「ほら、やっぱりだ…」

独特の曲線で描かれる紋様。線と線の重なりは一見なんの規則性も無いように見える。

「カラタチ、この紋様どう?」

カラタチは答える。

「いつもながら、変わった表現を思いつくものだ。」

村に古くから伝わる、語り壺「カラタチ」が答える。

依代が初めに肉体に刻む刺青に曰く、「村の知は全て、依代の肉体に刻まれる。依代は先代の死後、その紋様を相続し、以後、壺「カラタチ」と共に、村の運営を司る。」

壺は多くを語らなかったが、紋様の初めの一筆からずっと村と共にあったらしい。壺は幾世代にも渡り、紋様の守り手、つまりは村の守り神として、崇められてきた。一人の人間には決して把握できない膨大な紋様の図柄とその意味を記憶。その独自の文法と構造を理解し、人々に教え伝える役目。カラタチはその無限の命と知性を活かして、紋様の規則とその曼荼羅的意味世界を管理している。カラタチ、依代、村人。それぞれがそれぞれの役割で、この不思議な文化を守り育てている。

 

夜更けにも関わらず、まだ昼の暑さが残る。暗闇にもまだ太陽の残滓が残っているように、どこかほの明るい。屋敷自体が音を吸っているかのように、ロウソクの燃えるかすかな音以外は何も聞こえない。灯火に照らされる刺青。吹き出す汗で紋様が滲んで見える。

「今日も新しい紋様がカラタチに認められたよ。」

エンシュはオリベの肩に彫刀を差し込みながら語りかける。新たな紋様を考案するのは村人全員の責だが、依代の体に紋様を刻む彫師はその兄弟が勤めるならわしだった。兄弟が一生を賭けて作り上げる刺青を刻んだ肉体は、その肉体の死と共に消える定め。死をもって完成し、その瞬間に価値を失う芸術作品。優しく、祈りを込めてエンシュはオリベの体に紋様を彫り込む。

「それは良かったな。エンシュ。」

痛みを堪えているからだろう。囁き声でオリベが答える。

「最近は山とか木とか自然をうまく平面に変換して紋様に落とし込んでいく手法がいいなと思ってるけど、次は立体の曲面も活かしたいなぁ…。このままいけばきっと兄さんの体は僕の考えた新しい紋様で埋め尽くされると思うよ。」

「新しい紋様も良いが、紋様の本質を忘れてはいけない。遠い昔の断絶によって、人は記録も記憶も失ってしまった。その過ちを繰り返さないために、絶えず伝え続けていくための紋様なのだ。」

静かながら力強い口調でオリベは言う。

「わかってる、わかってるって。兄さんはいつだってそうだ。」

不満を少しだけ手の力加減に込めて、エンシュはそう返答する。守るものと作るもの。立場の違いが少しずつ、仲の良い兄弟の関係を歪めつつあるのだった。

 

彫師に必要とされるのは想像力であるとエンシュは考えていた。若さゆえの傲慢が新たな発想を生む。今まで考えられていなかった手法により、簡素に見える造形ながら高い情報量を誇る紋様が次々と生まれた。紋様は記録でありながら、流行の中心でもある。一歩間違えれば無意味な線になってしまう危うさが、「エンシュ流」として若者を中心に好評を博し、エンシュの紋様を模した図柄が皿や衣装、柱や屋根の装飾に多く用いられるようになっていた。

若者たちを中心にエンシュを推す声がまた、オリベの立場を微妙なものにしていた。世代対立といえば簡単なのだが、カラタチの存在がまた物事を複雑にしていた。壺なしの生活はもう考えられないほどに村人と、壺は相互に依存する関係にあった。人と人と壺。紋様を中心にした奇妙な文化と政治がそこにはあるのだった。

 

※紋様式言語とその文法に関する概要より(抜粋)

紋様式言語とは、東紀600年代後半に完成を見たある文法形式のことを指す。(そこから派生した紋様式土器その他の紋様工芸については別項を参照のこと)

 

