梗 概
その町
感染性の病原体ザールが、トレドの中心地マリにひろがり、町の人たちが次々にザールに感染して死んでいっている。しかしザールの感染経路、感染手段は不明である。トレド政府はザール感染のこれ以上の拡大を阻止するため、マリ地域の完全な隔離閉鎖を決定する。
マリで医師をしているレシングは、増え続ける感染者の治療に懸命にあったっていた。町の封鎖後、レシングはトレド政府から感染者を感染証明をして、それを政府に報告する仕事を要請される。町の中にいる人にとってレシングから感染証明されるをことは、町の外側にいる家族や友人との再会が二度とないことの宣告であった。そのためレシングは熱心にザール感染者の治療にあたっているが、町の人たちのレシングにたいする態度は冷たいものであり、往診による訪問も嫌われた。ザール感染者は次々に死んでいった。
マリの人達の中には、マリの隔離閉鎖を決めた政府に憤りを感じ、抵抗運動を始める人があらわれはじめる。それらは徐々に組織化されていく。はじめのうち、この抵抗運動は実際の政治に影響を与えるものにはならなかった。閉ざされた町の人達の不満が町に悪意を蔓延させていく。
このマリの町から脱出をしようとしてレシングに近づき、やがてレシングと共にザール対策に乗り出していく小説家ルクソンと人の存在証明をすることを使命だと信じている神父リストの目を通して、時間を追って町と人の変化が書かれる。
文字数:593
内容に関するアピール
意味付けできない厄災に、意味付けできないまま人は救われるのかという物語を書きたいです。
文字数:43