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梗 概

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計算科学の幾何級数的な上昇により、人間の労働はそのほとんどがAIにより代替されている世界。

エネルギー問題、環境問題を完全に克服し、太陽系内惑星のテラフォーミングにさえ着手しはじめた人類だが、魚類、鳥類はもとより、霊長類を含めたあらゆる哺乳類において繁殖可能で欠如のないクローン作製を成功させたにも関わらず、ヒトクローンの作製は失敗し続けていた。
ヒトクローンが停滞する一方で、計算資源のハードウェアは進歩を続け、仮想的に人間脳を再現するプロジェクトが実現しかけていた。再現された脳は六感に加え内臓覚等までのセンサーを備え付けたロボットに接続されたが、あらゆる入力に対して完全に沈黙した。外的な入力とは無関係に、仮想ヒト脳の一部が活性化していることに気づいた研究者は、活性部位を脳の物理配置に取り直してイメージングを行い、その活性部位が脳機能と無関係に、ある断面上に見いだされることに気づく。その断面のイメージングは、ある図像を示していた。すなわち、埋め込み画像 2であった。
研究者は埋め込み画像 2を、人間の創造主たる神の印として世界に発表した。当初はオカルトとして遇されたが、ヒトクローンの停止した細胞の中で平面上にDNAによる埋め込み画像 2の図像が構成されていることが発見され、人類はついに神の存在に立ち戻ることになった。
ある言語学者は埋め込み画像 2は「蔽いとじこめる」意をもつが、その「音」は人間には発音不可能であることを示した。埋め込み画像 2に人間が発声可能な音を当てることは禁忌とされた。
埋め込み画像 2は生殖以外での人の複製を禁じていたが、人の「改変」については禁忌は及ばなかった。人類は実験的に遺伝改変を繰り返し、多くの失敗を生み出した。
失敗作たちは秘密裏に生み出され、正義の名のもとに救い出され、失敗作のまま放置された。彼らは優れた聴覚、優れた視覚、優れた運動能力をもっていたが、人の音楽は聞こえず、可視光は不可視であり、人のように歩くことはできなかった。
埋め込み画像 3は失敗作たちの澱の中に生まれた。埋め込み画像 3は自在な音域で美しい音色の声を発することができたが、骨格の構造が人類と異なっており、言葉の発音は甚だ不完全だった。埋め込み画像 3埋め込み画像 3自身が問われて答える名であったが、誰一人としてそれを正確に反復できる者はおらず、ただ埋め込み画像 3の形が与えられた。埋め込み画像 3の形を与えたのは、人の可視領域をはるかに超えた電磁波をその眼に映し、誰とも同じ色を見ることのできない男だった。
埋め込み画像 3や男は放棄された地下都市の中に暮らしていた。埋め込み画像 3たちを気まぐれに放逐した人類は、気まぐれに都市を襲撃し、その権利を取り戻そうとした。男は人類に殺され、埋め込み画像 3は地下都市のさらに深奥へと潜っていった。埋め込み画像 3はある施設で傀儡のように有線でつながれたロボットを見つける。初めて埋め込み画像 2による人類の領域の制限を示した人形だった。埋め込み画像 3は死んだ男の面影を人形に見出し、その名を呼ぼうとした。埋め込み画像 3はかつてその名を正確に呼ぶことができたためしはないのだったが、もう関係がなかった。ロボットは埋め込み画像 3の呼ぶ「音」に応えて目を開く。人類にとって発音不可能なその音声によって、仮想的に構築された人の脳は埋め込み画像 2の軛を外したのであった。

文字数:1251

内容に関するアピール

どこかに物語の切り口を持ってきたいと思います。

文字数:23

課題提出者一覧