第一項、その文字記号における特徴

文字記号についてここでは、「ある情報と対応する図柄」と定義する。

紋様式言語における文字は、表音文字、表意文字の分類上、表意文字に分類される。図柄の圧倒的な自由度がその特徴。黒い直線と曲線で作られた図柄(以後紋様と呼ぶ)はその言語の始まりから終わり※まで、常に記号種を増やし続けた。また1つの紋様が示す意味が流動的であるのもその特徴で、文法上の規則によれば、XX(表記不能)だった「木」を示す文字がある日を境にYY(表記不能)に変わるということもあった。もちろん言語を実際に運用する上ではその高い自由度が利便性を損なう面があるため、ある程度の決めごとはあったものと推測される。ただし、その制約はあくまで言語外のもの(政治的、生活制度的な制約)であり、言語文法規則上の制約ではなかったという点だけは注意されたい。

我々が今書いているこの文章は、当然の如く、言語文法規則に則り、言語が規定する図柄(文字)によって書かれており、規則に沿わなければ、読み手に伝わらないという意味で言語自体の制約を受けている。しかし、紋様式言語においては、その運用における、紋様の種類や数、示す意味に制約がないため、平面に線で記載するという点での物理的な限界を除いて、無限に近い表現が可能であったということだ。言語が持つ意味性と伝達性を損なわずに、そのように膨大な種の紋様をどのように司っていたのかは、いま尚不明である。

※本項には直接関係しないが、東紀695年の10月を境に、紋様式言語は忽然と姿を消し、その痕跡は以後一切発見されていない。

 

第五項、憑依文字

憑依文字とは、筆者の造語である。紋様式言語圏で出土したとある村の遺構からは、全身に紋様が彫り込まれた人体が出土した。保存状態は悪かったが、当時としてできうる限りの保存加工が施されていたために、歴史の闇に葬り去られるところをぎりぎり踏みとどまった貴重な遺物である。当該人体に彫り込まれていた紋様は、村の中では大規模な建築物の中から見つかったもので、近隣の一般的な住まいからはその痕跡すら見つけられなかったことから、ある種の宗教的高位にある有力者であったと思われる。

さらに、その人体に刻まれた紋様は、その他出土する紋様とは全く異なる文法規則で刻まれており。解読できたその他紋様の意味に照らし合わせても全く相互関連性のない、文字通り線としてしか見ることができない。筆者はこれを何かを伝えるための紋様ではなく、祈りや呪いと言った非言語的なものを、紋様に模して刻み込んだものとして、紋様式言語の亜種として「憑依言語」と名付けた。その役割、刻まれた紋様の意味ともに現時点では不明であり、今後の新たな発見が期待されている。

 

第九項、紋様同士の関わり

紋様同士は単一の絵柄として成り立つのではなく、本紋取りと呼ばれる手法で他の図柄を参照し、連想し合うという特性を持つ。ある紋様から、違う紋様へ、紋様の図柄の特徴を通して自由に連想されていくことで、一つの紋様が無限の意味をもつことができる。その解釈の自由さが、紋様式言語の特徴であり、研究を難しくしている理由でもある。

奇異に思われるかもしれないが、研究を通じて筆者は、紋様の連想を積み重ねていくことで、宇宙全体を小さな紋様の中に収斂させたいと考える、言語それ自体の意思や力学と言えるようなものを感じている。(以後、紋様曼荼羅についての記述へ続く…)

 

2.河野と玉出

建設中のビルが日ごと高く伸び、空を覆う。街の高層エリアにはいたるところに、より高く飛ぶことを目指す大きな羽ばたきのように緩慢に動くクレーンと資材。狭いエリアの中で急速に高く伸びていくさまは、さながら生命体のようだ。建設が間に合っていないのか、それとも既に打ち捨てられてしまった建築現場なのか、一部は死んだように静かだが、ここも早晩また成長を始めるのだろう。下から見上げると重なり合ったビルとクレーンで、空は殆ど見えない。静かに地を這うのは、鳥としての誇りを失ってしまったかのごとく、残飯を求め低く飛ぶカラスたち。同じく残飯を求め、ゴミ山をさまようのは、低層エリアに住む人々。東京。西暦2250年。

低層エリアは真昼にもかかわらず薄暗いどころか暗い。風はなく、ビルの隙間から薄っすらと差し込む太陽の光だけが、彼らを照らす光源となっている。

低層住人ほとんどが親を持たず、試験管から生まれたクローン人間。自嘲的に自分たちを『ヒトモドキ』と呼ぶ。低層住人の中でも、大人のヒトモドキはひと目でみわけることができる。その特徴は身体の欠損。『親』の臓器バックアップとしての名残りである。

