江戸1910

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江戸1910

SF創作講座事務局よりお知らせ(2018.7.27)

本作品は商業媒体への掲載を予定しており、現在、本サイトでの公開を中止しております。

今後の情報はこちらでご覧ください。
https://yashimayugen.com/works/

文字数:115

内容に関するアピール

 (実作を先にお読みください)
 日本の精神的鎖国は、現在まで続いている。本作の第一のポイントは、江戸の日本が、「幕府による開国成功」という歴史改変のシナリオである。映画『レッドサン』での、西洋と日本のキッチュな組み合わせに興味を引かれたこともある。そして、第二のポイントが、異世界人に対する「開国」とどう向き合ったかの思考実験である。
 本作に、幕末の有名人物は一切登場しない。幕末の人物は確かに興味深いが、むやみにもてはやす風潮があるのは、現代日本人自身の活力が失われているからだろう。ただ、小栗上野介にはひとこと言及した。
 吉田松陰や伊藤博文らは欧米にアンビヴァレントな感情を抱いていた。攘夷から開国への急速な切り替えは、戦後のアメリカ文化の急速な受容と無関係ではあるまい。それにもかかわらず日本が多文化化するのはかなり未来であろう。これも実に不思議だ。
 日本は、開国までは東アジアの「木と紙の文明」であった。本作では、江戸と武士階級を一度解体し、《ウッドパンク》の世界として再構築する。鉄の文化がお預けを食らっている状況である。
 表面的には国際化した江戸も闇を抱える。トリックスター、お騒がせ者的なヴロガー(ビデオ投稿者)が、事態を引っ掻き回したあとで、自ら予想しない役割を果たす。これが提出梗概の設定だったのだが、そこから変更した点がある。当初、語り手、いわば「カメラ」であった御木本の役割が大きくなったことである。それに伴い題も変更した。
 なお、本作と同じ世界観に基づき、Project ANIMA用のプロットを作成し、提出した。むろん、本作はこのプロットから完全に独立しているが、プロット作成に伴い、設定をより深めることができた。
 ボクトは、単なる木製機械ではなく、その中身は店人テナントである。大名が威儀を示すための超大型、裕福な商人が囲う鑑賞型、奉行所・与力などの公的権力で働く治安維持型など、大きさや特技は様々である。これらはすべて作品に登場するが、この世界観を存分に構築し表現するには、紙数が足りないことに気づいた。
 店人の行動原理は、東インド会社と似ているが、決して一枚岩ではない。かつて異国人たちと攘夷を経て開国に至ったように、店人との共存の道はあるのか。本作ではこの点は示せたと考える。
 なお本作に切腹を賛美する意図はない。
 作中に登場する兵器の名称は、(一部を除き)作者の空想ではなく、この時代に実在したものである。木材の強度を飛躍的に向上する技術もまた現代に実在する。

文字数:1050

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