梗 概
さまよえる宝
宝探しをする女海賊が、「決して見つからないけれど、誰もが求めている」と謎の言葉が書かれている宝の地図をめぐり、冒険をします。最後に彼女は、永遠に死なない愛という、自らの心を信じるためのコンパスを、自身の中に見つけ、それが宝だと知ります。
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あるところに、18世紀の海賊が残したという宝の地図があります。これまで数々の人が、その宝のありかを求め、命を落としたり徒党を組んだり、また、地図の中にある罠にはまったりしてきました。でも、過去現在未来、だれもその宝を、見つけたものは、いないのです。
紙媒体で、電子媒体で。未来のメディアの感覚媒体で。過去から未来を通して地図の中の宝は「表示された場所に出現する」と、どんな人にも確信されます。
しかし、宝はただの一度もみつかりません。確信だけ生み出して、実物がみつかる様子が見えない宝。そのうちこれは海賊だけがかかる『宝が見える病』なのではないかと、人々が騒ぎ出します。宝があるとするこの地図こそ、何らかのエラー、そのものなのではないかと。
そのうちに海賊の宝探しにリソースを奪われる危険のある人々が、この地図をターゲットにした海賊対策に乗り出しました。あわてた海賊は、宝が見つからない根本的な原因を探ります。宝が見つからないのはそもそも、宝そのものの、定義が何か、決まっていないからなのではないのか、と。
宝とは何か。
数々の失敗の後、その道の博士が分析したことで、この地図の宝の定義が明らかになり、地図は新たに発見されます。しかし、その事実は隠されました。それが、その地図の価値を損なってしまうとされたからです。
ある一人の海賊が、この地図における宝探しにでかけました。青い空高く帆をあげ、水平線の彼方を目指し、過去の海の底へネモ船長を水先案内人に、荒波を越え、イーロン・マスクを未来の案内人に、宇宙へと飛ばした遠征隊とすら、交信します。その船を束ねる船長は、永遠に壊れない羅針盤を求める女性でした。そして、この船長は、とうとうその地図から、自らの宝を見つけることに、成功するのです。船長は、永遠に死なない愛という、自らの心を信じるためのコンパスを、自身の中に、見つけ、その宝としたのでした。
ひとりの老婆が屋根裏で話をきかせるシーンで、物語は終わります。
おばあちゃん、その地図の宝って、何だったの?
いま、その宝は、どうなったの?
子供達が話終わった老婆に聞きます。
「『さまよえる宝』とは、冒険。そして、冒険で得た仲間との友情。
まだ見ぬ宝を指し示す地図、そのものだったの。それが、地図の言う、宝だったのよ。
そして、ええ、もちろん、今、その海賊は、自らの心のコンパスに従って、
永遠になくさない宝を胸に、あなたの眼の前に、神様の胸の中にも、
いつまでも、生き続けているのですよ。」
話を終えた老婆のいる屋根裏の片隅で、その女海賊を示すアイテムが、きらりと光っていました。
文字数:1194
内容に関するアピール
小さな頃から『グーニーズ』を始め、『天空の城ラピュタ』『ONE PIECE』『パイレーツ・オブ・カリビアン』『シンドバッドの冒険』など、海賊の物語に、親しんできました。ロマンスを中心に強い女性が海賊となって活躍をしている作品をもっと読んでみたい。と思い立ちました。
「見つからない宝」「見つけられない宝」に代表され、ゲームとしては「難しすぎる」エラーを「宝探し」から「本当の宝とは何か」という冒険に変えるしくみとしてお話を捉え直して取り組みます。
海賊船を分子レベルで風船ガムのようにイメージしてから、それを種として育てる変わった仕組みのものにする予定です。ロケットのように宇宙へ行き、クジラのように生態として機能すして、飛行機のようにも飛ぶ船です。神話にて産まれたばかりのプリミティブな神様のいる島へと海賊船が旅するところも描こうと思っています。
文字数:371