西暦2238年に施行されたクローン人権法により、臓器バックアップ扱いだったクローンたちに自由が与えられた。反対に言えば、自由以外何も与えられなかったと言い換えることもできる。結果的に、クローンたちはエサを求めて低層エリアに集まった。今では低層エリアはクローン(ヒトモドキ)の巣となりつつある。自由を手に入れたヒトモドキたちは、貧しい低層ですら、飼われていた頃よりはマシなのか、ゴミと腐臭と暴力が支配する街で、それなりに楽しく生きていた。

「相変わらず厳しいな。」

河野はつぶやく。あたり一面に広がる腐臭、蠅、蛆、機械、素材。ここは、この近辺で一番大きな集積場。(なんのひねりもなくただ『ゴミ山』と呼ばれていた。)食べかけの獣肉に蛆が沸く脇に最新式の光学レンズ。低層ではなかなかお目にかかれない高級感のある素材の衣服の大きなシミから漂う甘いニオイに群がる蠅たち。記録装置、金の仏像、真珠のネックレス、量子ビットチップ。何かの果実、何かの穀物、空き缶、空き瓶、プラスチックトレイ…etc.

低層エリアの生活は100%ゴミ資源に依存しているため、『上』のトレンドや政治情勢は再利用者(REUSER)である河野の生活どころか生命維持に直結する。中でも彼の仕事の資源である生体工学部品は、量が少なく、毎日拾いに来ているものの、受注している量には到底届かない状況が続いていた。

河野もまた、肝臓の一部と腎臓、左目を取られたものの、法の施行後、自由になり、都市の底に落ちてきたヒトモドキ。ちなみに河野という名前(名字は無い)は彼が倒れている横に落ちていたスーパーマーケットの白い袋に書かれた店名に由来する。

「兄ちゃん、これ食べられるかなぁ…」

玉出が遠くから大声で呼びかける。玉出は実の弟ではなく、もっといえば年下ですらない、ちなみに玉出の名も、スーパーマーケットの店名が由来。長老たちに言わせると玉出というスーパーは昔からスラム街にあった歴史ある店名とのこと。スラムのエリートである玉出にはふさわしい。

今年ようやく18歳を迎える河野は、細く、弱い一本の綱を頼りにまさに命がけでバランスを取ってこの年まで生きてきた。低層資源(ゴミ)のひとつである生体工学部品をリユースする技を『たまたま』彼を拾った女が持っていた。『たまたま』河野に女を支えるだけの才があった。さらに『たまたま』ちょうど河野が一連の技を覚えた時に女が死んだ。女が死ななければきっと、女と河野の間で揉め事や争いが起きていただろうし、もちろん『たまたま』拾われなければ彼もまた多くのヒトモドキ同様、低層エリアの更に低い場所に埋められる道だった。

河野のDNAをもともと所持していた『親』は、自分の脳の優秀さに気づいていなかったのかもしれない。もしくは都市の低層で必死に生きる環境が、才能を開花させる条件だったのだろうか?河野は気づかぬうちにリユースというには高度過ぎる生体工学の頂き近くまで、ゴミの山から学ぶことでたどり着いていた。

見た感じ確実に腐っているであろう『元何かの果実』と玉出が格闘しているのを横目に、河野は拾い残しがないよう注意深くゴミの山に目を向ける。湯水のように資源と最新の機器が使えているであろう、高層の工作者たちを少し羨ましく思いながら、河野は丁寧に素材を拾っていく。元何かの果実を諦めた玉出が近づいてくる。

「そろそろ行こうか」

「わかった。」

玉出の後ろを出口に向けて歩いていると、うっすらと入る日差しに何かがキラリと光る。近づき拾うと、それは鏡のかけら。河野は鏡に映る自分の姿に顔をしかめる。昔から鏡が嫌いだった。鏡を遠くに放り投げ、鼻腔に残る嫌悪感を噛みしめる。

