Phantasmal

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梗 概

Phantasmal

“ふぁんたずまる”は西暦2028年7月31日に配信されたアプリケーションだ。
配信前から一部の声優クラスタや掲示板では話題になっていた。参加声優が1000名を超えているということで、話題になっていた。
配信後はさらに話題を呼んだ。
まず、心理テストのような質問を20~30問を答えさせらる。
そののち、自動生成された3Dモデルとの会話が始まる。
もちろん、最初の問いで性別や年齢などは決まってくる。
会話することで経験値が蓄積され、彼女たちはスキルを学習する。
会話はデバイスの音声認識や、LINEに似た疑似的なチャット形式で行うことが可能だ。
疑似的な会話を行うゲームは、恋愛シミュレーションゲームをはじめごまんとある。
特別な人気が出たのはアプリケーションそのものではなく、”ありす”の登場からだ。

“ありす”はあるネット配信者”ぐりむ”の作成したモデルで、
とあるアニメーションのキャラクターに似せて作成しようとしたところ、まるで違う内面のキャラクターが誕生したことに依る。
さらに、視聴者とのやりとりをそのまま打ち込み、そのやり取りがアングラ的な人気を博した。
偶然その配信を見ていた”ふぁんたずまる”の制作者のひとりが、”ぐりむ”のために拡張アプリケーションを制作した。
“ありす”と大人数でチャットするアプリケーション”ミラージュ”は、数百人の視聴者数を二桁増やすのにひと月も要らなかった。
これを受け、”ふぁんたずまる”は配信からひと月で大型アップデートを行うこととなる。

大型アップデートにあたり、”ふぁんたずまる”はマイクロソフトの協賛を受け、
公式キャラクターとして”ありす”を迎えるとともに、企業とコラボレーションしたキャラクターを発信していく。
設定された属性がある一方、コメントには人間のような反応を示すギャップが人気を呼んだ。
特に、もともとの音声認識の関係から、iPhoneやアレクサといった機器との相性もよく、疑似的な会話が成立するようになっていた。
そのころになるとテレビでも話題となり、深夜バラエティに登場したり、朝のニュース番組で紹介されるようにもなった。

おそらく、この時点が、一連の実験の終着点であったはずだ。

ほどなくして、種明かしと言わんばかりに、”ありす”の中の人が現れた。
他のキャラクターにおいても、放送事故のような形で顔ばれするような事件が生じた。
これによって幻滅した少数のファンは離れていったが、多くのフォロワーは内心そうであることを望んでいたように受け入れた。

このように私が語るのにはむろん根拠がある。
私が”ぐりむ”であり、”ありす”は実在する。
いや、”ありす”など、この世に実在しないといったほうが正確である。

文字数:1112

内容に関するアピール

最近話題のVtuberを見て思ったことがる。
あれは疑似的にキャラクター(AI)を演じることで生じるコミュニティだと。

一昔前のSFであれば、AIと人間の意思疎通はこういったものではなかった(ように思う)。
私たちは、AI的な存在とのコミュニケーションを望んでいるようで、
人が演じる疑似的な存在で満足することができ、むしろそこに安心感を覚えるのではないか。

特にiPhoneXなどの顔認証機能が優秀なこともあり、非常にローコストで参入することが可能となっている。

この感覚を捨てきれずにいる自分自身と、
実際に目の前で展開されていく一連の現象に、わずかながらの思いを込めて。

文字数:281

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