悪の神と善の神

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梗 概

悪の神と善の神

無神論者ばかりの日本に神が降臨した。
その神は慈愛の神ではなく天罰をくだす神だった。

始まりは唐突だった。
田所警部はある殺人事件の容疑者の男を尾行していた。決め手となる証拠がなく逮捕できない男だった。
「あのー、すみません。あなたは神様ですか?」と突然、田所は背後から声をかけられる。
田所警部が振り向くとそこには二十代と思われる若い女性が立っている。
そして田所警部は容疑者の男から目をそらしてしまう。その瞬間、落雷が発生して容疑者の男は死亡してしまう。
その日は雲ひとつない晴天だった。
このニュースは瞬く間に世界中に広がり、悪人に神の鉄槌がくだされたと大騒ぎになった。

そしてその日から世界中のあらゆる場所で様々な人々が神からの天罰を受けるようになった。
天罰の方法は、必ず晴れた日の青空からの落雷だった。
最初のころは、天罰を受ける者は何らかの罪を犯しながら罪を償わずにいる悪人ばかりだったので、
世界中のほとんどの人々は天罰をくだす神を称賛した。
しかし、時間が経過するごとに、ほんの些細なあやまちを犯しただけで、天罰をくだされる人が増えてきた。
どうやらこの神は、気まぐれに手当たり次第に、まるで遊んでいるかのようにして、
天罰をくだしまくっていると気づいた人々は恐れおののき始めた。
天罰がくだされる数日前にその前兆は現れる。天罰の日を境にして、それ以降の予定を決めることができなくなる。
記入していたスケジュール表も白紙になる。

田所警部に話しかけた女性は、あの落雷騒ぎの中、いつの間にか姿を消していた。
田所警部には中学三年生の一人娘がいる。田所の妻は八年前に病気で他界していた。
男手ひとつで育てた一人娘の真奈美に神の天罰がくだされる前兆が現れた。
今から七日後に真奈美は雷に打たれて死んでしまう。

物理学者の青木教授は愛する妻を天罰により失っていた。
できることなら、やりたい放題をしているこの悪の神を捕まえて妻の仇をとりたかった。
この神の姿を、我々人類が今いるこの次元の世界では見ることができない。
なんとかして高次元にいる神をおびき出して生け捕りにしてやる!
青木教授は研究室にこもりある方法を執念で考え出した。

青木教授は警察に赴き神を生け捕りにするから協力してくれて要求する。
警察は取り合ってくれない。しかし、娘の命を救いたい田所警部は青木に協力する。
そこへ、あのとき田所に声をかけた麻生恭子と名乗る女性が現れる。
「わたしは子供のころ、神様に命を助けられたんです。その神様が田所さんに似ているんです。
天罰をくだす神は悪の神です。善の神は必ずいます」

田所警部と青木教授と麻生恭子は、悪の神を生け捕りにすることに成功する。
そして善の神が現れる。
善の神は悪の神を戒め諭し、天罰がくだることはなくなった。

 

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