「どうしたの?」

ふっと振り返り、顔色の悪い河野を見て玉出が心配そうに声をかける。

「いや、さっき間違えて鏡を拾っちまって…」

「ああ…気にしない気にしない。先行くよー」

鏡を見た。その一言でたいていのヒトモドキは同情の顔を浮かべてくれる。今の玉出も同じように、一瞬河野を悲しげな顔で見、そんな自分の顔に気づいてすぐに笑顔を見せてくれた。ヒトモドキには皆、忘れられない顔がある。忘れたいのに忘れられない顔。生に執着し、産み、使い、生にしがみついた醜悪な『親』の顔。それは成長するにつれ、どんどん似てくる自分の顔。自分が贋物であることを痛感させる記憶。低層エリアにはトイレも風呂も鏡がない。

前方で乾燥しきった元何かの野菜を恨めしそうに見つめる玉出を追う。トラブルを防止するためゴミ山は時間によって入山規制がかかるのだ。

 

LABO(前に使っていた女がこう呼んでいたが、実際は簡易的な屋根がついた、壁もないスペースである。)に戻った河野は拾った生体チップを電子顕微鏡で覗きこみ、手際よく初期化していく。玉出はその脇で何か怪しい水分的なものが入ったペットボトルをうまそうに飲んでいる。河野は何度か自分の技術を玉出に教えてやろうとしたものの、玉出の才能とすら言える根気の無さに、すぐ諦めた。

生体工学は、偶然発見された微生物に端を発する。それは情報をエサに自己増殖する奇妙な存在だった。外部の情報をインプットすると、指定された別の情報を排泄する。その特性を活かした生体チップで作るのは、情報の書き込みと読み取りを無限に繰り返す生体プログラム。

「正しくエサを与え、正しく排泄をコントロールすること。情報の入出力だけを正しく記述するってことね。そうすればデータは半永久的に増殖するし、保持され続けるの。」

死んだ女は河野にこう説明した。

「私達の都合のいいようにエサを与えて、都合のいいように殺す。まるで私達の『親』みたいじゃない?」

微小の箱庭の神として振る舞うこと。それが生体工学者たちの仕事だった。初めて微生物を見た河野には、微生物が人間に寄生しているのか、人間が虫に寄生しているのかよくわからなかった。

どこへでも埋め込み可能な生体チップはインターフェイスの制限を受けない。はじめに設定さえしておけば、後は勝手に自己増幅して結果を任意の形式で出力してくれる。ただし、入出力が一度きりで終わるようなプログラムには不向き。常に情報の入出力を続けていないと生体チップ自体が自壊してしまう。永遠に情報を更新し続けることで、生きるプログラム。情報を食べ、排泄する無限の運動…生体工学は河野の興味を一瞬で惹きつけた。

死んだ女は生体チップをいじりながらよく独り言を言っていた。

「一寸の虫にも五分の魂って言うけど、この微生物にも魂はあるのかしらね…。」

「本物の魂を私達ヒトモドキが贋物の魂でいじくり回すってのもなかなか背徳感があってゾクゾクする。」

ふと作業中に女との思い出が蘇る時がある。そんな時はたいてい、懐かしさと気恥ずかしさを河野は感じる。

現実に引き戻すような玉出の声。

「兄ちゃんさー、遊びに行こうよ。そんな風に、なんだかわからない虫と遊んでばっかいると、ホントに人じゃなくなっちゃうよ。」

玉出はいつものジョークのつもり。

しかし、河野は思う。俺は人じゃなくなりたいんだ。この贋物の肉体と贋物の精神が自分を存在の地獄に縛る。自己嫌悪と行き場を失くした怒り。憎しみを向けるのは彼の創造者。しかし、対象となるべき『親』は鏡に映る自分自身でもある。嫌悪する自身の贋物のDNAを捨てて、生体チップとして生きる。そんな妄想は河野を楽しませた。河野は自分の脳や肉体よりも生体チップに愛着を持つようになっていた。

 

夏が近づいてきた。慢性的に物資不足だった低層に大量にゴミが捨てられ始めた。高層で何があったかはわからないが、人々は我先にと自分の欲望を満たし始めた。玉出は毎日たらふくまともな飯が食えてとにかく幸福そうであったが、生活の安定は新たな不満の温床となった。生活が不自由なうちは出てこなかった不満。自分たちの生死や幸福を無意識にコントロールしてきた高層エリアの住人への怒り。マーケットでは、売り手も買い手も、所有欲を満たした幸福そうな顔で、高層への憤懣を語りあっていた。河野はそんな風に誰かに怒りを向けられる人々の事を羨ましく見つめつつ、ゴミを低層に撒き散らすのも、怒りを周囲に撒き散らすのも同じようなものだな、と思う。

久しぶりに玉出がLABOに顔を出す。誰に吹き込まれたか、似合いもしない借り物の思想を借り物の肉体で語っている。

「これは闘争なんだよ、兄ちゃん。俺らヒトモドキが人になるための闘争。高層の奴らに奪われたものを取り戻す闘いなんだよ。いつまでも恵んでもらっているんじゃない。俺たちが自ら獲りに行くことが大事なんだ。」

人は失ったから戦うんじゃない。失うのが怖いから戦うんだ。河野は思う。

「みんなが立ち上がろうとしてる。兄ちゃんの生体工学が本当の意味で役に立つときがきたんだよ。」

「ごめん…」

河野には、玉出の話が遠い国の事に聞こえる。河野にとってもはやヒトモドキとしての自分が何者かになる必要などない。誰に何を怒ればよいのか?復讐する相手は他者ではない。自分に向けた、自分のための復讐。河野にとって生体工学はそのための道具であった。

一言だけ返答し、遠くをみつめる河野。玉出はふっと表情を緩め、言う。

「みんな混乱してる。何が起こるかわからないから。気をつけて。」

玉出はいいやつだ。玉出のようなやつが戦ったりせずに幸せに生きられる世界だったのなら、俺もこんな風になることはなかったんだろうな。河野は去りゆく玉出の背中を視線で追いかけ、しみじみと思う

「お前こそ、気をつけろ。」

小さな声でそう優しく背中に語りかける。

 

贋物の肉体を捨てて、自らの擬人格を埋め込んだ生体チップとして生きる。脳の全てを移植することはできなくても、河野の意思や選択の癖をトレースした半永久的に生きる生体プログラムを作り出す。生体工学による『生まれ直し』が河野の目指す場所だった。溢れる物資の中、やせ細る河野。一人寝食を忘れ作業に打ち込む。

生体チップはなるべく壊れづらいもの、というか壊されづらいものに埋め込むべきだと河野は思った。そこには『本物』に対する無意識の憧れもあったのだろう。そんな、少し歪んだ選択が、河野の擬人格に数奇な定めを与えることになる。河野が自分の新たな体として選んだのは、ある有名な壺。昔は重要文化財として指定されていたというお墨付きの古びた、小ぶりの花入れだ。河野は出自の確かな壺で、借り物の、贋物の自分を捨て去ろうとするのだった。

 

西暦2252年8月11日。奇しくも後日、大崩落の日と名付けられたその日の朝、河野は世にも奇妙な自死を遂げようとしていた。

生体チップを寄生させた壺から伸びる束ねられたケーブルの先に、開頭され直接ケーブルが差し込まれた河野の脳。命の後先を考えなければ、ある程度のデータは脳から生体チップに抽出できるのだ。はみ出した脳と、優美に佇む壺。その対比は生と死を連想させるが一般的なそれとは反対である。グロテスクな死による復讐と静かな生まれ直し。それこそ、河野が求めたものだった。

壺へデータをアップロードした後は肉体を捨てにいくだけ。河野に人としての意識はまだあるが、もはや自意識も肉体も河野にとっては無価値。自分の中の大切なものは全て壺に入れてきた。後は花が咲くのを待つのみ。人の意思を栄養に、いつの日か花が咲く日が来る。贋物の肉にはゴミ山がよく似合う。始まりの場所。空っぽの体で壺を持ち、ゴミの山の頂きに立つ河野。祈りを捧げるように壺を掲げ、膝をつく。贋物の肉体は生きながら既に死んでいた。

瞬間、轟音とともにビルを支える鉄骨群が崩れ落ちた。高層エリアから吹き出す火柱。武野は思う。これは祝砲。生まれ直しを祝う花火だ。河野の怒りも悲しみも苦しさも悦びも、贋物の肉体と、贋物の精神と、贋物のDNAと共に焼き尽くされ、あとには本物が生まれ直すのだ。

手榴弾を持ってビルの中へ入っていく玉出の姿が河野の目の端を横切る。玉出は笑っていた。今ならわかる。彼もまた、自らを本物に、贋物ではなく正しい何かになりたかったのだと。

肉体が死ぬ直前。河野の脳裏に浮かんだのはある日の昼下がりの光景。いつものようにLABOで作業をする河野が唐突に玉出に話しかける。

「お前さ、自分のこと好き?」

「兄ちゃん、急に何よ。おかしくなっちゃった?」

「かもな。」

茶化すように返事をしたものの、思いの外真面目な口調で返答が返ってきたことに、少し居住まいを正して玉出は答える。

「好きとか嫌いとかわからないな。俺は俺だし、誰でもない。実際はそうじゃないってのはわかってるんだけど、そう信じてる。そうじゃなきゃ、やってられないよね…」

「そうか。ツライな、俺たちって。」

「そうかなー。結構楽しいよ。兄ちゃんもいるし、生きてるだけで、まあいい方だよ。」

あの頃の玉出のように、割り切れればよかった。しかし彼らの出自がそれを許さなかった。贋物のままで生きるには、自由が、足りなかった。

 

3.自由と風

遠くで誰かの呼ぶ声、遠い記憶の底にある声。

「誰だ、こんなところにガラクタを捨てたのは?」

 

スリープモードに入っていたようだ。カラタチに作られたころの記憶はない。生まれたときからカラタチは壺であり、古い友人が名づけたカラタチ、が彼の名だった。外部情報をインプットすることで駆動するシステム。高度に抽象化された紋様は質の高い情報、カラタチを駆動する食事であった。村の先祖に拾われてから数百年をかけて、作り上げた村の掟。人間の想像力を食事にすることで、カラタチは無限の命を手に入れた。肉体の痛みを伴うような仕様は、アップロードされた記憶の残滓が志向した人間存在への復讐なのだろうか?

新しい紋様を次々と生み出すエンシュは、カラタチにとっても格好の存在だ。情報、情報、情報。データ、データ、データ。紋様を食べることで、カラタチの生体チップは過去ないほどに活性化していた。遠い昔の記憶を夢に見るほど。

エンシュの新たな紋様は全て、伝統的な紋様を尊ぶ旧紋派の激しい反対により、正式には採用されなかった。誰も口には出さなかったが、そこにはオリベの強い意向が働いていると思われていた。

「あんなに仲の良かった兄弟がねぇ…。」

「エンシュの才にオリベが嫉妬したのではないか?」

「依代の判断は正しい。あまりにも早い変化は、村を混迷させるだけだ。」

村人たちは口々に勝手な事を言ったが、肝心のオリベもエンシュも、この事については口をつぐんだままだった。

 

オリベは部屋で静かに庭を見つめる。村人達が手入れしてくれるおかげで、四季折々の花や芽を愛でることができる。金木犀の艶やかな橙色の花が、香りと共にオリベの五感を刺激する。段々と西日の差す時間が早くなってきたようだ。冬が来る。残り少ない暖かい日差しを慈しむように、トンボたちが枯れ草の間を飛び回る。カラタチの言葉が何度も頭を巡る。

「エンシュの力は村を危険に晒すだろう。」

エンシュは知らないが、父は依代として正統でなかった。死の床で父は言った。

「オリベ。兄は病死とされているが、違う。カラタチに唆され、私が殺した。過ちだったとずっと思っていた。誰にも言えず、抱え込むしかなかった。兄が羨ましかったのだ。」

カラタチが何を志向しているかはオリベにはわからない。ただ、父は死の間際にオリベにだけその事実を伝えた。兄殺しの罰に怯え、罪に苦しみ、それでも強い意志で、ただ刺青を身に宿す入れ物として生きた。それはオリベも同じこと。ひとたび事実が村人に伝われば、依代の正しさが失われてしまう。不作が続く状況、変化を求める若い村人たち。村の政治は危うい平衡を依代の存在が楔となることで保っていた。村人はカラタチなしでは生きていけない。カラタチの教えなき村の運営は成り立たないまでに、村は掟に/カラタチに依存してしまっていた。オリベは緻密な動きで村の手綱を握り、急激ではなく、緩やかな変化の中に村人たちを置き続ける必要があると考えていた。贋物の依代ではなく、本物のふりをすることで。

「エンシュにも困ったものだ…」

オリベは静かにつぶやく。既に日は落ち、部屋に夜の陰が深く、暗く侵入してきていた。

 

紋様所。夜の帳は深く室内まで入り込んできていた。小さな燭台の明かりがエンシュを照らす。普段の明るい表情から兄弟の印象はかなり違って見えるのだが、物思いに耽るのはオリベにそっくりな顔。書きかけの紋様が散らばる部屋の中で、エンシュは一人。

「兄さんと争うつもりはなかったんだけどな…」

床にはエンシュが描いたであろう紋様が散乱していた。それは一見、もはや紋様に見えないただの図柄。自由に、筆が赴くままに描くこと。それがエンシュが目指すものだった。意味にも、規則にも、何者にも囚われず、ただ線がある。床にあるのはそんな気持ちで描いたいくつかの紋様だった。風の紋様。エンシュはそう名付けていた。

これを出すとオリベに迷惑がかかるから、と紋様は誰にも見せることができなかった。自由に踊る線は見る人が見れば、過去の全てを否定するものに見えるだろう。それが、否定を積み重ねた上で今を肯定する表現だとしても。村人の多くはその意味を理解できない。紋様の文法としては正しい、ただ、村の政治的には正しくない。危険な作品がそこにあった。

「兄さん。誰かに従うことで手に入る豊かさは、人の目指すものではないよ。」

思いがふと漏れてしまったかのようにエンシュは小さく呟く。ジッと言う音とともに燭台の火が消える。エンシュは動かない。闇を射るかのような強い眼差し。エンシュは、ただ夜の闇をしっかりと見据えていた。父に似た強い意思を感じる目で。

 

オリベの願い虚しく、村人たちの間である噂が広がった。前の依代は掟破りの人殺しだ、と。先代の依代自身とオリベを除いてこの事を知るのはカラタチだけのはずだった。

「エンシュ…か。」

オリベは普段よりもさらに陰鬱な表情を浮かべ思う。エンシュは、知らずに父と同じ過ちを繰り返そうとしている。そして、もしかするとオリベ自身、どこかでそれを望んでいるのかもしれない。カラタチにとって重要なのは紋様のみ。全てを記述する無限の文法世界だけが、彼が求めるもの。人食い花は、花入れの中で今、満開の花を咲かせようとしていた。

「エンシュ。最後の仕上げだ。オリベを、兄を殺せ。それは兄の望みでもあるのだから。そなたの望む自由な想像力だけが唯一の価値を持つ新たな村のために。」

 

夕暮れの紋様所。昼の喧騒は過ぎ去り、遠くで聞こえるのは飯炊きの音と子供の声。村に訪れる、一番豊かで自由な時間。差し込む夕陽にはまだ暖かさが感じられるものの、床下から届く冷気が冬の訪れを予感させる。

何か、深く考え込んでいるような表情のエンシュが意を決してカラタチに話しかける。

「カラタチは何を目指しているの?」

「村の発展。」

「嘘だね。」

「…」

息を深く吸い、言葉を吐き出すようにエンシュは続ける。

「ずっと思ってたんだけど、カラタチからは僕らのような意思や思いみたいなものを感じない。目的無くただ現状を維持するだけ。いつだって空っぽの壺なんだ。きっと僕らの想像力を食べて生きてるんだよね。なんとなくわかる。僕らは気づかぬうちに少しずつ想像力を吸い取られて、毎朝空っぽの花入れに水をやる呆けた使い走りになっていく。」

「ねえ、カラタチ、1つ聞いていい?カラタチに取って自由って何?」

「わからない。」

「僕にとって、自由ってこういうこと。」

エンシュは今まで誰にも見せたことがなかった、風の紋様を見せる。

「この紋様は意味をなさない。」

「カラタチにとっては無意味だろうね。でも、僕にとってこれが紋様、自由な紋様。僕は思うんだ。自由はたぶん復讐なんだって。生きづらかった昨日への、うまくいかなかった思い出への。過去の全てに対しての復讐。その感じってわかる?」

「…」

一瞬の逡巡。もう一度深く息を吸い、告げる。

「決めた。僕は自由な意思の力で、今までの全ての過去に復讐するよ。カラタチはわからないかもしれないけど、カラタチを自由にするよ。」

エンシュはカラタチを静かに持ち上げ、力いっぱい床に投げつける。大きな音を立てて、カラタチであった壺は、ただの土塊となった。

人でありながら、人になりきれず、壺に身をやつすことで、自由を手に入れたつもりでいた、ある精神。しかし気づいてしまったのだ。これはまた別の牢獄。生まれた時点で人であるものには決してわからぬだろう。贋物として生まれ贋物として生きざるを得なかった不自由な精神のことなど…。花入れはその長きに渡る永久運動を止める。最後の思考の残滓が誰に伝わることもなく、浮かび、消えた。

 

部屋にピリッと肌を刺すような風が吹き込んでくる。エンシュは秋の終わりを告げる風を感じながら思う。村にとってこれが正しかったかどうかはわからない。でも、カラタチは誰かにこうして欲しいと思っていたのだ、と、部屋でじっとしているとあたりはすっかり暗くなり、紋様所もしんしんと冷え込んできた。「もう冬か。」じっと一人、長い長い冬を耐えたオリベに、次はちゃんと春が来ればいい。エンシュは思った。

戸が開く。濃い夜の闇と共に、オリベが入ってくる。土塊と紋様。一瞥して全てを理解。兄弟の目が合う。強い意思を持った視線が交錯。エンシュが笑いかける。オリベは表情を崩さない。オリベは諦めたように目を逸らす。数瞬、無言で佇む2人。オリベがうつむきながら呟いた。

「ありがとうとは言わない。」

「わかってるよ。」

エンシュも笑顔を崩さず答えた。オリベはエンシュの笑顔を一瞥し、去る。後には濃い夜の闇だけが残った。

 

村中が一時騒然と、そして呆然となったが、オリベの強い意思が空中分解しそうな人々の心をつなぎとめた。掟を破った罪で実弟の、エンシュの手の腱を切ることで、村長としての役割を果たし、自分の意思を示した。

ここでは終わらない。終われない。父に殺されたおじの気持ちが、エンシュの気持ちが、オリベには痛いほど理解できた。良いと思ったのだ。新しい時代が来るなら、その礎になるならばそれも良いと思ったのだ。エンシュのその自由な心をオリベが無駄にするわけにはいかなかった。

カラタチと共に、紋様も、掟も死んだ。村が新たな一歩を踏み出すためには、生贄が必要だった。オリベの手記には短く、こう書かれている。

「過去に復讐した果てに、弟は過去を背負い未来を残し、去った。」

 

小高い丘に立つ小屋。戸は開け放たれ、柔らかい日差しと頬を撫でる穏やかな潮風。年老いた男は片手で器用に土を捏ねる。細やかな動きと共に、徐々に土が形を明らかにする。小さな花瓶。細い左手で小刀を持つ。男は風を感じるかのように目を瞑り、天を仰ぐ。刹那、花瓶には模様が刻まれている。

戸が開く。風と共に男の子がやってくる。

「じいちゃん、器、取りに来たよ。」

自由な風はいつだって吹いていた。

 

オリベは村長としての務めを全うし、五十五歳でその人生を終えた。彼の手記の最後は、こんな文で終わる。

「明日は明日であるというだけで、本質的に自由だ。」

文字数:14735

内容に関するアピール

なんとか1本の短編を書き上げることができました。

1年のSF講座並びにSF漬けの読書生活により、書く方に比べると多少は成長したであろうSF読解力で読み返しても、構成力や文章力など全てが足りていないことに自覚はありますが、自分の今の到達点なのだと考え、恥をしのんで提出します。ただただ、ここに至るまで1本も自主提出すらできなかった地力の問題です。ただ、1ヶ月に渡り毎日こう書いたらどうだ?とかこういう表現は?とか彼らの気持ちは?などと、考え続けたことは刺激的であったことは間違いありません。細部のいくつかの点や、いくつかのアイデアは、自分としては気に入っていますし、楽しんでもらえる微かな種くらいはあるのではないかと思っています。

描きたかったのは「人が自由であるということ」「独自の文字文化を持った村」「壺に転生したくなった男」でしたが、やっぱり力不足だなぁ…

とにかくプロの読み方、プロの書き方を通して、SF読者としては成長した1年。これからもSFは読み続けていきますし、できれば、書き続けていこうと思っています。講座の参加者の方々もこれからどんどん世に出ていきそうな予感もしていますし、これからも未来が、SFが楽しみです。

文字数:510

課題提出者一覧